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栄光をつかめ 3


 たった今終わった持久走の結果で、鬼工と暗黒のスコアは5点差まで追い上げた──午前の部を折り返した時点では、我が鬼工は15点のビハインドを追っていたんだ。

 「よっしゃ、いけるぞ鬼工!!! この調子で気合いいれてけや!!!」
 「おおう!!!」
 応援隊長リュウジの気迫も、これ以上ないってくらいに凄味を帯びていた。

 そんな中で次に繰り広げられるのは、森園主将考案のひと味違ったくす玉割り。
 グラウンドの選手たちが割ろうとするのは、向かい合った相手陣地の頭上に吊ってあるほうのくす玉だ。
 そのくす玉は各校が趣向を凝らした中身を詰めた、特製の3尺玉。
 オレたちは中に何が入っているのか知らないけれど、森園主将の言を借りれば『危険ではないが出てきてほしくない代物』なんだそうだ。
 つまり、鬼工が作った「出てきてほしくないもの」の入ったくす玉は、鬼工の選手の投げる玉を受けて暗黒の頭上で割れて、暗黒の選手たちをイヤな気分にさせる、といったことらしい。

 グラウンドにはすでに両校選手がスタンバイしている。
 選手たちは中にアズキかジュズダマか何かが入っているよくある紅白の玉を手に、相手陣地頭上のくす玉と相手選手を交互に見据えながら、開始の合図を待つ。
 そして──合図のピストルが勝負開始を告げたんだ。

 一斉に手にした玉を目一杯の力をこめて投げ始める選手たち。
 気迫が余ったのかそうではないのか、ときおり顔や体に玉が襲いかかってくるのを受けたり避けたりもしながら、選手たちはここぞとばかりに手に取った玉を投げ、次の玉を拾ってはまた投げる。

 「へ~。小学生でもないのにくす玉割りって聞いたときはどんなんかと思ったけどね」
 「押忍、ハヤト。盛り上がっているな」
 「ほんと、すごいっス!!! てゆーかオレも出たいっス」
 「うん、言えるねノブオ。オレも燃えるかもな」
 「まったくもって森園のアイデア勝ちといったところか」
 「オウ!!! お前らそんなこと話し合ってる場合かよ!!! ほれ、声出せや、声」
 「オ~ッス!!」
 「そしたらいくぜ──鬼浜工業高校~~~、全力ぅ!!!」
 「お~~~、全力ぅぅぅ!!」
 お馴染みと化した、喧噪の中でも響く質のリュウジの声が鬼工応援席を暖める。
 それに追従して、生徒達もまた吠えていた。
 あれだけ河川敷で練習したんだしと、ダイゴもノブオもオレも、負けじと声を張っている。

 戦況はまだまだ決着がつかないでいる。
 見た感じ、どちらも手持ちの紅白玉を同じペースで、同じ威力でくす玉に命中させているようだ。
 まあ、ときどき流れ弾に当たった奴らがうずくまるのはご愛敬、かな。

 しばらく膠着状態が続いたあと、ようやく成り行きが変わってきた。
 「あ──割れそうだ、ウチの作ったほう」
 「だな、ハヤト!!! それ、もう一息だぜ! 行けえ、鬼工!!!」
 「行けぇぇぇ~~~!!!」
 リュウジの先導、ついてゆく生徒たち。その声に煽られるように鬼工選手達はより気合いを込めて玉を投げ、同じく自陣の応援に従って暗黒も力投を見せ──
 「おう、あちらのもそろそろ、か?」
 「わ~~~、どっちも割れそうじゃないっスか!!! こりゃ時間の問題っス」
 
 ノブオが悲鳴じみた声を出した次の瞬間──両校のくす玉はほとんど同時に割れたんだ。すると──
 
 「え──うわ~~~!!!」
 「なんだこりゃあああ!!! 背中、背中~~~」
 「わ、痛ぇぞ、目に入った!!!」
 「だ、出してくれえ~~~」
 哀れとさえ思われる、選手達の阿鼻叫喚がグラウンドを包み込んでいた。

 「うわ、タイヘンなことに……」
 オレは思わずつぶやいた。我が鬼工の選手達の頭上で割れたくす玉の中身は、大量の何か植物らしきものと、やたら大きな網らしきもの。
 「あれは何だ? 網か?」
 「網……漁かなんかに使ううやつっスかね?」
 「押忍、ノブオ。おそらく。奴らは水産高校だからな」
 「そうか。あんなの持ってるんだ」
 運悪く広がった網に捉えられた鬼工選手たちは、あわてふためいて網から逃げようとするも、大勢が中でもつれあっているため思うように動けないようだ。
 「で? あの草みてえのは?」
 「海藻っぽいね。色からすると」
 「あ~、背中に入ったら気持ち悪いっスよね……。生乾きっぽいっすもん。匂いが」
 「なんか、嫌だな。想像すると」
 リュウジは、言葉少なく餌食となった選手たちにココロの中で労いを唱えているようだった。

 「それで? ウチの作ったのって?」
 鬼工特製のくす玉から出てきて暗黒選手を襲撃したのは、多数の水風船だった。
 まあ、濡れるのなんかは覚悟していたんだと思うんだけど……直撃を喰らった暗黒選手たちは、みんな目やら擦り傷やらを押さえて呻いていた。

 「ああ、オイ、森園!!!」
 ちょうど本部テントから戻ってきたところの森園主将を認めて、リュウジが詰め寄った。
 「ふふふ、どうだい? 面白かろう? リュウジ」
 「つーか、ウチが作ったほうは中身、アレ何なんだ?」
 「聞きたいか?」
 「オウ!!! 当然」
 「ふっふっふ。あの風船の中はね、唐辛子の煮汁が入っているんだ。だってただの水じゃ芸がないだろう?」
 「え──」
 「それって──」
 得意満面の森園主将がオレたちを見、またグラウンドの地獄絵図を眺めていた。
 「沁みるんだろうな、目とか傷口」
 眉間にしわを寄せたリュウジに、オレたちは無言で頷いた。

 「まあ、これはドローだな。残念ながら割れたのはほぼ同時だ」
 「ええと、あれだけがんばったのに、どっちもかわいそうだな。ドローじゃ」
 「そうかい? 相棒さん。まあ応援席としては最良の結果じゃあないか? 両方が割れるのを見られたのだし」
 まったくもって、危険な思想を持った男だなあ、森園主将ってのは。

 何も知らない女の子だったらステキに見えるかもしれない森園主将の微笑みの、その裏側を垣間見たオレは、この人物だけは敵にすまいと誓っていた。ダイゴもノブオもそうだと思う。
 うん、リュウジだってきっとそうに違いない。
 勝負はドローでも、受けたダメージは絶対に向こうのが上だもんな。
 「……やっぱり策士だな、森園主将」
 オレの呟きに、リュウジは何も答えなかった。


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