目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

不器用な特攻隊長

   * 1 *


 「お、早かったなみんな。あれ? ハヤトももう来てるのか。まあいいや。ノブオ!!! ちょっと悪い。手伝ってくれや」
 「あ、は~い。兄貴」
 厨房ののれんの奥からリュウジが呼んで、ノブオが嬉しそうに近づいていく。
 「俺も手伝うか? リュウジ」
 「いや。ダイゴはそこにいてくれや。あとでできた料理を運んでもらうときに呼ぶから。ってか、ひとりにしとくとハヤトが何しでかすかわかんねえからな」
 「え、オレ? 別に何もしないってば」
 「──ハヤト。忘れたか? こないだお前、勝手にテーブルに置いてある酢とラー油を混ぜたろ? あれな、あとで俺、しこたま怒られたんだぜ」
 「え~、そう? 便利かなって思っただけなんだけど」
 「その発想がおかしいんだよな、ハヤトは」
 ため息混じりにリュウジはふたたび厨房に引っ込んだ。

 昨日のライブのちょこっとした疲れを引きずっているオレがいる、ここは昇龍軒。リュウジの家のラーメン屋だ。
 ライブって言ったらその後には『打ち上げ』がつきものなんだって、どこで仕入れてきたのかそんな情報をもとに、リュウジが自ら企画してくれた催しだった。
 お店の昼と夜の営業時間の合間を貸してもらって、一丁前にそんな会の主役格に据えてもらってるオレは幸せ者なんだな。きっと。
 
 しばらくしたら千晶ちゃんと玉城も来ることになっている。
 オレも準備のできたころに来るように言われてたんだけど、家にいてもなんか手持ちぶさたで。ダイゴとノブオの指定された集合時間には、オレもここへ到着していた。
 厨房から漂ってくるいい匂いに包まれながら、オレとダイゴはなんとなく会話を交わす。
 「それにしても、ようやく終わったなって感じ。昨日は夜、なかなか眠れなかったな」
 「慣れないことで疲れたろうな、ハヤトも」
 「ほんとにね。まあ楽しかったけど。でも生活そのものが落ち着かなかったよ、ここんとこ。ろくに走りにも行けなかったから」
 「なるほど。ハヤトはそちらの方がよほど馴染みの深い生活だろうから」
 「そうそう」
 責任を果たしたあとの開放感と虚脱感。いつもの生活に戻れる安心感。それらが胸に去来してた昨夜のオレは、本当に眠りが浅かったらしい。リュウジは信じてくれないだろうけど、学校休みの今朝は、なんと目覚まし不要の7時起きだったんだ。

 「あ~、それにしても早くみんなで走りに行きたいな」
 「押忍。言われてみればご無沙汰だな、それは」
 ダイゴはいつもより目を細めてオレに微笑んだ。
 うん、きっとみんな待っててくれたんだろう。オレが重責から解き放たれるのを。
 「けれどハヤト。皆で走りに行くのはよいのだが」
 「ん? どうかした?」
 「いや。聞いておこうと思っていたのだが」
 深い声でダイゴが先を続けた。

 「ハヤトはこれからどうするのだ?」
 「これから……って言うと?」
 「今回の目標はとりあえず昨日のライブだったろう? いざそれを終えた後はどうするのかと思ってな。千晶さんと玉城とハヤトの3人編成は、これからも続くのか?」
 「え──それはどうなんだろ?」
 正直言って、オレはライブ以降の身の振り方なんてまったく念頭になかった。
 最初誘われたきっかけは昨日のライブのお手伝い、ってことだった。
 その後のことなんて、言われてみれば誰も考えていなかったような。
 いや。玉城なり千晶ちゃんなりのビジョンには何かしらあるのかもしれないけれど、少なくともオレはまったく想定外って具合。
 そうだなあ。だからとぼけてるんだ、オレは。とか一瞬思ったあとに考えを巡らせる。
 
