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花冠の若君


   * 1 *


 「諸君。短い間だったがお世話になりました」
 すでに見慣れた前髪を掻き上げる仕草をしながら、白鳥先生が言った。
 白鳥先生が実習に来てから2週間。金曜日の今日がその最終日だ。
 帰りのホームルームでの白鳥先生は、いつもと変わらずクールで艶やかに挨拶をする。

 それに向かってリュウジが大声で応えた。
 「御苦労さんだったな、白鳥先生!!!」
 「ああ、リュウジ君。おかげさまでかなり勉強させていただいたよ。君のような活きの良い生徒がいたので、さすがの私も気苦労が絶えなかった」
 「わはははは、気苦労って、そんな大袈裟なもんじゃねえくせに。俺ら、みんな素直でいい生徒ばっかだろ?」
 「……私はリュウジ君ではないのでね。それなりに太平楽でいられないこともあるのだ」
 「おい!!! 俺が何にも考えてねえで平和に暮らしてるみたいなこと言うなや!!!」

 リュウジと白鳥先生のやりとりで教室がどっと涌く。
 最初はぜんぜん咬み合わなくて、白鳥先生にペースを乱されまくっていたリュウジだったけれど、ふとしたきっかけで理解しあって。
 それからは、わりと気安い感じで接し合っていたのを間近で見てた。
 
 「はいはい、ふたりしてツッコミだとコントにもなりませんよ。ね、みんな?」
 言って、千晶ちゃんが席を立つ。
 そして、あらかじめ用意してあった花束を白鳥先生に渡した。
 「はい、先生。もうお花はさんざんお家に飾ってあると思うけど。こういうときにはつきものだから」
 「ありがとう、千晶君。花はいくら飾っても飽きることはないので私は嬉しいよ」
 受け取った花束を抱いて、白鳥先生はうっとりと目を閉じた。
 その花束は昨日オレたちが注文したもので、もちろんあおいさんの作だ――白鳥先生は気づいているかな?
 リュウジは『鬼浜町商店街のイメージで』なんていう曖昧な注文をしたんだけど。
 真ん中にある数輪の白いバラを取り巻くのは、ピンクや赤、ブルー、黄色の花たち――いろんな色の花が元気な印象でひとまとめになっている。なるほど、活気のある花束だ。

 「とにかく、私はここで君達に学ばせてもらったことを忘れずに精進しようと思う。そしてきっと目標を達成したい、と――」
 「いい心がけだぜ!!! しっかり気合い入れてけや」
 「ああ、リュウジ君。私はきっと教師になってみせるよ」
 「オウ!!! でもって、春にはまた戻ってくるんだよな?」
 「そうだね。そうなれるように努力しようと思う」
 花を抱いた美青年が力強く言うのに、クラスの誰もが惜しみない拍手を送った。

 それから、赤ジャージが短くねぎらいの言葉を贈って。
 教室中を回って、クラスのひとりひとりと握手をして。
 さらに教室の外で待っていた、鬼工の数少ない女子生徒たちとも握手して――そこでまたいくつかの花束が贈呈されてたみたい。
 そうして白鳥先生の教育実習の最後の日は終わったんだ。

 白鳥先生が廊下から遠ざかる気配のあとに、リュウジが教卓に進んでこう言った。
 「そしたら日曜の昼、時間ある奴は河川敷に集合な!!!」
 「おう、絶対行くぜ~」
 「俺もだ、リュウジ」
 「盛り上がろうぜぃ!!」
 「オウ、楽しみにしてるぜ!!! 赤ジャージも来るよな?」
 「ああ、行けるようにしよう」
 なんだかんだとお祭り騒ぎの好きな2年B組の仲間たち。先導するのはもちろんリュウジ。こういうときのリュウジは見てて気分がいいほどいきいきしてる。
 リュウジ企画の白鳥先生送別会は、日曜の昼に河川敷。バーベキューやるんだって。
 それを思いついたときのリュウジの目は、やんちゃ小僧だった時代そのままと思われる輝きだった。

