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すべての不思議を解く者

   * 1 *


 6つめの不思議を追いかけていたオレたちがばったり行き合った暗黒一家。
 奴らもオレたちと似たようなことをしていたらしいことを知らせるメモを落としていったので、その翌日、オレたちは奴らに会いに行った。
 正面切って暗黒水産を訪れたオレたちを出迎えた暗黒一家は、最初の視線はよく見る険しさを帯びていたけれど、リュウジが差し出した紙切れを見たとたんにがらりと物腰を変えたんだ。

 「リュウジ。貴様――これを、どこで?」
 「オウ。昨日、町営グラウンドのとこで拾ったぜ。お前らだろ? 持ち主は」
 「ああ――まあ、な。して、中を……?」
 「ちょっとだけな。ってか、見なかったらわかんなかったしな、お前らのもんだって」
 「確かに」
 「まあ、がんばれや!!! 解明できることを祈ってるぜ!!!」
 「……恩に着る。ところで貴様等、昨日はあの場所で何をしていやがった?」
 「わはははは!!! まあな、お前らと似たようなもんだ」
 なんてやりとりがあって、珍しくもめ事に発展することなく暗黒水産を後にしてきたんだ。
 
 それから数日が経過している。
 いつの間にか鬼浜町にも春が訪れていた。桜の花もすっかり咲いて、オレの苦手な寒風も吹かなくなっていて。
 なんだかんだで――気がついてみたらいつの間にか3学期が終わっていた。
 結局のところ、オレたちがさんざん探求してた『鬼工七不思議』の7つめは、手がかりすら見つけられなかった。
 昔、鬼工の生徒時代に馴染んだことがあるって言ってた赤ジャージもなぜだか思い出すことができなくて。
 春休みになってからも何度か図書室へ行ってほかの本もけっこう調べてみたけれど、思ったような書き付けには出会えなかった。

 そうしたわけで、今日も午前中から図書室に詰めているオレたちだった。すっかり図書館司書の先生とは顔なじみになっているのがらしくなくてなんだか笑える。
 夕方過ぎからは走りに行こうと決めていたので、昼過ぎに図書室を退出してきている。
 4人で歩く校庭の周囲ぐるりを埋め尽くす桜の木は、すでに満開を過ぎた頃だ。桜吹雪が舞っているのが趣深い――なんて、柄にもなく思っていたりして。

 「もう諦めるしかねえのかもな」
 決して簡単に弱音を吐く人間ではないリュウジがそう言い出したのも無理はないのかも。
 「うん。これだけ探しても手がかりがないとは思わなかったしね」
 「不思議は不思議のままなのが不思議ってことっスかね?」
 「なるほどな、ノブオ。解明できんのが七不思議といったところか」
 「まあな。もしかして、忘れたころにひょっこり見つかるかもしれねえからな」
 「無欲の勝利というものもある得るからな」
 「あ、ダイゴ、いいこと言うね」
 「そしたら一度、手を引くか。いいな? お前ら」
 「は~い!! 兄貴の言うとおりにしま~っす!!!」
 
 見上げれば空は穏やかに春霞。こんな中、みんなで単車を走らせるのは気分いいだろうな――なんてオレの意識はすでにそっちに切り替わっていた。
 「そう言えば、遅咲きの桜の木はどうなっただろうな?」
 校門を目指して歩く最中、思い出したようにダイゴが言った。
 「ああ、そう言やどうしたろうな? そろそろ咲くころかも知れねえよな」
 「あ、2つめの不思議だったやつっスね?」
 「ちょっと行ってみようか。園芸部、まだ粘ってるかもね」
 
 みんなで頷いて、そしてオレたちは方向転換することにした。
 目指すは体育館の隅のほう、1本だけ花の遅い桜の木の様子を窺いに。その木の最初の花を見た者に幸福をもたらすと『鬼工七不思議』に謳われるそれを見に。

