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祭という名の激突に向けて 10


 「鬼工よ。今回は何から何まで済まなかった」
 しばらく後、ダイゴに倒されたゴンタが正気づくのを待ちながら、コウヘイが森園主将にこう言った。決してリュウジに向けてではないところが奴のプライドなんだと思う。
 「ああ。いろいろ言いたいことも無くはないけど。なあ、リュウジ?」
 「オウ!!! 本当だったら無事では帰したくねえけどな。そんなことしたら森園のコケンにかかわるんだろう?」
 「まあね。そんなとこだ。今さっきの大きい人が暴れたのは、事故なんだろ? 暗黒総帥」
 「ああ。そう信じてもらえれば幸いだ」
 強くない口調でコウヘイは言う。
 付き従うハンゾウはゴンタに水を飲ませようと苦心していて、もう一方のタカシは、コウヘイの横でこれまた申し訳なさそうな顔をしていた。
 
 「それでは、体育祭実行委員長の権限において、今回のことはすべて事故と見なす。いいな、実行委員諸君?」
 「はい──主将!!!」
 野球部一同は口を揃えて返事をした。
 「また、今日のことを面白く思わない者は、体育祭本番で正々堂々と勝利でもって憂さを晴らせばよい。以上だ」
 「おう!!!」
 これは、野次馬していた生徒たちに向けての言葉だ。

 「さて、我々も暇ではない。各自持ち場に戻ろう。悪いけどリュウジ、ここは頼んでもいいかな?」
 「オウ、当たり前!!! 俺らが責任もって預かるから、お前らはしっかり練習に精出せや!!!」
 「お~~~う!!!」
 リュウジの返答をきっかけに、それぞれは持ち場だったり練習だったりに戻っていったんだ。
 
 立ち去り際に、コウヘイとタカシの幼友達の玉城がコウヘイに言った。
 「コウちゃん。あとでタカシを虐めたりすんなよな。タカシは今でもコウちゃんを尊敬してる。コウちゃんに忠実なのが高じてこうなっただけだから」
 「玉城──」
 「じゃ、僕はこれで。油売ってると主将にどやされるからね」
 ばいばい、と手を振ってから、玉城は森園主将の背中を追いかけていった。
 タカシはうつむいていて、コウヘイは遠くを見ていた。
 
 さて、生徒諸君が退いたあと。練習を再開した女子たちのダンス用の曲をBGMに、オレたちはゴンタが起きあがるのを待ってる。
 「どうした、女子? 練習に戻らなくていいのか?」
 何故かオレたちにつきあって、ゴンタの様子を見ている千晶ちゃんにコウヘイは問う。
 「うん。あっちは大丈夫。もう最後のツメだし、それにあんたたちにあたしの華麗なとこ見せたらもったいないじゃない?」
 くふふ、と千晶ちゃんは笑いかけてる。なんか余裕あるよな。

 「それはそうと鬼工の女子よ。あのようなゴンタの前に立てるとは見上げた勇気だ。感謝する」
 そっけなく──だけど感慨を込めてコウヘイが言った。
 オレたちはなんとなく、口を挟む余地がない感じで、ただその風景を見ていた。
 「どういたしまして。あたし、逞しい女だっていつもあのへんに言われてるから」
 「そうか。ところで女子。ダンスに出るのだな? ということは、本当に女子なのだな?」
 「え──あたし?」
 訊いたコウヘイは、どことなく神妙な顔をしていて、訊かれた千晶ちゃんはきょとんとした顔をしていた。

 「コウヘイ!! 野暮なこと訊くんじゃねえ。そんなのどうだっていいじゃねえか? 千晶ちゃんは千晶ちゃんだぜ? それに何か文句でもあるのか?」
 「いや。そういうことじゃねえんだ……」
 どうもコウヘイは、歯切れのよろしくない感じだ。
 なんか変だな、と思ったところでハンゾウが言った。
 「あ、総帥。ゴンタが目を覚ました」
 「……ん~?」
 倒れたままの上体を起こしつつ、ゴンタは周囲を見回して不思議そうな顔をした。
 ムリもないよな。正気になって見るのは、きっと初めてみる他校の風景だから。