 しばしの沈黙のあとに、オレはダイゴにこう答えたんだ。
 「ふたりはどう考えてるかわかんないけど……オレはさ。ひとまず昨日で一段落ってふうに考えてる」
 「そうか」
 ダイゴは大きく、一度だけ頷いた。
 「ああ。とくにこれ以上を期待されてるわけでもないしね。それに、コウヘイじゃないけどあのふたりにはオレより巧いギタリストがついてしかるべきじゃないかな。オレじゃ音の隙間を埋めるのが精一杯だけど、そうじゃなくてきちんと筋の通ったギターが入ったほうが理想的だと思わない? ダイゴ」
 「技術云々は俺ごときではよくわからんがな。音楽は得手ではないので」
 ちょこっと照れたようにダイゴは言った。

 「それに──さ。オレ、やっぱみんなと一緒に単車乗ったりしてたほうが性に合ってるかなって」
 とりとめもなくオレはダイゴ相手に話を続ける。
 「音楽のある生活も捨てたもんじゃないけど。それなりに練習すればそれなりに巧くなるのかもしれないけど。でもオレ、負けず嫌いだからね。とりあえず今日明日にタカシに勝てるようになるのはムリじゃない?」
 「それは、まあ仕方のないことかも知れんな。キャリアが違うのだから」
 「だろう? オレは負け試合はこりごりだよ。勝てる分野に力を入れるほうがオレの性には合ってるかも。だからって逃げるつもりはないんだけど」
 厨房で響いているリュウジの威勢いい声と、ノブオのいきいきした返事を聞いていたらオレはこう続けざるを得なかった。
 「オレにはさ。リュウジがいて、ダイゴがいて、ノブオがいて──っていう生活のほうがしっくりくるんだよ。もちろんほかの仲間たちも大事だ。だけど結局はこのメンバーの中に存在してる自分がけっこう好きだからね」
 自然に顔がほころんでる、オレ。それを見てダイゴもほんのり笑顔になった。

 「それに、ほら。オレが違う行動してると、なんかリュウジが心配するっぽいから」
 「ああ、それはあるな。ここのところハヤトよりもリュウジのほうが落ち着かなそうだったな」
 「うん。これ以上世話の焼ける奴ってリュウジに思われるのもしゃくだからね」
 ダイゴと話していたおかげで、オレの意志は決まっていた。
 オレはこれまでもこれからも、鬼浜爆走愚連隊の特攻隊長。二足の草鞋を履けるほど器用な奴ではない、仲間と一緒が好きな単車乗り。ただそれだけの男だってことを我ながら再認識していた。

 「こんちわ~、リュウジ」
 そんなとき店先のドアが開いて、玉城がひょっこり顔を見せた。声を聞いてリュウジが厨房から姿を表す。
 「お招きありがとね」
 「オウ、玉城!!! よく来たな。さ、そっち座っててくれ。そしたらハヤトのお守りは玉城に任せるか。悪い、ダイゴ。ちょっと手伝ってもらっていいか?」
 「押忍。何なりと」
 答えたダイゴが立ち上がった。入れ替わりにオレの正面に玉城が座る。
 
 「ハヤト、昨日はどうもね」
 改まってオレに握手を玉城は求めた。ふっくらした手を握り返してオレは答える。
 「いやいや。こっちこそいい経験になったよ、玉城。一生に一度くらいはああいうとこでスポットライト浴びるのも悪くないよね」
 「わはは。一度って言わずに何度でもいいもんだよ、ハヤト」
 「うん。玉城はそうかもしれないね。でもオレはさ。どっちかっていうと暗い夜の街路灯に照らされるほうが性に合ってると思う」
 「え? どういう意味?」
 「オレの闘いの場は、舞台より夜の国道かな、って思って」
 あとで千晶ちゃんが来たらふたりにちゃんと話そう。
 オレはオレの日常に戻るつもりだってことを。
 
