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このおはなしの語り手

onimuchiko_san_arigato
ども。ハヤトです。
似顔絵は 鬼ムチコ姉さん が描いてくださいました。
心よりの感謝を!!
※このハヤトはここから連れ出さないでくださいね

自己紹介

ハヤト

  • Author:ハヤト
  • 肩書:鬼浜爆走愚連隊 特攻隊長 
    所属:鬼浜工業高校2年B組
    単車:オレが行く!!
    自宅:バイク屋「魔速商会」
    趣味:昼寝

    リュウジがいて、ダイゴ、ノブオがいて。
    向こう側には暗黒一家がいる。
    仲間がある、敵もある。
    たまには気の合う出会いもある。
    なによりそこに縁がある。
    鬼浜町に流れる日々は青春そのもの――
    そんなオレの日常を小説風味でお届け!!

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昼下がりの河川敷

   * 1 *


 放浪癖っていうのとは違うんだろうけど、オレは散歩が好きだ。
 陽射しに誘われて、空を行く雲に誘われて、ついつい外に出たくなる。

 本当は単車でカッ飛んで行けたらもっと爽快なんだろうけど、大概はリュウジに合わせて徒歩通学なので、こっそり体ひとつで校舎の裏門をすり抜けた。
 取り立てて行くあてがあるわけでもなし、ただ単に、授業中に校門の外にいる優越感をときどき味わいたくなる、って、それだけ。

 別に学校が嫌いなわけじゃない。ああ見えて「学校大好き」の、遅刻・早退はあっても絶対に欠席しない主義のリュウジには敵わないけどね。
 ああ、そうか。そんなリュウジにつられているんだ、オレは。だって中学の頃は確かに学校、嫌いだったよな──思わず片頬で苦笑いのオレ。

 昼下がりの鬼浜町を抜けて、なんとなくいつもの河川敷に下りてみた。
 夜の河川敷とは打って変わって、健康的な明るさの、開放的な場所だ。子連れ主婦が会話していたり、ジョギングおやじが出没したり。

 夜な夜なオレ達が徒党を組んで集会している場所だけに、ここは無法地帯の荒れ放題だと思われがちだが、実はまったくそんなことはない。
 何故かというと、リュウジが厳しくオレ達を律するから。
 「オイ、そこ、空き缶捨てるんじゃねえ!!!」
 「いや、兄貴、それオレらじゃねぇっす。もともと……」
 「あン? それがどうした、ノブオ。何だっていいから拾っとくんだ。俺達の集会の後は、来る前よりも美しく、だろ、え? 何か文句あるか?」
 「あ、す、すみません、兄貴ィ〜〜〜」
 なんてこともしばしばだ。

 ああ、オレ、また片頬で笑う顔を作っていたみたいだ。
 リュウジのことを思い出すと、なんでかそんな顔になるオレを最近発見した。
 一体なんだかなあ、オレ。

 土手に寝っ転がって空を見た。紫外線、強そうだな。今日は。



   * 2 *


 夢を見ていたらしい。
 遠くで鼓膜をゆさぶる気合いの入った声が聞こえた。まるで潮騒みたいに。
 どこかで嗅いだ覚えのあるほのかな香りにつつまれて、なんだか気持ちが安らいだのか、夢にとらわれた意識が覚醒を拒んだらしくて──

「あ〜、もう、いい加減に起きろやって言ってンだろうが!!! ったくもう、いつもいつも見境のない。よし、こうなったら──行け、ダイゴよ」
「押忍!」
「ああっ、ダイゴさん、そんなご無体な〜!!! あ〜、ええっと、カンペキ持ち上がっちゃってますけど、ハヤトさん……って、うわぁぁぁ〜〜〜」

 オレを襲ったのは、いきなりの浮揚感。それに続いて──失墜感。
「ん……? え、あ、だぁ〜〜〜〜っ!!!」
 意味不明の叫びを発したオレを、どうか笑わないでほしい。むしろ哀れんでくれるとありがたい。

 巨漢のダイゴはオレを高々と持ち上げ、そればかりか宙に投げ上げたらしい。『わっしょい』の要領で。
 落ちてくるオレの体はふたたびダイゴにキャッチされ、二度、三度と投げ上げられる。

「ひ〜〜〜、助けてくれぇ……」
 オレの情けない悲鳴が河川敷に弱く響いている。
 ノブオのはらはら、おろおろする顔が見える。反対側には腕組みしたまま仁王立ちしているリュウジの姿。その表情が至極満足そうなのがうらめしい。

「よ〜し、そこまでだ。ダイゴ、ご苦労」
「押忍」 

 ようやく上昇・下降から解放されたときには、オレは憔悴しきっていた。
 ……いっそもう一度、何事もなかったようにまぶたを閉じてしまおうか、なんて思ったけど、そんなことするとリュウジの張り手が飛んでくるな、と思ってやめておいた。

「大丈夫っスか? ハヤトさん。うわ、白目むいてませんか? も〜、ダイゴさん、手加減してくださいよ」
「……大丈夫じゃないです」
 どこから出てるのか定かじゃないオレの声。
「実はオレ、絶叫マシン系は大の苦手で……単車は速くてもOKだけどね」
「おう、ハヤト、なんだその気合い入ってない声は!!!」
 凄んだ声音とともにオレの両頬を同時襲ったのは──リュウジの張り手だった。
 ……結局こうだったんだ。効いたぜ。

「しっかし、噂どおりにどこでも寝ちゃうんスね。ハヤトさん」
 なんて言いながら、ノブオがオレの鞄を差し出した。
 昼過ぎに抜け出した学校は、オレの午睡の間にとうに放課後になっていたらしい。
 いつしか川面には夕日が映っていた。鉄橋を通る電車の音が似つかわしい。
「まあな。特技だぜ」
「それが威張れることじゃねぇってのが解んねぇのか、コラ!!!」
「いいじゃん、別に」
「何ィ〜〜〜?」
「わ〜、もう、おふたりともやめましょうよ。ほら、ダイゴさんも黙ってないでなんか言ってくださいってば!」
「……無駄だぞ、ノブオよ」

 そんなこんなで日が暮れる、鬼浜町の平和な一日。
 じゃあまた夜に、と逆方向に向かうダイゴとノブオに手を振って、オレとリュウジは町の方角へ歩き出した。
「それにしても、どうしてあそこにオレがいたのがわかった?」
 肩を並べて歩きながら、オレはリュウジに訊いてみた。
「何で、って言われてもなあ。説明できねぇかも。俺、本能の漢だから」
「は?」
「まあ、そんなもんじゃねぇ?」
「そんなもんかねえ」
 ソウダソウダ、と頷く赤いリーゼント。ふわりと香料が漂った気がした。

 本能──か。なんだか悪くない気分だ。
 胸の内で笑ってみせて、そうしてオレは気がついた。安らかな夢の最後で嗅いだのは、リュウジの整髪料の香りだったようだ。

  

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