 「あ、おっきい人。大丈夫?」
 「ん? ……うわああああ」
 覚醒したゴンタは、どうしてだか千晶ちゃんの顔を見て怯えた目をしてる。
 「あはは、千晶ちゃんはネズミじゃないってば。あ、それとももしかして、またひとつ苦手ができちゃった? ゴンタ」
 「ハヤト──それ、あんま笑えないかもしれねえぞ?」
 「え──?」
 「押忍。ゴンタにもうひとつ弱点が出来た場面に立ち会ったかもしれないな、俺たちは」
 ダイゴが重々しくそう言った。
 「ええっと……やっぱり千晶センパイってかっこいいっス~」
 そんなふうにノブオが讃えるのを聞きながら、コウヘイはまだ神妙な面持ちで千晶ちゃんを見ていたのだった。

 騒動はひとまず決着して──最後にもう一度コウヘイが詫びを言い、タカシも頭を下げ、ゴンタはいまだ怯えており、ハンゾウはそんなゴンタをフォローしながら──暗黒一家はわが鬼工をあとにした。

 時刻はすでに夜に近づいている。
 あのあと残った短い時間を特訓の続きに充てたオレたちだったが、照明器具もろくにない体育館裏が暗くなってきたのを機に、じゃあまた明日と切り上げたところだ。
 校門を出てすこし行って、別方向のダイゴとノブオに別れを言って、そしてオレとリュウジはふたり並んで帰途についたんだ。

 なんとなく話しながらの帰り道。
 「そう言えばリュウジ。オレ、気付いたんだけど──タカシが偵察してたのって、中庭だろ? でもって、騒ぎでうやむやになっちゃった、あいつらの言うこないだの勝負っつったら……もしかして?」
 「オウ。それは俺も思ったけどな。どうなんだろうな?」
 「あのさ。こないだ、オレ、放課後に千晶ちゃんと一緒のときにコウヘイと会ってさ。そのとき千晶ちゃんも制服だったから、コウヘイが不思議そうな顔してたんだよ」
 「え? そんなことがあったのか、ハヤト。けど千晶ちゃんが制服だと何が不思議なんだ?」
 「……だよね。オレたちは見慣れてるからそう思うよな。コウヘイさ、『なんで男用の制服を着てるのか』って」
 「わはははは、そうか!!! 千晶ちゃんは女の子の制服だと思ってたわけか」
 リュウジはやっと思い至って笑ってる。

 「それでさ、もしかしてコウヘイに忠実なタカシが探りたかった、コウヘイが拘ってることってソレかな、って」
 「むう。そうなのかな。だとしても、コウヘイが千晶ちゃんにこだわる理由ってのが解らねえな。そんなに根にもってるとも思えねえけど」
 「いや……根にもつっていうか。いいや。きっとオレの考えすぎだから。うん」
 オレ、ちょっと思ってたんだ。あのときコウヘイが千晶ちゃんを見てた様子がアレかなあ、と。つまり、コウヘイは千晶ちゃんを、根にもつどころかむしろ憎からず思っているんじゃないかな、って。
 
 けど、リュウジはまったくそんなふうには思っていないみたいだ。
 「ん? なんだよハヤト。歯切れ悪いな?」
 「いや、なんでもないから気にしないでいいや。リュウジ」
 「そうか? じゃあまあ、いいか」
 リュウジはただの推察を深く勘ぐるような漢じゃないからね。そこがまた漢らしくていいな、とオレは秘かに思っていた。

 「なあ、それはそうとハヤト。腹へったな」
 ほら、もうこんな調子でリュウジは話題を変えてくるんだ。
 「そうだね。何か食ってく?」
 「オウ!!! こないだ駅の向こうに新しいラーメン屋ができたらしいんだよな。ハヤト、ちょっと行ってみねえ?」
 「あはははは、もしかして偵察ってやつ?」
 「まあ……そうとも言うかもな」
 「え~と、暗黒の誰かみたいに捕獲されないように気をつけよう」
 「わはははは。俺はそんなドジは踏まねえぜ!!!」
 
 気がつけば体育祭まであと3日。
 なんだかんだと忙しいことが楽しくもあるオレたちは、本番に向けて気合い入れてこうと思ってる。
 腹ごしらえもある意味重要な仕事のうち。競合店の味は、リュウジにどんな気合いを注入してくれるやら。
 
 
   * 祭という名の激突に向けて 完 * 
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

はは~ん

コウヘイってばもしかしてぇ・・・・
ま、どうなるか今後を楽しみにしております♪
でも千晶ちゃんが男って知ったらどうなるんだろ・・・
ショックかな?

>>ピノコさま

わたしも、もう心配で心配でwww
どうしちゃったんでしょうねえ、コウヘイは。
どうなっちゃうんでしょうねえ、コウヘイは。

今後の展開は、華丸まったく予想できません。
コウヘイ次第だな。だはは。

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