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祭という名の激突に向けて 5


 午前中は気もそぞろに授業を受けて、昼休みのあとは全校総出で体育祭の準備。
 必要なものを作ったり、それぞれの種目を練習したり──そんな毎日は慌ただしく過ぎていく。
 全校生徒の様子を窺ったりするのが役目のオレたちではあるのだが、オレたちだって当日に向けての練習らしきをしないといけない部分があった。
 面倒見のいいリュウジのことだから自分たちのことはおのずと後回しなもんで、オレたちは人知れず、日が暮れたころの河川敷で鍛えるべきところを鍛えることにした。

 「鬼浜工業高校、本気出してくんで夜露死苦ぅ!!!」
 「夜露死苦ぅ!!」
 なんて感じで声出し練習をしている。
 
 「あ~、ノブオ。まだまだだな。こう、腹にチカラ入れろや。そうすっと、自然に上体が後ろに反るだろ? でも、顎はきちんと引くんだぜ」
 「えと、こうっスか?──夜露死苦ぅぅ!!!」
 「オウ、だいぶいいじゃねえか。な、ダイゴ?」
 「押忍。腹に力を込めれば、自然と喉への負担も少ないゆえ効果的だな」
 「なるほどね~。腹にチカラか」
 「オイ、感心してる場合じゃねえぞ、ハヤト!!! お前もちょっとやってみろや」
 「ああ、はいはい、っと──夜露死苦~~~」
 「なんかこう、締まりがねえなあ、ハヤト」
 「え? そう? リュウジ」
 こんな具合でオレたちは、河川敷を勝手に賑わしている。これじゃ女子が夜に来たくない場所ナンバーワンもうなずけるな。

 しばらく大声で怒鳴ってたオレたちは、土手に座って小休止を挟むことにした。
 ノブオが買ってきてくれた飲み物で、からからに乾燥した喉を湿らせる。
 と、土手の上から声が呼んだ。
 「おおい、お前たち! どうした、そんなとこで?」
 「お? オウ、赤ジャージか!!!」
 リュウジが応えると、赤ジャージは手をあげて土手を下ってきた。

 「なんだ? こんな時間にランニングかよ」
 「ああ。このごろは早い時間は学校で練習できないからな。道場も空かないことだし」
 「あ、そうか。道場も体育祭の練習で使ってるからね」
 「そうなのだ、ハヤト。とはいえ、生徒一丸となって何かをするのは良いことだ。俺は見ていて楽しいと思う」
 「そうか。なら俺らも奮起しがいがあるってもんだよな!!!」
 赤ジャージにそう答えたリュウジの台詞は、さすがに応援隊長だけある感じだった。
 「押忍」
 「そうっスね、兄貴!!」

 「それで? 先生はこれからまた道場へ戻るんだ?」
 「そうだな。まだ少しだけ時間があるので。時間は無駄にしたくないのだ」
 「オウ!!! いいこと言うなあ、赤ジャージ」
 頷いて、リュウジは赤ジャージの肩をぽんと叩いた。……偉そうだなあ。

 「なあ、赤ジャージ。今度の体育祭で、もしかして佐藤先生と一戦交えたりする予定なのか?」
 リュウジは思いついたようにそう訊いた。
 赤ジャージの倒さねばならぬ敵は愛しい人の兄上で、暗黒水産の体育教師の佐藤先生だ。
 「いや。今回はまだ機が熟さぬので見送ることになった」
 「ふうん。いろいろ考えてるんだ、先生」
 「そうれはそうだ。いい大人だからな。向こう見ずにつっかかっていくだけが戦法ではない」
 「──なるほどな。勉強になったぜ、さすが教師だな、赤ジャージ」
 自分たちのことを言われたような気がしたオレたちは、リュウジの言葉にそれぞれ頷いて、赤ジャージをまっすぐに見た。

 「おう、よせ。そんな目で見るなよ、お前たち」
 そんなオレたちに気付いて、赤ジャージは慌てた素振りを見せた。
 「第一、今回は見送ろうという作戦を俺に伝授してくださったのは、マキさんだ」
 「何? マキ姉の作戦なのか?」
 照れる赤ジャージに、つっかかっていくリュウジという図式はもう見慣れたもの。
 「ちぇ。なんだ。尊敬して損したぜ。まあな、マキ姉の作戦だったらそれ以上のものはねえからな」
 「ああ。俺もそう思っている」
 「あははは、先生、のろけてるね~」
 「ハ、ハヤト、俺はそんなつもりでは……」
 暗かったからわからないけれど、きっと赤ジャージは真っ赤になってるんだろうな。
 オレのとなりでリュウジは唇をとがらせて赤ジャージを睨んでいるけど。

 「それでは俺はそろそろ戻る」
 「オウ。頑張れや、赤ジャージ!!」
 「どうもな。お前たちも大変だろうが、応援隊に期待している」
 そう言って、赤ジャージはふたたび川沿いのコースをランニングで戻っていった。

 「さて、それじゃ俺たちも練習に戻ろうぜ!!!」
 リュウジがオレたちに声をかける。
 「だね。さあ、もうひと頑張りだ」
 「おおっ、ハヤトさん。やる気じゃないっスか!!」
 「そりゃあね~。だってリュウジのOK出ないと、帰れないだろ? 今日」
 「わはは、ハヤト!!! その通りだぜ。よくわかったな?」
 「わかるよ。リュウジが考えてることくらい」
 オレは苦笑いをリュウジに返す。
 じゃあいくかあ、と腰を上げる──と。

 「あれ? ダイゴ、どした?」
 ダイゴがひとり、オレたちとは逆方向を見据えていた。視線の先は、土手のススキが群生しているあたり。
 「いや──気のせいか?」
 「何か出ました? ダイゴさん」
 「何っ!!! おい、ダイゴ……」
 「いや、気にするな。何でもない、リュウジ。少なくともリュウジが怖れるような手合いではないはずだ」
 「そうか?」
 「押忍。ただ──気配が、な。どこかで感じたことのある気配がしたのだ。そのあたりで」
 ダイゴの顔からすると、気配の持ち主の察しはついているんだろう。
 「まあ、放っておいても害はないだろう。さあ、リュウジ。続きをやろう」
 「お、おう……」
 ちょっとリュウジのテンションが下がりかけたけど、ひとつ大声を出したらもう忘れたみたいだった。

 そしてオレたちは、空腹に耐えられなくなるまでそこでそうして声を張り上げていたんだ。


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