 「しかし、桜ってのは理想的だよな」
 重そうなほどに枝を飾っている花を見ながら歩くリュウジがそう言った。
 「うん? なんだって?」
 「いやな。桜って、枯れねえだろ? その前に散るから」
 「ああ、そうだね」
 「一番きれいな時に散るっての、潔いってか。漢字に『女』って入るのに、漢らしいよな」
 舞い落ちる花びらを触ってみようとするように、リュウジはてのひらを広げながらオレを振り返ってこう続けたんだ。
 「……なるほどね。言われてみればそうかも知れないな」
 「兄貴、ご明察っス!!! オレもね、ずっと思ってたんっスよ。兄貴って桜吹雪がすっごく似合うっス!!!」
 「お、そうか? それはうれしいぜ、ノブオ」
 うん。そうかも。リュウジの赤い髪にふわりと降る、限りなく白に近い桜色の花びら――けっこう似合ってるよな。

 さて、そのままのんびりとした足取りで歩いて、オレたちは体育館の近くまで来ている。
 すこし離れたところから見てもオレたちの目指す場所ははっきりとわかる。校庭ぐるりを埋め尽くす今こそ満開の桜の木の中で、たった1本だけ未だつぼみが赤くなったばかりの頃の木。
 『鬼工七不思議』で言うところの、開花の瞬間を見た者にしあわせをもたらすという1本だ。
 この木の開花を見守っているのはオレたちではなくて、園芸部のふたり組だった。『鬼工七不思議』とは関係なくて、ただ部の昔の記録からこの木を知って研究しているんだとか。
 件の木の根本には、青いレジャーシートが敷いてある。園芸部の持ち物だ。
 そこには毛布も用意されていて、食べかけのお菓子なんかも置いてある。
 けれども――現在は無人だった。
 
 「ん? いないな、園芸部」
 「そのようだな。買い物にでも行ったか?」
 「どうでしょうね~。荷物このままで、ふたりで出かけるなんて不用心っスね」
 「あはは。用心しなきゃいけないほど人なんかいないってば、ノブオ。春休みだし」
 「それはハヤトの言うとおりだとは思うけどな。でも、絶え間なく見守っていないと意味ねえんじゃねえか? もしかしたらそろそろその瞬間かも知れねえし……」
 なんてリュウジに言われてオレたちはその木を見上げる。
 実はオレも去年、花が遅いことに気がついていたその木。オレは単にそういう種類なんだろうと親父に言われてそのまま受け流していたその木。
 ほかの木々が満開を過ぎた今でも、未だ静かに体育館の脇に鎮座している――そんな感じ。
 この木に花がついたとき、いったい何が起こるのか。なんてちょっと大袈裟かな。

 「ああ、でも開花は近いようだな。ほら、つぼみがふくらんでいる」
 「ホントっすね、ダイゴさん。触った開きそうに見えるっス」
 「こら、ノブオ。触ったらダメだろ? この木は特別なんだから」
 「物のたとえっスよ、ハヤトさん。ね、兄貴――?」
 そしてノブオがリュウジを振り返る。
 木に見入っていたリュウジは、ノブオに答えなかった。その変わりにちいさく嘆息を漏らす
 「お……」 
 「ん? どうかした?」
 
 オレがリュウジに問い返したそのときだった。
 「これはこれは、総隊長以下おそろいで」
 「ダイゴ。春休みなのに学校か? 珍しいね」
 口々に言いながら、園芸部のふたり――長髪氏と小柄氏が戻ってきた。
 「押忍。ちょっと用事が。な? リュウジ」
 「お、オウ――ってか園芸部。持ち場を離れちゃまずいだろ? 観察を続けないと、な? 今にも咲きそうに見えるじゃねえか」
 リュウジの言にはじかれたように園芸部のふたりは桜の木を見上げた。
 そして――
 「おお!!! 咲いている」
 「ああ、本当だ!!!」
 歓喜の叫びを校庭に響かせて、園芸部はもうオレたちにはお構いなしに桜の木に寄っていっていった。そう、最初の花の咲いた桜の木に――。
 なんだかんだ、オレたちは立ち会うことができたみたい。『鬼工七不思議』に言われるところの桜の開花の瞬間に。リュウジに視線をやったら、微笑みながら園芸部の様子を見ていた。