 一夜明けて、土曜の昼過ぎ。
 呼び出しがかかったから、リュウジの家――昇龍軒へ駆けつけた。
 行ってみたら、カウンターでラーメンを食べている白鳥先生がいた。
 「あれ、白鳥先生。来てたんだ」
 「ああ、ハヤト君。ごきげんよう」
 れんげを持ったままの体勢なのに、白鳥先生の笑みはやっぱり華麗だった。
 「オウ、来たな、ハヤト。昼飯は?」
 「まだ食べてない。朝が遅めだったから」
 「わはは、そんなことだろうと思ったぜ!!! 何か食うか?」
 「うん。いただこうかな」
 「そしたら、こないだ試食してもらったやつ、肉そぼろのほうな。あれメニューに入れたとこだから、それでどうだ?」
 「あ、いいね。じゃ、それで」
 「よし、ちょっと待ってろな」
 言ってリュウジは厨房に入っていった。オレは白鳥先生の隣に座る。

 「呼び出してしまったようで済まなかったね、ハヤト君」
 白鳥先生はラーメンをすすりながら――それすらもさまになるって、どういう人なんだろな――こう言った。
 「ぜんぜん平気。っていうか、オレを呼んだのは白鳥先生だった?」
 「ああ。まあ、間接的にはね。リュウジ君に付き合ってもらおうと思ってここへ来たら、ハヤト君も呼ぼうと彼が」
 「ん? どっか行くの? ……って、ああ、そうか。あおいさんのところか」
 「未だに独りで行く勇気がなくてね。お恥ずかしいのだが」
 「まあまあ。いいじゃん、どうせオレもリュウジも暇だし」
 「こら、ハヤト!!! お前はそうかもしれねえけど、俺はそんなに暇じゃねえってば」
 背後から降ってきたリュウジの大声。言いながらオレの前にどんぶりを置いてくれる。
 「あはは、聞こえてたか」
 「リュウジ君。忙しいところ申し訳ないとは思っているのだよ」
 「まあな、いいってことよ。な?」
 「うん。少なくともオレは暇だからね……」
 「わはは!!! そうだと思ったぜ。暇つぶしに呼んでやったんだから感謝されるよな、俺」
 「……はいはい、どうもありがとう、リュウジ」
 
 「ふふふ。君達、本当に仲がよいのだな」
 オレたちのやりとりを見ていた白鳥先生は、楽しそうに笑ってた。
 「そりゃそうだぜ!!! なあ、ハヤト?」
 「ああ、うん。まあそんなとこだね」
 「ずいぶん消極的な同意じゃねえか。何か文句あるのか?」
 「まさか。っていうか、そろそろ食べていい? これ」
 「オウ、何やってんだ、ハヤト!!! 早く食えっての!!! せっかく旨いのに、麺が伸びちまったら台無しだぜ」
 まったくもう、リュウジがオレに絡んでくるからじゃん――とか言えないけどさ。
 
 オレが食べ終わるのを待ってくれながら、白鳥先生は明日のリュウジ主導のバーベキューにあおいさんを呼んでもいいだろうか、と訊いていた。
 そのお誘いに、今日はあおいさんのところに行こうと思ったのだ、って。
 もちろんリュウジはすごく喜んでいて。
 おそらく先生がそう言い出さなかったとしても、リュウジが誘いに行ったんだろうけど。
 
 白鳥先生が鏡を見たいと言って席を立ったとき、リュウジはオレに小声で言った。
 「ハヤト。白鳥先生、成長したよな。自分からあおい姉ちゃんを誘いに行くって言えるようになったなんてよ。俺、すげえ感動したぜ……」
 「あはは。まるで親心だね、リュウジ」
 「そりゃそうだろ!!! だって、俺、本気で応援してるんだぜ?」
 何事にも手を抜かないリュウジの姿勢にも、オレは少なからず感動していたりして。