 リュウジの得意料理が盛られた皿がテーブル狭しと並んだころにタイミングよく千晶ちゃんが現れて、これで全員集合だ。席に着いたオレたちは、それぞれコーラやらウーロン茶やらの注がれたコップ──オレはビールのがいいって言ってリュウジにひっぱたかれた──を手にしてる。
 「よし。それじゃ始めようぜ!! ほれ、千晶ちゃん。乾杯の音頭夜露死苦ぅ!!」
 「え? あたし? リュウジがやるのかと思ったけど──それじゃつつしんで。昨日のライブ、おつかれさま。でもって、リュウジたちもサポートありがと。そんなわけで……カンパ~イ!!」
 「オウ!!」
 「乾杯っス~!!!」
 
 目の前に並んだ、中華メインの宴会料理はもちろんリュウジの作だ。今まで何度もご馳走になっているんだけど、今日のはとくにおいしく感じる。
 きっと気分が盛り上がってるせいだと思う。
 オレの出たライブの打ち上げだっていうことも、また気の合う仲間とわいわいやってるっていう状況も。
 雰囲気っていうのは最大のスパイスだね。



   * 2 *


 餃子やらチンゲンサイの炒め物やらを端からつつきながらの打ち上げの宴。オレたちは気安く会話を交わし合う。
 「そういえばみんな、何か楽器できたりしない? リュウジはおいといて。ノブオくんとかどう?」
 骨付きの鶏の唐揚げを片手に、千晶ちゃんがこう訊いた。ノブオが答えるより先にリュウジがひとこと入れてる。
 「オイ、俺は論外なのかよ!!!」
 「まあまあ。訊くだけムダってことでしょ?」
 「ちきしょう、玉城め……」
 あはは。うん、笑いも上質のスパイスだ。

 「オレはですね、千晶センパイ。自分で言うのも何ですけどね。口笛うまいっス」
 「ってノブオ。それは楽器じゃねえだろ?」
 「そうっスかね、兄貴。でも笛だし……。犬くらいは呼べますぜ。あと動物園に行ったときも結構便利っス」
 「ノブオ。ハヤトじゃねえんだから無理にとぼけなくてもいいんだぜ?」
 「え? オレかよ……」
 心外だなあ。みんな笑ってるのがさ。
 
 「じゃあダイゴは?」
 今度は玉城がダイゴに話を振る。
 「いや……楽器と言えるかわからんが、必要に駆られて木魚を叩くくらいか」
 「も、木魚って……ダイゴさん。うはは」
 「オイ!!! ダイゴまでそんなこと言うのか?」
 「そんなこととは? リュウジ」
 「だ~か~ら~、そういうのはハヤトに任せておけってのに」
 「それは済まん。俺は真剣に答えたつもりだったのだ」
 「なんだ。みんな一緒じゃん。やっぱりいいよな、仲間って」
 そう言ったら、意味不明にリュウジがオレの額をぺしっと叩いた。
 なんだよ、結局リュウジはオレに突っ込みを入れたいだけじゃん。

 「で? 昨日は千晶ちゃんはどこ行ってたんだ?」
 一段落したあと、つと思い出したようにリュウジは千晶ちゃんにこう尋ねた。
 昨日ライブを終えた直後、千晶ちゃんは名刺を持った大人の女の人についてどこかへ行ったんだった。
 「ああ。うん。ちょっとね。悪くない話をもらって」
 ふわりと髪を掻き上げながら、千晶ちゃんは先を続けた。
 「さっき電話で玉城くんには話したんだけどね。きのうの人、芸能関係っていうの? そういう人だったの」
 「芸能──?」
 「うん」
 すこし照れたように千晶ちゃんはリュウジに頷いた。

 「うちのプロダクションに所属している子でギターできる女の子がいるから一緒にやってみませんか、って。そういうお誘い」
 「えええ!!! ってことは千晶ちゃん……」
 「千晶センパイ、それって──!!!」
 「何というか、大きい話のようだな」
 聞かされたオレたちは、揃っておろどいて口をぽかんと開けている。

