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祭という名の激突に向けて 7


 ダイゴが捕獲して、ノブオが痛めつけた曲者──暗黒一家のタカシは、問答無用で体育祭実行員会の根城になっている生徒会議室に連行されていた。
 窓際の椅子に座った森園主将の真正面に座らされたタカシは、周囲を野球部とオレたちに囲まれて挙動不審におろおろしている。
 
 「それで? この者の働いた狼藉とは?」
 「報告します。主将」
 口を開いたのは、目撃者だった野球部1年生の天宮くんだった。
 「こいつ、体育器具庫の陰にいたんです。それで、中庭で練習をしているうちの様子をずっと見てました」
 「ふうん。スパイ──だな? その制服は暗黒水産だろう?」
 「…………」
 うつむいたまま、タカシは何も答えない。

 「それで、おれが声を掛けたんです。そしたら校庭のほうへ逃げて。逃げながら、おれに向かって何か尖ったものをたくさん投げてきたんです。それを見て、校庭にいた生徒たちが一斉に追いかけて……」
 「それをダイゴが捕まえて、ノブオが殴ったってことだな?」
 リュウジが口を挟むのに、天宮くんは頷いた。

 「主将。こいつがおれに向かって投げたのは、これです」
 天宮くんは、拾い集めたらしい銀色の尖ったものをいくつか森園主将に手渡した。
 「これは何だ? 暗黒水産」
 「ええっと……これは鋲です」
 タカシはちいさくそう言った。
 「これでうちの天宮をやっつけようとした、と?」
 「いいえ……ただ、なんとなく。持ってたから」
 森園主将は鋲を指先で転がしながらタカシを見る。
 見れば、タカシがおそらく苦し紛れにばらまいたと思われる鋲っていうのは、革ジャンなんかに打つやつみたいだ。パンクの人が飾るアレだ。

 「とにかく、暗黒水産に連絡しよう。このまま帰らせるのも何だし」
 「あ、それなら僕がしとこうか。僕、暗黒の番長の連絡先知ってるから」
 右手を挙げて言ったのは、玉城だった。
 「うん? 暗黒の番長ってのは……」
 「リュウジも知ってる奴。コウちゃんだよ」
 「コ──コウちゃん、だあ?」
 多分、玉城が言っているのはコウヘイのことだと推察できるんだけど、それにしてもコウちゃんってのは──リュウジ以下のオレたちは、ぽかんと口を開けたまま。
 
 「僕、コウちゃんとは昔馴染みでね」
 オレたちの様子を見て、玉城はこう説明を挟んだ。
 「それから、タカシも。な?」
 「……はい」
 消え入りそうな声でタカシは玉城に答えた。
 「僕、中学までピアノ教室で友達だったんだよね、コウちゃんと。タカシもそのとき一緒だったってことで」
 「えええっっっ!!!」
 にこやかに、懐かしそうな顔をしながら言う玉城に、オレたちはまたしても絶句してしまったんだ。

 「ってことは? タカシは昔からコウヘイの舎弟だったってことか?」
 リュウジが問うのに、タカシは答えなかったけれど──玉城がちいさく頷いていた。
 「それにしてもピアノって、コウヘイのイメージじゃないね」
 「そうかな、ハヤト? 目つきは悪いけど、コウちゃんて繊細な音を出す人だよ?」
 「…………」
 今度こそ、オレたちは顔を見合わせたまま、まったく言葉が見つからなかった……。

 そして、玉城がコウヘイに連絡を入れたようだ。
 本来ならば先方の実行委員会を直接呼び出してもいいような狼藉だったと思うけど、玉城の縁があったので、とりあえず大事にはしないでよろしい、と森園主将が言ったんだ。

 「まあ、大事にしようがしまいが、俺の気持ちに変わりはねえぜ。俺はこそこそ裏で動くような行いは許さねえ。正々堂々と、真っ正面からぶつかって来いってんだ!!!」
 「あ──リュウジ!!!」
 「兄貴!!! ちょっと──」
 リュウジの今にも殴りかかりそうな勢いは、座ったままちいさく身を竦めているタカシに真っ向からぶつかっていった。オレとノブオが場所柄を考えて慌てて制止しようとするけど、あんまり意味がなかったみたいだ。
 リュウジは止めるオレとノブオに睨みを利かせてる。
 
 それを引き継いだのはダイゴだった。
 「少々押さえておこう、リュウジ。ここで迂闊に手を出すのは得策ではない」
 「……そうか? ダイゴ」
 「押忍。落ち着いて先方の出方を待つほうがよいと思う。俺は」
 「そうだね。冷静なダイゴが言うんだから。な、リュウジ?」
 「オウ……」

 ようやくリュウジは落ち着いたようだった。ダイゴは重要なところで流れを変えてくれる見上げた男だ。それへ続けてノブオも言う。
 「それに兄貴。こいつごとき、兄貴が手を出すまでもないですって。いざとなったらオレに任せてください!!!」
 違う面からノブオが切り込む。それへリュウジは笑みを返した。
 「そうだよな。そん時はノブオに頼むことにするか!!!」
 「だね、リュウジ。何だったらオレも加勢するよ」
 「ハヤトが──か? まあいいか。そういうこともあるかも知れねえしな」
 よしよし、リュウジはこれでいつも通りだ。

 ああ、こういうのを見てると、オレたち鬼浜爆走愚連隊ってのはいいバランスで4人集まったな、なんて思う。
 口には出さないチームへの自画自賛を噛み締めていると、扉をノックする音が聞こえてくる。
 ついに──タカシの迎えが扉の向こうに到着したということを、冷たく張りつめた空気の流れがオレたちに告げていたみたいだった。


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