   * 2 *
 
 
 白鳥先生の誘いを受けて、花屋のあおいさんは満面の笑みを浮かべてた。
 「ええ、喜んで参加させてもらいますね」
 「感激です。あおいさんがいらしてくれるだけで、殺風景な河川敷も花園になります」
 「あは、そんなそんな」
 「偽りのない、私の本心です」
 白鳥先生がここへ通い詰めてもう10日近く。
 やっとあおいさんの前で自分らしい言葉を話せるようになったんだな、白鳥先生。
 
 「よかったな、リュウジ」
 「ああ。俺も心からうれしいって思ったぜ」
 ふたりの邪魔にならないように、ちょっと離れた入り口近くでリュウジと話す。
 「なんかいい雰囲気だよね、先生とあおいさん」
 「本当だぜ。白鳥先生、ちゃんと電話番号ぐらい訊けるといいんだけどな……」
 「あ、そうか。また遠く離れちゃうんだ。そう考えるとちょっとせつないな」
 「でもな。電車で2時間だって言ってたから、たまには帰ってくるんじゃねえ?」
 「あ、そんなもんなんだ。じゃあ……」
 その気だったらいつでも帰って来られるね、ってオレが言おうとしたときだった。
 
 オレたちの背後の自動ドアが開いて、ひとりの男の人が店に入ってきた。
 ダイゴをちょっとだけ小さくしたようながっちりした体型のその人は、入ってくるなりあおいさんを目に止めて、深々とお辞儀をする。
 「あおい様、ただいま帰還いたしました」
 「え――あ、俊也、久し振りじゃない」
 「って、オウ、トシ兄じゃねえか」
 「うん? お、昇龍軒のリュウジか。背、でっかくなったな?」
 「まあな。それなりに成長してるぜ」
 リュウジも顔見知りの人らしい。誰、と目顔でリュウジに問うと、商店街の魚屋の息子さんだと返ってくる。
 なるほど。リュウジの精神的『親戚』の一員ってことか。

 「何、どうしたの? 里帰り?」
 あおいさんは魚屋の息子の俊也さんに軽く声をかける。対する俊也さんは――なぜかしら緊張している感じ。
 「はい。と言いますか、来週から母校に教育実習で世話になりますので」
 「あら、奇遇。俊也も教育実習なのね。入れかわり、ですね。白鳥先生?」
 突然話を振られた白鳥先生は――奇妙な顔をして、俊也さんを見ていたようだった。

 「失礼だが、そちらは、暗黒水産の――?」
 「その通り。僕は暗黒水産の出身だが、そちらは?」
 「私は――過去に人知れずあなたを敵視していた者だ」
 「敵視、と?」
 ここ2週間ではじめて見る白鳥先生の鬼気迫る表情があった。
 商店街の路地でコウヘイとやりあう寸前だったときよりも、もっと――言うなれば青白い炎みたいなオーラが白鳥先生の背中から出ているっていうような。

 「その通り。私は鬼工OBの白鳥という者。鬼工現役時代にここで、そちらと……あおいさんの仲睦まじい雰囲気を見るにつけ、私は――いたたまれずにいたのだ」
 ああ、そういうことだったのか。オレはリュウジと視線を交わす。
 この間コウヘイの着ている暗黒水産の制服が気に障るようなことを言っていた白鳥先生のトラウマはここにあったのか。
 
 なるほど、なんてオレとリュウジは思っていたんだけど。
 期せずして当時の想いを口にすることになってしまった白鳥先生はそのあとまごついている。まあ、当時と何ら変わらぬ想いでいることを知っているオレたちには無理もないと思えるけど。
 そして、あとふたり――あおいさんと、暗黒水産OBの俊也さんは一瞬顔を見合わせて。
 そのあと、どちらからともなく、くすくす笑いがこぼれ落ちた。
 「オイ、あおい姉ちゃん。トシ兄も。そんな笑うことじゃねえだろ? 白鳥先生、本気だったんだぜ? なあ、ハヤト」
 「うん。っていうか、過去形でもないしね」
 なんて言ったら、白鳥先生は我を取り戻したように前髪を掻き上げながらこう言った。
 「……いいのだよ、リュウジ君。ハヤト君も。私はどうやらいい気になりすぎていたようだね」
 もはや取り繕うこともしようとせずに、白鳥先生はそう言った。
 言うだけ言って満足したように――オレたちのいる入り口付近に身を移す。
 立ち去る気だな、とリュウジもオレも瞬時に察する。