 「そうか。でも千晶ちゃんっていろいろレッスンとか通ってるんだったよね? 将来はそっちの道へ行きたいってこと?」
 「うん、ハヤト。まあね、少しは考えてたんだ」
 「それじゃあ本当にいい話なんだ」
 オレはなんとなく──肩の荷がおりたような気がしてた。
 「でもよう、千晶ちゃん。その女の人って怪しい感じじゃなかったか? 気を付けたほうがいいんじゃねえの?」
 「あ、それは平気だと思うよ、リュウジ。名刺に書いてあったのは聞いたことのある社名だったし」
 「だったらなおさらスゴイっスね、千晶センパイ……」
 「どうなんだろうね。まだよくわかんないけど」
 千晶ちゃんはいきいきとした顔をしていた。
 まるでリュウジが勝負に勝ったときに見せるような、そんな表情。

 「で、さっきその人と、そこに所属してるギターの弾ける女の子に会ってきたとこ」
 「それで、その子はどうだった?」
 玉城が真剣な表情で千晶ちゃんに訊く。
 「うん。話も合うし、うちらのユニット形態にも興味ありそうだった。本人の見た目は色白でちっこくて、かわいい感じの娘だったな」
 「へ~。弾けそう? 普通に」
 「あ、ビデオ見せてもらった。テクはぜんぜんOK」
 「それはよかった」
 千晶ちゃんと玉城は、本当に熱意のこもった表情で話し合ってる。オレたちが入り混むスキなんか皆無な感じで。
 「とにかく一度、音あわせしてみようって相談して帰ってきたんだ。今度の日曜、玉城くん空いてる?」
 「ええと……うん。午後ならいける。昼まで野球部練習だからね」
 「了解。じゃあ午後で連絡しとくね。ハヤトは? 日曜、どう?」
 「え──オレ?」

 急に千晶ちゃんに問われて、ただこの急展開を見守っていただけのオレはどきりとする。
 「オレは……その」
 「何よ、ハヤト。はっきりしないね」
 「……うん。っていうかさ。オレ、実はただの特攻隊長に戻ろうかと思って。それを今日はふたりに言おうかと考えてたとこなんだ」
 内心迷いながらも、一度思いを口にしてみると素直に、きっぱりと言葉にすることができたような気がする。
 「ちょうどいいな。ギター弾ける娘が入るんだったら、オレは辞退しやすいよ」
 「何言ってんの? ハヤト」
 千晶ちゃんは目をまんまるにしてオレをまっすぐ見つめてる。
 
 「オレさ、あんまり器用なほうじゃない。だからギターにかかりっきりになると、鬼浜爆走愚連隊の特攻隊長としてのオレが疎かになっちゃうんだ……」
 「おい──ハヤト?」
 オレが言うのを聞いて、リュウジが疑問符をぶつけてくる。
 「お前、そんなふうに言うのか? せっかく千晶ちゃんも玉城もお前に期待してるのに。それを蹴る気なのかよ!!!」
 「リュウジ。そんなつもりじゃない」
 「だったら続ければいいだろうが!!!」
 「そうっスよ、ハヤトさん。せっかくいい感じなんっスから!!」
 オレはさっきずっと話していたダイゴと目を見合わせた。語らないままのダイゴの雰囲気がオレを後押ししてくれる。
 「うん。でもオレの意志はいま言ったとおりだ」
 そして──場には静かな沈黙が流れた。
 言わなきゃいけない思い言葉を言い終わったオレは、なんだか妙に疲れていた。

 「ハヤトの言いたいことはわかった。なんとなく」
 しばらく後、納得行かない顔してるリュウジとオレを見比べて、千晶ちゃんは言った。
 「でもさ。ギターは2本あっても悪くないから、新曲できたらソース渡すね。もし都合がよかったら本番だけでも飛び入り歓迎ってことにしとくよ、ハヤト。だってハヤトがいると女の子集まるし」
 「千晶ちゃん!!! そんなこと言っていいのかよ!!!」
 「落ち着きなよ、リュウジ」
 そう口を挟んだのは玉城だった。
 「リュウジが一番わかってあげなきゃ。ハヤトはさ、きっといっぱい考えたんじゃない? それでこう結論したんだろ? 自分がいま何をするべきなのか、ってさ」
 ああ──ほんの短期間そば近くいただけなのに。千晶ちゃんも玉城も、オレのことをわかってくれているみたいだ。