   * 2 *


 鬼工校庭を彩る桜の、最後の1本の開花を見届けたあと。
 園芸部はいろんなデータやら写真やらを忙しそうにとり始めたので、邪魔したら悪いということでオレたちは学校をあとにしてきていた。
 今日は早めの夜から単車で走る予定になっているので、一旦解散ということになった。

 道の途中でダイゴとノブオと別れて、リュウジとふたりの帰り道。なんだかリュウジがいつもに似合わずに神妙な表情をしているのがさっきから気になっていた。
 「どうかした? リュウジ」
 「あ――ああ。まあ、なんて言うか、な」
 「歯切れ悪いね、リュウジ。珍しいな」
 「そうか? ああ、でもそうかもな。いや、俺、ちょっとばかり申し訳なくてな」
 「何が?」
 オレが問うと、リュウジはすこしきまりの悪そうな顔を見せた。
 「実はな。俺、園芸部の奴らよか、ほんのちょっと先に気づいてたんだよな。花が咲いたのに」
 「え――」
 
 ああ、やっぱりな。なんてオレは思ってた。リュウジの様子が微妙にいつもと違うことに気づいていたから。
 「いや、悪気はねえんだ。そんな真剣に見てたわけじゃねえから。ただ、何てんだ? 見上げた瞬間に目に飛び込んできたってか。一輪だけ咲いてるのがな。なんて、こんな言い訳じみたのって俺には似合わねえんだけど」
 「それは、だってリュウジが悪いんじゃないし。たまたま園芸部がいなかったのがついてなかったんだし」
 「そうか? ハヤトはそう言ってくれるか?」
 「もちろんだよ。誰にも言わないしね」
 「――やっぱりハヤトは俺の気持ちをわかってくれるな!!!」
 「あはは、これでも付き合い長いから」
 なんて言ったら、リュウジはいい顔で笑ってた。

 「それに、さ。園芸部はオレたちと同じ意味あいであの木を見守っていたんじゃないしね。純粋に研究してただけだろ?」
 「ああ、そう言ってたな」
 「だから、仮に最初の一輪を見ることにそこまで徹底的にこだわっていたわけじゃないかもしれないし」
 「そう――とも言えるかも知れねえよな。ああ、でもやっぱりなんか申し訳ねえことには変わりないぜ。せっかくあんだけ頑張ってたんだしな」
 「あはは。リュウジらしいな」
 こう見えて努力を惜しまないリュウジ。努力する者には賞賛を惜しまないリュウジ。
 そんなところが総隊長として人を統べる器なんだろう。
 そういうリュウジの横をオレにはちゃんと守れているんだろうか――なんてときどき思うんだけど、リュウジとは縁あって近しい間柄になったんだから。これだってオレの使命だったのかもしれないし。
 
 リュウジが次の言葉を紡ぐ直前のほんの一瞬に、オレがそんなことを考えていたなんてリュウジにはわかっているわけなかった。
 にもかかわらず。
 「やっぱハヤトは俺のことをよくわかってるよな。俺がどんな言葉を期待してるか、とか」
 「ええ、そうかな? オレ、そんなに察しのいいほうじゃないけど?」
 「察しとかそういう、考えた上での言葉なんてどうでもいいと思わねえ? むしろ、ハヤトみてえに深く考えない物言いが、すとんと腑に落ちる、みたいなのって気分いいぜ!!!」
 「……ええと。思慮深くないオレが好ましい、って?」
 「わはははは!!! 別の言い方だとそうとも言うな!!! まあ、あれだ。なんだかんだ言ってハヤトがそばにいると楽でいいぜ。俺にはな」
 
 感謝すればいいのか。照れればいいのか。それとも馬鹿にするなと言えばいいのか。
 どれにも決めかねていたオレの心から、なんとなくこんな言葉が転がり出てきた。
 「これからもどうぞよろしく」
 我ながら妙な言葉の選び方だったと思う。聞いたリュウジが一瞬二の句を継げなかったから。
 それでもリュウジはふと空を見上げてから、オレに向き直ってこう言った。
 「オウ!!! こっちこそな」
 青い空には薄い雲がたなびいている。どこかから甘い春の匂いがふわりと漂ってくる。