 「では、おふたりとも。引き続き仲睦まじくなさってください。私はこのあたりで――アディオス」
 「おい、ちょっと待てや!!! 白鳥先生!!!」
 「ふふふ、リュウジ君。男は去り際が大事なのだ。美しいまま散るのもまた一興」
 白鳥先生は前髪を掻き上げながら言って、そして店から出て行こうとする。それを引き留めるのは――おそらく白鳥先生が世界で一番美しいと思っている声だった。
 「待ってください、白鳥さん。それって誤解です。俊也――この人は、わたしの子分みたいなものなんです」
 自動ドアの向こうに去っていく白鳥先生をあおいさんのアニメ声が追い縋るのを聞く。

 「うん? 子分って何だ?」
 置いて行かれた格好のリュウジは俊也さんに問いかけた。
 「リュウジ。お前、覚えていないのか? 学生時代のあおい様のことを。この界隈であおい様に頭の上がる者はいなかった、というのを」
 「いや、とくに覚えてねえけどな。その頃の俺はあおい姉ちゃんに、こさえた傷を消毒してもらった記憶くらいしかねえぜ。で、絆創膏貼ってもらいながら、喧嘩指南を受けて」
 「え? リュウジ、あおいさんに喧嘩を教えてもらってた?」
 「――あ、そうだな。話してて思い出したぜ、ハヤト。そうだった、あおい姉ちゃん、いろいろ教えてくれたんだよな。今にして思えば、なんでそんなこと、って……」
 体躯のたくましい俊也さんは、太い首を大きく縦に振ったんだ。
 「なんだ。覚えているんじゃないか、リュウジ」
 「オウ。今まですっかり忘れてたけどな」

 どこか懐かしさを漂わせた目で、俊也さんはこう続けた。
 「あおい様は空手の達人でな、ここら界隈では誰よりも強かったんだぞ? すばしこくて、賢くて。立ち回りの鋭さは天下一だったんだ。だから俺たち同年代の者はあおい様には一目置いていて、それで俺は家が近いのもあって、あおい様の護衛――というと聞こえはいいが、平たく言えばパシリ役を務めていたというわけだ」
 「それでいつもあおいさんと一緒にいた、ってことですか?」
 思わずオレも訊いてみたくなる。
 「その通りだ。あおい様と行動を共にすることは何かと勉強になったし、なによりあおい様に用事を言いつけられるのは、俺の誇りでもあったな」
 「へえ。そうだったのか。俺、ぜんぜん知らなかったぜ」
 「そうかも知れないがな。ちょっと見には、あおい様は小柄でにこやかだから」

 ガラス張りの店内から外をみると、商店街のど真ん中で言葉を交わし合う白鳥先生とあおいさんの姿があった。
 ……確かに小柄で、にこやかなあおいさん。小さなひまわりみたいなあおいさんが最強だっていうのは信じられないけれど。
 まあ、人は見かけによらないっていうのは、白鳥先生を見ていて理解していたから多少は慣れていたからね。オレもリュウジも。
 
 そのまましばらく白鳥先生とあおいさんを見ていたら、どうやら白鳥先生の長年の誤解が解けたらしいことがわかった。
 会話の内容はまったく聞こえないけれど、白鳥先生の表情には――いつも以上の、作り物とは到底思えない笑顔が見て取れたから。
 「なあ、トシ兄。あらためて訊くけどな」
 「何だ? リュウジ」
 「トシ兄は、あおい姉ちゃんと付き合ってたんじゃねえんだよな?」
 「当然だ。そんな畏れ多いことを出来るほどの肝は持っておらんのでな、俺は」
 俊也さんは、筋肉質な体つきを縮める勢いで否定してた。

