「ハ〜ヤ〜ト〜く〜ん、お〜は〜よ!!!」
ウィークデーのオレの朝8時は、いつもこの声から始まる。
逞しい筋肉によろわれた腹の中から響く、ハリのある声──鬼浜爆走愚連隊 初代総隊長 リュウジの声だ。
目覚まし時計ごときには屈しないオレのまぶたを開かせるその声音に、思わず反応して体を起こす。
2階の自室の窓を開けて、自宅のバイク店の店先を見下ろすと、そこには真っ赤なリーゼント。
「オウ、チィ〜っす!!!」
見上げる表情は満面の笑み。頬には絆創膏が似つかわしい。
「チィ〜っす……」
呆けた目をこすりながらの、とりあえずの朝のご挨拶。オレのほうはちっとも声が出ていない。
「なんだなんだ、まだ寝てたのかよ。相変わらず仕方ねぇな」
「オレ、血圧低いんだよ」
「わかったよ、もう。いいから早く支度しろよ」
「……オス」
こんな朝がご近所でもお馴染みになってから、もうすでに1年以上が経った。
この1年の間でオレの中で大きく培われてきたものは、大きく2つ。
ひとつは単車の腕前、そしてもうひとつは──リュウジへの深い敬愛だ。
漢が惚れるにふさわしい魂をもつ漢。そんな存在にめぐり逢えたことを、オレはひそかに守り神たる風神様に感謝していたりする。
っと、いけね。マジでリュウジに怒られる前に支度しないと。
店先からはシャッターを上げる音がする。きっとリュウジがやっているんだろう。
続いて、オレの親父とリュウジが挨拶しているのを聞きながら、オレはようやく洗面所に向かった。
本来苦手なはずの朝がこのごろ少し好きになったオレを、どうか風神様が見守ってくださいますようにと心の中でつぶやいてみる。