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栄光をつかめ 2

 「え~、そんなわけで途中結果が出た」
 午前の部が個人種目の100m走をもって終了すると、本部テントの前に進み出た実行委員長の森園主将がマイクを手に話し始めた。

 「ただ今のスコアは──240対225で暗黒水産のリードだ」
 それを聞いて、ざわつく鬼工側。対する暗黒側は、歓喜の怒号が地面を揺らす勢いだった。
 「僅差なので、まだまだ勝負の行方はわからないも同然。暗黒水産諸君はリードを守れるよう、また鬼浜工業諸君は追い越せるよう、双方本気で臨んでくれ」
 そんな森園主将の言に、両校生徒たちはそれぞれ違った意味で気合いを入れ直しているようだ。

 昼食を挟んだあとの午後の部は、持久走から始まる。
 「オイ、ハヤト。入場門のとこに佐藤先生がいるぜ?」
 「ええ? どれ? あれ、ほんとだ」
 リュウジに示されて見ると、担任の赤ジャージの因縁の宿敵である暗黒水産の体育教師・佐藤先生が黒いジャージに身を包んで、頭に巻いたはちまきを締め直しているところだ。

 「あれ、もしかして走るのかな? あ、森園主将!」
 ちょうど目の前を横切ろうとしていた森園主将を呼び止める。
 「ん? ああ、相棒さん。呼んだか?」
 「あのさ、あそこにいる暗黒の先生って、もしかして走るの?」
 「ああ。エントリーしている。今朝になって。もちろん順位は関係なしという前提で」
 「へえ。そうなんだ」
 「って、ハヤト!! 感心してる場合かよ!!! ダイゴ、赤ジャージはどこだ?」
 「うむ──ああ、あそこだ。得点ボードの前にいる」
 「よし、ノブオ、走れ!!!」
 「はいっ、了解っス、兄貴」
 「森園、急遽エントリーだぜ。赤ジャージも走る」
 「ふふふ。大歓迎だよ。そうこなくちゃね」
 ノブオが赤ジャージのもとに走るのを見ながら、オレたちは違った形の赤ジャージと佐藤先生の対決が始まる予感に熱くなってた。

 持久走のスタートを告げるピストルが鳴るのを選手たちが待つ。
 各校生徒30人ずつと、先生1人ずつの計62人で走ることになった町内一周5kmのロードレース。
 何の心の準備もしないまま突然参加することになった赤ジャージだったけれど、いざ走るってことになってみると、さすがに目の色がぜんぜん違うんだ。

 「順位はスコアに関係ないといっても、自尊心の闘いだからな。先生同士は」
 「そうだね、ダイゴ。何であっても負けられない相手がいるって重要なことだ」
 とか言いながら、オレはなんとなくスタートラインのところにいるハンゾウの姿を視界に入れた。
 ほどなく鳴らされたスタートの合図が青空に響きわたる。

 「でもまあ、ここんとこ走り込んでましたからね。赤ジャージ先生は。ね、兄貴?」
 「オウ!!! 今回は負けるわけねえぜ、赤ジャージ。ほら、あっち見てみろや」
 リュウジの示した先には──見覚えのある女の人が。
 「あれ、マキ姉さんじゃないか」
 「ああ。俺もさっき気付いたんだが」
 佐藤先生の妹で、赤ジャージの恋する相手のマキ姉さんは、今日はおなじみの白いジャージではなくてジーンズ姿で先生方の席のすみっこに座って、オレたちの視線に気付いたらしくこっちに向かって手を振っていた。

 とにかく、現在のオレたちは町内一周から選手たちが帰ってくるのを待つばかり。
 グラウンドでは次の競技に使うくす玉を吊り込む作業が進んでいる。

 さて、そうこうしているうちに先頭集団が運動場に戻ってきた。鬼工2人と暗黒1人のラストスパートが目の前で繰り広げられる。
 「鬼浜工業高校──全力疾走!!!」
 「お~~~~~っ!! 全力疾走!!」
 リュウジの怒号に生徒たちが唱和する。
 オレたちも生徒たちを盛り上げながら──そうしながらも気になって仕方がない。
 赤ジャージと佐藤先生の勝負の行方が、だ。

 リュウジ以下全員の応援を受けて、一着でゴールしたのは我が鬼工の3年生だった。二着は暗黒──これはハンゾウだった。奴は単車だけじゃなくて自分の足で走っても速いのだと今知った──、三着は鬼工。
 「よっしゃあ!!! 鬼工一着だぜ!!!」
 「うおおおおお!!」
 もはや鬼工応援席は、歓喜のるつぼと化していた。

 先頭の3人がゴールを果たしたあと、次の集団が運動場へ入ってくる。
 「赤ジャージ、来てるじゃねえか!!!」
 「押忍。佐藤先生もおられるな」
 「ほんとだ。うわ、いい勝負じゃないか」
 「あ、兄貴!! 赤ジャージ先生に向けて一声お願いします!!」
 「オウ、ノブオ!!! ──鬼浜工業高校・赤ジャージ、必勝!!!」
 「赤ジャージ、必勝!!」
 オレたちの応援が赤ジャージの耳に入ったのかどうか。
 これ以上ないだろう、という覚悟のこもった表情の赤ジャージがオレたちのいる応援席の前を通過する。佐藤先生もほぼ同列だ。

 そのままトラックの半周向こうの暗黒応援席の前をふたりとも同じペースで過ぎてゆく。ともに目指すはゴール地点。
 ゴールラインを先に走り抜けたのは──
 「やった~!!! 赤ジャージの勝ちだ!!!」
 「お~~~~~!!」
 リュウジの声が全校生徒の歓声を呼ぶ。
 
 「リュウジ! やったね、赤ジャージ」
 「オウ!!! 俺は信じてたぜ!!!」
 野郎どもの歓声の切れ間を狙って、オレはリュウジに声をかけた。
 「だってよう、今日はマキ姉が見てるんだぜ? それで負けられるような男じゃねえだろ、赤ジャージは」
 「うん──うん!!」
 
 そう答えながら、なんだかオレは感動していた。
 だって、ゴールラインの内側で、赤ジャージと佐藤先生が握手なんかしているから。
 さすがにここまでは聞こえないけど、何か言葉を交わしあってるみたいだ。
 どちらもすがしがしい表情のいにしえからのライバル同士に向かって、両校の応援席から拍手がわき起こっていた。
 見やれば、マキ姉さんも微笑みながら手を叩いている。
 もしかしたらちょっと涙ぐんでいるのかもしれない。
 そう──いまオレの横で目許を乱暴に拭ったように見えたリュウジみたいにね。


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