 「でもって、トシ兄。あおい姉ちゃんって、今、恋人いるかどうか知ってるか?」
 「俺が、か? 知る由もないな。実際にお会いするのは久し振りだし」
 「あれ? リュウジ、こないだ白鳥先生に、あおいさんに今は恋人いないって言ってなかったっけ?」
 「ああ――あれか。あれはな、ハヤト。確信があったわけじゃねえんだよな」
 ちょっと悪戯っぽくリュウジは笑って頭を掻いた。
 「だってよ。あのままじゃ、白鳥先生が浮かばれねえような気がしてな」
 ああ、そうか。逃げ腰だった白鳥先生を前に進ませようとしていた、ってことか。リュウジらしいとは思うけど。
 「だがな、リュウジ。もしかすると、あちらさんといい雰囲気なのかも知れんな。俺はあおい様のあんな表情は見たことがない」
 俊也さんが指で示したほうを見ると、まだ白鳥先生と何か言葉を交わしているあおいさんの照れたような笑顔があった。
 もしかしたら白鳥先生は、彼らしい台詞をあおいさんに投げかけたのかもしれない。
 彼らしい――麗しくて艶やかで、女の人が喜ぶような言葉を。

 日曜の昼前の鬼川は、梅雨の晴れ間の好天できらきらと輝いている。
 今日はリュウジ企画の、白鳥先生送別会。いつもの河川敷にクラスのほとんどの奴らが集まって、バーベキューの準備にかかっているところ。
 話が広まったのか、他のクラスの奴とか、あと他学年の女子生徒なんかも来てる。
 これはリュウジが呼んだんだけど、当然ダイゴとノブオもいて。もちろん赤ジャージもいて。
 「そしたらお前ら、白鳥先生が来る時間まであとちょっとだからな!!! ちょうどいい頃合いで焼けるように見計らっとけな!!!」
 「お~う!! 任せとけ、リュウジ」
 「あ、オレもOKっス、兄貴ぃ」
 「オウ、頼んだぜ、みんな!!!」
 「押忍。合点承知」
 
 みんな自主的に気合い入れて準備作業をこなしている。連帯感あっていい感じ。
 オレも鉄板を設置するのを手伝ったりとか、千晶ちゃんに頼まれてタマネギを切ったりとか――目に滲みるんだよね、タマネギ。
 「あは、ハヤト。大丈夫?」
 「うん。さすがに滲みる。涙が出るね」
 潤んだ目をこすりつつ振り返ってみると、河川敷の土手に座り込んで、あおいさんが一生懸命に手を動かしているのが見えた。

 あおいさん、来てたんだ――なんて思ってそばにいたリュウジに話しかけてみる。
 「リュウジ。あおいさん、あそこで何をしてるんだろ?」 
 オレの指の向くほうを見て、リュウジはかすかに笑って答えた。
 「ああ、あれな。あおい姉ちゃん、きっと冠を編んでるんだな」
 「冠――?」
 「土手に咲いてる白い花、あるだろ? 四つ葉が縁起いいっていう、ええと……」
 「ああ、シロツメクサ?」
 「そんな名前だったっけか。でな、あおい姉ちゃん、それ編むの巧いんだよな。俺も子供のころに教わったことがあるな。もう覚えてねえけど」
 昔を懐かしむ表情でリュウジはあおいさんを眺めている。
 「へえ。シロツメクサの花冠か」
 そうと聞くと納得だ。白い花と緑の葉っぱ、2色のコントラストが丸く編まれていくのを遠目に見る。
 「なあ、ハヤト。あれ、白鳥先生に似合うと思わねえ?」
 「そうだね。オレもそう思ってた。王子様には冠はつきものだから」
 「わはは、王子様か!!! 確かにな。白鳥先生って、そんな感じかもしれねえもんな」

 そろそろ白鳥先生が到着してもいい時間。オレは白鳥先生があおいさんの手製の花冠をつけているところを想像して思わず顔がほころんだ。
 うん、きっと今のリュウジと似たような顔をしてるんだろうな、オレ。



   * 花冠の若君 完 *

 
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