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祭という名の激突に向けて 2


 「失礼します。主将、リュウジさんたちをお連れしました」
 「ああ、天宮。ご苦労だった」
 特別教室棟にある生徒会議室の中には、オレたちもそれなりに面識のある野球部の連中が居並んでいた。
 
 「オウ、森園!!! なんでこんなとこで偉そうにしてんだ?」
 「ふふふ、リュウジ。別に偉そうなことなんてないさ」
 とは言いながら、森園主将は奥の窓際に近い椅子に悠然と足を組んで座っていた。
 その細い中指が、ゆっくりとした仕草で縁なし眼鏡を持ち上げる。

 「とりたてて偉いことはないんだが。けど、現在俺はちょっとした肩書きをもらっているんだ」
 「ん? 何だ、それは?」
 「俺は、本年度の体育祭実行委員長を務めることになったのだよ。俺の権限で、実行役員は野球部の連中に押しつけた」
 「へええ、そうだったのか。そういやそろそろだもんな、体育祭」
 「ああ」
 天宮くんに椅子を勧められて、オレたちもおのおの席につく。
 
 「で? その体育祭実行委員長が俺に何の用だ?」
 「頼みたいことがあってね、リュウジ」
 足を組み替えて、森園主将が続けた。
 
 「その前に、今年の体育祭がちょっとした新趣向で開かれることをお知らせしておこう。今年は例年とは趣向を変えて、学校対決にしようということになったのだよ、リュウジ」
 「学校対決?」
 ふふふ、と森園主将が笑みを挟む。
 「さまざまな意味でライバル関係である暗黒水産と、学校単位で対決してみたらどうだろうという意見が通ったわけなのだ」
 森園主将の表情は、なんだか満足そうだった。

 「それって、毎年みたく学校内で紅組と白組に別れて対決じゃなく、ってことか?」
 「ああ。そうだね。今年は全校一軍となって、暗黒水産と対決するんだよ、リュウジ」
 「って、それはいったい誰が決めたんだ?」
 「それは──両校の実行委員会同志が協議した結果だ。両校の先生方も同意してくださったので実現する運びとなったのだ」
 「なるほどな。面白い案ではあるかも知れねえな」
 リュウジも森園主将につられるかのように、いきいきとした顔になってる。
 
 「リュウジならそう言うだろうと思ったよ。それに、最初に相談した、リュウジのところの担任も乗り気だったしね」
 「担任……赤ジャージか? そうか。今のあいつなら逆に焚きつけてもおかしくねえもんな、そんな案が出たら」
 なんだか観念したような顔で、リュウジはオレたちを見た。
 「確かにね。赤ジャージも対決準備の真っ只中だもんな」
 「押忍。打倒・暗黒は先生の口癖だ、このところ」
 「あ、オレも聞いたことあるっス」
 こちらもまあ、個人的なわけありに過ぎないんだけど。
 オレたちはそんなことになっているなんてちっとも知らなかった。
 もちろんほかの生徒たちも知らないんだろうけど。

 「このことは、6時間目の全校集会で生徒たちに発表することになっている。それに先んじてリュウジを呼んだのはほかでもない」
 眼鏡の奥で森園主将の目がきらめく。なんとなく、闘う気迫を感じさせる──言ってみれば勝負を前にした控え室で見たことあるようなまなざしだった。
 「リュウジ。君に応援隊長就任を依頼したいのだ」
 「え──俺がか?」
 森園主将はちらりと、オレの横にいたダイゴに目をやった。
 ちいさくダイゴが頷いたあたりを見ると、森園主将と同級のダイゴは前もって相談でもされていたのかもしれない。

 「とにかく夏の県大会ではリュウジたちには本当に世話になったと感謝している。あの時と同じ魂で、ふたたび宿命の闘いを盛り上げてほしいのだ、リュウジ」
 森園主将は立ち上がって、リュウジに向かってお辞儀をした。
 実行委員たち──野球部の面々も森園主将に倣う。

 「実は過日、暗黒水産と非公式の練習試合をやってね。そこで不甲斐ないことに、我々は負けてしまったのだよ」
 「主将、あの時はおれが……」
 「ああ、天宮。お前ひとりのせいではないだろう?」
 はい、と頷きつつも、天宮くんはその時の気持ちを思いだしたのか、奥歯を噛み締めるような表情をする。

 「それで、その時に思ったのだ。負けたのはリュウジたちの応援がなかったからかもしれない、とね」
 「わはは、まさか、そんなことはねえだろ?」
 とか言いながら、リュウジはまんざらでもないような顔を見せた。
 「また同時に、敗戦があったからこそ、新趣向の体育祭を思いついたわけなのだが」
 「そうか。なるほどそういうことか」
 はっきり言って、森園主将は乗せ上手だと思う。
 こんな切り出し方をしたら、リュウジに否やは言えないんじゃないか?

 とにかく、野球部、赤ジャージ、そしてオレたち──それぞれ別々の理由だけど、わけありの、暗黒水産には負けられない人間どもが寄り集まった恰好になっていて。
 まだ腕組みをしたままのリュウジは、実行委員長・森園主将の要請にどう応えたもんだろうな。

 「応援隊長──か。あれ、案外疲れるもんだぜ? 森園」
 どうやらリュウジのその台詞は、森園主将には「諾」と聞こえたようだった。
 オレたちにもそう聞こえたからね。

 さて、なんだかまたしても慌ただしくなりそうだ。


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