 「ところでリュウジ。ここだけの話、最初の花を見たんだろ?」
 「ああ。もう忘れていいぜ、ハヤト」
 「うん。これだけ訊いたら忘れるよ。あのさ、今年1年幸運をもたらすんだろ? リュウジだったらどんなふうな幸運だったらいいと思った?」
 「俺か? そうだなあ。俺は実際、今のままが一番しあわせかもしれねえからな。願い事をするのが有効だとは聞いてねえけど、仮に願掛けしてみるとしたら――今と変わらねえ日々をずっと送れることが一番かな」
 「あはは。ストイックだなあ、リュウジ」
 「そうか?」
 「うん。だってさ、てっきり恋愛成就とかそういうのを期待してるのかと思ってた、オレ」
 「ば――何言ってるんだ、ハヤト!!! こ、恋とか、そのう……そんなん二の次だろ!!!」
 「あ、照れてる? リュウジ」
 「そんなんじゃねえってのに」
 ほんとリュウジってこういうところ純粋だよな。真っ赤になってるよ。
 だったらその辺は、かわりにオレが願掛けしてやっておこうかな。

 みんなで集まって走る予定の夜を前に、オレは前哨戦とばかりにひとりで夕方の国道を流した。すこし前まで厳しかった身を切るような冷たい風はどこへやら。
 ほんとに春はいいなあ――心が弾むような感じ。
 そのまま町を一周して、まだ時間は早いけれどもいつもの河川敷の集会所へ行ってみることにした。
 誰か来るまで土手の桜が散るのでも眺めていようかな、とかオレらしくない風流な心持ちで。
 
 河川敷に降りたところで気がついた。見慣れた赤い単車がそこに停まっている。
 あれ、先客か――と見渡してみると、土手の桜の下にリュウジが立っていた。考えることは一緒ってことか。
 
 「リュウジ」
 リュウジのマシンの横に愛車を停めて、手を振りながら土手をよじ登る。気づいたリュウジがオレに手を貸してくれた。
 「オウ、ハヤト。早いじゃねえか」
 「うん。もうひとっ走りしてきたとこだ」
 「そうか。朝じゃねえとちゃんと時間守れるんだな、ハヤトって」
 「……それは褒めてくれてるのかな」
 「そういうふうに聞こえるか? まあいいか」
 リュウジと並んで川の流れるのを見てる。時折吹く風に桜の花びらがのって、オレたちの眼前をかすめてゆく。

 「どうかした? なんかおとなしいけど」
 「俺か? たまにはいいじゃねえか。騒がしいだけが花見でもあるまいし」
 「って、それもリュウジっぽくないな」
 オレの言葉にリュウジからの返事はなかった。ほんのちょっと、何かを考えるような横顔。
 それを見守っていたら、リュウジがようやく口を開いた。
 
 「さっきな、俺、すげえ久しぶりに昼寝してな」
 「へえ。リュウジが昼寝って珍しいね」
 「ああ。ハヤトだったら毎日だろうけどな」
 「……うん」
 「まあ、それはいいや。でな、夢を見たんだ。薄いピンク色のふわっとした軽そうな衣装をつけた、女の人っぽい――神様なんだろうな、きっと。俺が敬虔な気持ちになったんだからな。そんな存在が出てくる夢だ」
 リュウジは声のトーンを上げずに話す。ふたりで喋っていても何かと腹の底から声を出す漢にしてみれば、これも珍しいこと。
 
 「へえ。神様。で?」
 「ああ。願いがあるならきいてやろうと仰った」
 オレではなく眼前の風景に視線をやったままのリュウジの横顔がへんてこに無表情だ。
 「願いって?」
 「さあな」
 「今のままの日々が続くようにって?」
 「……わかんねえけど。俺には答えようもなかったからな」
 「ふうん」
 夢の中のリュウジさながら、オレにも答えようがなかった。

 「でな。その夢から覚める瞬間にな、その神様が俺にこう訊いたのが妙に生々しくてよ」
 「何て?」
 「『サザエさん』を知っているか、と」
 「は? サザエさん――? な、なんで?」
 「さあな」
 どう考えても、ここは笑うところのような気がした。素っ頓狂な夢の話なんて、それが常だし。
 それなのにそうできない何かがリュウジとオレの間を支配していた。