 「森園の言葉に倣って言うとね、リュウジ。相棒さんはリュウジの右腕としての自分を何より大事にしたいってことなんだと思うよ」
 玉城が言うのを聞いて、なんだかオレは今さらになって腑に落ちた感がする。
 そうか。オレはそう言いたかったのかもしれない──だけど、さすがに自分じゃそんなふうには言えないよな。
 理解してくれたふたりの音楽仲間に、オレは心の中で最大限の感謝を述べた。
 気持ちがつながっているってのは有り難いことだね。

 オレのせいでいっときテンションの下がった打ち上げの場だったけど、そこからは玉城とノブオが盛り上げてくれて助かった。
 何事もなかったようにとは言えないけれど、いつしかふたたび他愛のない会話が戻ってきて──いくらか間を置いたらリュウジもどうにか納得してくれたみたいだ。
 以後のオレのスタンスは、いつでも歓迎してもらえるゲストってことで落ち着いたらしい。
 「さっそく新曲を月曜日に学校に持っていくからね。覚悟しといて、ハヤト」
 玉城が笑ってそう言った。それを受けて、千晶ちゃんが微笑む。
 「そうそう。つかず離れずのマイペースでも、ギターと接していけばいいよ。せっかく弾けるんだかもったいないって。ね、リュウジ?」
 「ん? ああ、そうだな。ハヤトはのんびりしてっからな。そんなんでもよかったら、しばらく面倒みてやってくれるか? 千晶ちゃん。玉城」
 「あはは。それくらいお安いご用だよ」
 「世話をかけて悪いな。ほら、ハヤト。お前もちゃんと挨拶しとけや」
 「え、あ、そうだね。ええと──これからもよろしくね、ふたりとも」
 後頭部をリュウジに押さえ込まれて無理矢理お辞儀させられた。
 うん。これでいいみたい。何よりリュウジが納得してくれれば、オレはそれでOKだ。

 さんざんご馳走になって、たくさん話して、よく笑って。
 昇龍軒の夜の営業が始まるっていうのでオレたちの打ち上げはお開きになった。
 最後の最後まで、リュウジは千晶ちゃんと玉城に言っていた。
 「もう、ほんっとに手間のかかる奴だけど、ハヤトをよろしく頼むぜ」
 まるで保護者だな。
 
 そしてオレたちはそれぞれ帰途につく。最後まで方向が一緒なのは、このメンバーでは千晶ちゃんだ。千晶ちゃんは電車でとなりの駅まで帰る。オレは駅の逆側が家。
 あれこれ話しながらの帰り道。夕暮れ刻が鬼浜町に訪れる時間だった。
 駅前についたとき。別れ際に千晶ちゃんが、オレに耳打ちした。
 「あのね。ハヤトだけに言っとくね。紹介してもらった娘。同い年でね、すっごくかわいいの。あたしの好きなタイプ」
 言い終わった千晶ちゃんは、ほんのり頬を染めてたんだ。
 「え──そうなんだ」
 「そうなのよ、ハヤト。えへ、久しぶりにこれって恋かも~」
 乙女な男子高校生・千晶ちゃんが恋する対象は女の子だっていうことは、まったく知られていない事実。
 リュウジも知らない。玉城だってきっと知らないはずのこと。

 「それじゃね、ハヤト。ほんとにまた一緒にやろうね! ムリしない程度でいいから」
 「うん。こっちこそ。たまにはお邪魔させてほしいよ」
 「OK!! いつでも待ってる~!!」
 小走りに改札を目指す千晶ちゃんは──見てるこっちが照れるくらいのいい笑顔をしてた。
 オレは手を振り返しながら、あらゆる意味での千晶ちゃんの成功を一番星に祈ることにして空を見上げてた。



   * 完 *
スポンサーサイト

各話御案内/不器用な特攻隊長


 不器用な特攻隊長 1-1
 不器用な特攻隊長 1-2

 不器用な特攻隊長 2-1
 不器用な特攻隊長 2-2

| ホーム |


 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。