陸棲の怪魚を捕獲するための捜索隊は、こうして8人のパーティーとして再編成されたんだ。
「とにかく今夜一晩で決着をつけるべく、俺達としては夜を徹しての作業になる覚悟だ。貴様等はどうするのだ? 決着まで付き合うか? それともそこそこの時間で解散するか?」
「俺たちが途中で投げ出すわけねえだろ!! ハヤト、ダイゴ、ノブオ。お前らもそうだな?」
もちろんリュウジの回答はこうだった。
そんなわけで、ダイゴとノブオはオレたちの分の食料やらを買い出しにさきほど出掛けていったんだ。ちなみにコウヘイらはひととおりの野営用品を既に持ち込んでいた。
「あの魚は夜行性だから、夜が狙い目なんだ」
夕映え木立を染める夕日が落ちたところでハンゾウはオレたちにそう言って、懐中電灯を渡してくれた。
「おう、悪いな」
受け取ったリュウジが礼を言う。
「いいのか? 足りなくなるんじゃない?」
「ハヤト、心配には及ばない。今タカシが学校へ取りにもどってる」
コウヘイらの前もって立てていた計画はこうだった。
日の落ちないうちに、木立の中央の広場状になっているところに拠点を作る。
そこを中心に、数カ所に餌を置く。野鳥を捕獲するときみたいなザルを加工した仕掛けを準備。
それを見守りつつ、交代で茂みを探索──とまあ、こんな具合。
予定外にオレたちと闘いになったもんだから明るいうちに準備するはずの予定がずれてしまったのだとコウヘイはぼやいた。
懐中電灯を頼りに仕掛けを作るものの、暗がりの中では手元がおぼつかない。
「え~と、これでいいのかな?」
「あ~~、もう、ハヤトは不器用だな。ほれ、ここはしっかり紐結んで、と」
「いや、不器用っていうか、暗いからさ。お、リュウジ巧いね」
「ハヤトがヘタなだけじゃねえか!! おっ、蚊だ」
言いざまリュウジが手の甲に止まった蚊を一撃のもとに殺傷した。
「オウ、捕獲はしたがヤられたな。血が出てるぜ」
そうリュウジが言うと、背後から近づいてきた巨体──ゴンタがポケットから虫さされの薬を出してリュウジに渡してやった。
「お、気が利くぜ。どうもな」
「おお……」
とだけ返事をして、ゴンタはさらに虫除けスプレーとウエットティッシュまでポケットから出して貸してくれた。
「へえ、いろんなもの入ってるんだね、そのポケット」
とか感心しながらも、なんか──妙な感じだよな。
「おおい、コウヘイ!! ザルの仕掛けは整ったぜ!! 早く餌だ、餌!!!」
リュウジが呼ぶとコウヘイが袋を持って近づいてくる。しゃがみ込んでリュウジの作った仕掛けを確認した。
「曲がりなりにもしっかり出来ているようだな。いいだろう。では餌だ」
「なあ、コウヘイ。餌って何だ? 怪魚は何を食うんだ?」
「あれの好物はエビだ」
「へええ、やっぱり!!! ダイゴが言ったの当たってたんだ」
オレは感心してしまう。
「けどよ、ハヤト。えびせんは──どうだったろうな?」
「え、あ、わはは」
リュウジに指摘されて、オレはおかしくもないのに笑ってみた。
「ふ……えびせんも食わないことはねえがな」
そんな風に笑いさえ混ぜた回答を寄越しながら、コウヘイは乾燥の桜エビを数匹仕掛けの中に仕込んだ。
「それはそうと貴様等、あれを怪魚などという名で呼ぶな。人一倍可愛がっているゴンタが機嫌を損ねる」
「え?」
聞き返したオレにコウヘイは告げた。
「あれの名は、モモコという。ゴンタがそうつけたのだ」
まったくもって冗談みたいな話だったけど、コウヘイがそんな冗談言うわけないよな。
オレとリュウジは妙な顔で見つめ合ってしまった。
さて、しばらく経つと学校まで懐中電灯を取りに行ったタカシも、食料その他を調達しに行ったダイゴとノブオも戻ってきて、居残り部隊は仕掛けも作り終わり──
そうしてオレたち8人の怪魚もといモモコ捕獲作戦が始まったんだ。
まずは全員であたりを手分けして捜索してみる。
コウヘイが言うに、ちょうど日暮れ頃が一種の狙い目のはずらしい。
「あれを最初に見つけたのはゴンタだったのだが、それはちょうどこんな時分だった。そうだよなあ、ゴンタ?」
「おう」
重々しくゴンタは頷いた。
「それじゃあさっきハヤトが見たときは?」
リュウジが興味津々で訊いている。
「あれは寝起きだと思う」
答えたのは、別の茂みを手探りしていたハンゾウだった。
「総帥──すみません。寝起きが最大のチャンスだったのに」
「ふ……気にするな、ハンゾウよ。あのような折りだったのだし」
オレたちは姿を探しながら、それなりにモモコの生態について軽くレクチャーを受けていた。
二足歩行というのは大袈裟で、2又に分かれたヒレをを使って『歩く』ように見せることができるらしい。
姿形は変形したヒレを除いては、サンマにそっくりだということ。オレが見たのはあながち間違いじゃなかったようだ。体長は10cmということだ。
奇妙なのは、水中でなくとも生存できるという点。えら呼吸以外の呼吸ができるようだ。それからまぶたもあって、瞬きもするんだそうだ。
しかも、鱗は乾燥にも耐えうるのだという。このへん、すでに魚類とは言えないのではないかとハンゾウが言っていた。
そして──最大の不思議は、モモコは人間に懐くのだという。
誰より可愛がっているというゴンタに、モモコは明らかに懐いているとコウヘイが教えてくれた。
そういえば──暗黒一家は水産高校の生徒なんだもんな。
魚とかそういうのに詳しくても何も不思議はないんだけど。
いろんな専門的知識を持っている彼らの一面をはからずも見て、オレはなんだか感心していた。
まあね、オレたちは工業高校の人間だから、工具の扱いなんかだったら負けないけど──どこまで行っても競争心が生まれるあたり、やっぱりある意味宿命なんだろうな。
テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル
ご苦労様ですorz
鬼工と暗黒が協力してるw
スロ屋では考えられない展開ですなぁw
でも華丸さまの個人x2のディテールがなんともいえずリアルすぎてついついひきこまれてしまします。
色々書き上げるのにご苦労があるかとおもいますが
ものすごぉ~く楽しみにしてますので頑張って下さいねw
あ!あの文字数あるのであれば小説化とかいかがですか?!買いますよぉぉぉ♪
華丸さまの才能に!
/^.^)/∀♪∀\(^。^\ カンパーイ!!
がんばりま~す (*^ー^)ノ
応援コメント、感謝です o(_ _*)o
え~と、わたしどうにかして、暗黒一家に愛が湧か
ないもんかと思案しまして……結果こんな具合です。
書いてみると、案外奴らも人間でした。よくわからんけど。
あ、ゴンタ微妙www
書くの、楽しいですよ!! 大変じゃないとは言わないけど。
出版なんて考えたことなかったですけどね。だはは。
でも、なんかうれしいです。アリガトウ :*:・( ̄∀ ̄)・:*:
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