 「サザエさんって言ったら、有名なやつだよな?」
 「多分な」
 「サザエさんはおっちょこちょいな主婦で、小学生の弟と妹がいて」
 「で、サザエさんの子供はいつまで経っても幼稚園に入る前ってやつだ」
 「そういえば赤ちゃんもいたっけ。オレが子供の頃から『バブバブ』とかしかしゃべれないまんまだな」
 「ああ。あの、永遠に時間の流れない漫画だよな」
 「それがどうしたんだろうな?」
 「わかんねえ」
 それからしばらくリュウジもオレも黙っていた。川の向こう岸の桜並木がこっちよりも強い風に煽られているのが遠目に見えた。

 その晩のオレたちは、春らしい春になってから初めての連れ走りだったからすごく盛り上がった。
 リュウジがいて、ダイゴとノブオがいて。リュウジが誘ったらしい千晶ちゃんも来て、千晶ちゃんのリアには千尋ちゃんも乗っていて。
 ほかにも鬼工の仲間たちが大勢合流していた。
 こんな大人数で走るのは、さすがにしょっちゅうあることではないので、それだけで気分が高揚してた。

 途中で対向車線の遠くから警察らしき赤灯が近づいてくるのにリュウジが気づいて、あわてて全機で海岸へ降りてやり過ごしたり。
 さらに暗黒一家とすれ違ったり。さすがにこちらの人数がいつもと違ったので、何かを仕掛けられることはなかったけれど。
 それからいつもの河川敷に戻って、しばらくわいわいやったりとか。

 楽しい時ってのはすぐ過ぎる。
 単車と一緒になって全身で感じる春。
 その日から残った春休みの数日を経て、ついに新学期を迎える日になっていた。
 
 いつもの通りにリュウジに起こされて始まる、学校の日の朝。
 そして辿り着いた学校――いつもの2年B組の教室。
 千晶ちゃんと挨拶して、玉城もいて――いつもの同級の面々。
 チャイムが鳴って、教室の前の扉から竹刀片手に赤ジャージが入ってくる――いつもの朝。
 「え~、諸君。今日から新学期だ。いつまでも春の浮ついた気分でいないように気を引き締めて生活するように」
 「相変わらずいかめしいなあ、赤ジャージ。ってかマキ姉は元気か?」
 「リュウジ! そのような個人的なことは後にするように」
 「わはははは!!! ハヤト、赤ジャージ照れてるぜ」
 「ほんとだ。なんか顔が赤いかも」
 「ハヤト。放課後は職員室に来るように」
 「え――? なんでオレ?」
 「わはは。ハヤト、新学期早々呼び出しか!!! 武勇伝だな!!!」
 「人ごとではない、リュウジ。もちろんお前も一緒に来るのだ」
 どっと教室が涌く。
 いつもの雰囲気がたまらなくあったかい。

 ――あれ?
 4月からの新学期なのに、なんで『いつもの教室 いつもの面々 いつもの雰囲気』なんだ?
 リュウジは気づいているのかな?
 これ、リュウジが願ったことなのかもしれないよな?
 サザエさんって、こういう話だったかもしれないよな?

 周囲一同誰もこれをおかしいと思っていないみたいな気がした。
 どうやらオレ、もう一度2年B組をやるらしい。オレが進級できなかったってことじゃないらしい。となりのC組にはダイゴがいるんだろう。そういや朝、ノブオも普通に階下の教室に入っていくのを見たし。
 
 ああ、もしかしたらこれが失われた七不思議の最後のひとつなのかもしれない。
 図書室で見つけた『鬼工七不思議』。最後まで暴けたのは、最初に見つけたオレだけだったんだろうか……。
 
 奇妙な心持ちになってはみたけど、まあいいか。
 オレもこの環境が大好きだから。
 いつまでも続くといい――そんなふうに思っているのは、きっとリュウジだけじゃないんだ。
 おそらくこれが鬼工の最後の不思議。
 そしてオレたち鬼浜爆走愚連隊が永遠にリュウジのもとにあるっていうことが生んだ不思議なのかもしれない。

 

    * 完 *
 
 
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 すべての不思議を解く者 2-1
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