目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

栄光をつかめ 5

 距離を詰めた2騎が火花を散らす勢いで激突する。
 わが騎手・ノブオは、敵方の騎手・タカシに真っ向からつかみかかっていった。
 「おりゃ~~~!!!」
 「うわ……っ!!」
 端からの勢いはノブオのほうが勝っていたようだ。
 馬になっているからノブオのはわからないけど、タカシの表情が怯んでいるのが目に映るかのようだ。
 
 双方の重量級の肩の上でつかみあう騎手たち。その様子を馬となったオレたちが大人しく見守っているはずなんてなかった。
 ほかの騎馬との対決ならいざ知らず──相手は宿敵・暗黒一家なのだ。
 「オイ、ノブオ!!! ちっと動くけどしっかり踏ん張れや!!!」
 「オッス!!」
 「ダイゴ、ハヤト。フォーメーション・Aだ。続いて即座にBにまで持ち込むぞ」
 「押忍」
 「了解、リュウジ」
 大きくはない声でリュウジが言ったのにそれぞれ頷きながら、あらかじめ作戦していた動きを実行することになった。

 リュウジが言う『フォーメーション・A』は正攻法。『フォーメーション・B』は奇策とでもいったところか。
 「ゆけ、ダイゴ」
 「押忍──どりゃあああ!!!」
 ダイゴは心持ち姿勢をわざと低く取った。リュウジとオレもそれに倣う。そしてそのまま、相手の懐に飛び込んでいく。もちろん逆襲は覚悟の上だ。
 「タカシ、覚悟ぉ!!!」
 声高らかにノブオがわめく。そして、得意の平手をグーに握って、おそらくタカシの顎を狙ったんだと思う。これはそういう作戦だから。
 
 「う……ぐッ」
 「タカシ? どうした? これしき耐えられねえことねえよなあ?」
 呻くタカシに、後列のコウヘイが言い放つ。
 「はい、もちろんですって、総帥」
 「そうこなけりゃな。餓鬼の頃から俺が鍛えたもんなあ」
 わざとコウヘイはゴンタの広い背中から顔を出して、こちらへ視線を寄越す。

 「気に入らねえな、コウヘイ!!!」
 「ふん、そんなのはお互い様じゃねえのか?」
 リュウジとコウヘイの、お決まりの言葉の応酬。
 けど、今はそんなときじゃない。

 「リュウジ、次行こう。いまちょうどいいタイミングだ」
 オレが口早に囁くのにリュウジは反応する。そしてダイゴに耳打ちだ。
 ダイゴも心得たもので、ほんのちいさく頷いただけで体の位置をすこし変えた。
 もちろんノブオだって、それに驚いたりはしない。言葉はなくても意志が疎通するのって素敵なことだとオレは思う。

 一瞬の間合いをとったあと、オレたちは動く。
 大きくゆっくり斜めに2歩下がって、小さく素早く、さらに逆側に斜めに3歩進む。これを2度繰り返す。これがフォーメーション・B。しかも決してまっすぐには進まないので、相手がきっと隙を作るというのがリュウジの予想だった。
 敵の前列がゴンタだという読みで──こないだの火事場の何とやらは置いといて、ゴンタはそれほど俊敏ではないから──、効果的とオレたちは絶賛したんだ。
 
 オレたちの読みはある意味当たった。ゴンタはすぐには反応しない。前列が動かないことには、ほかはどうすることもできないのだ。
 「よし、思ったとおりだな」
 「ああ、リュウジ。隙ができそうだ」
 囁き交わすオレたちだったが、ひとつ読み違えていたことがあった。
 「ゴンタ、次は左だ。その次は右。総帥、脇を固めて」
 あろうことか、ハンゾウがオレたちの動きを即座に見きっていたんだ──!!

 「だめだリュウジ、ハンゾウに読まれてる。もうBは通用しない。こうなったら、もう正面から──」
 「よっしゃ、ハヤト、言われるまでもねえぜ!!! ダイゴ、まっすぐ進め!!! こうなったらノブオの力にすべてを託すぜ」
 「押忍」
 「行きま~す!!!」
 悟ったオレたちはまた即座に正攻法の体勢に入った。

 まっすぐに敵の正面にぶつかって行く。
 足やら脇腹やらに痛みを感じるのなんて後回しだ。
 とにかく崩れないことだけを念じて、繋いだ手と手を離さないよう気をつけながら、オレたちは真実4人で『1騎』となっていることを感じながら体を張った。
 
 火花が散るような錯覚の中──突然、何かに取り憑かれたような咆吼をノブオが放った。
 「オレは負けない!!! 兄貴、オレは負けませ~ん!!!」
 「おっしゃ!!! その意気だぜ、ノブオ」
 「見ててくださいよ、兄貴、ダイゴさん、ハヤトさん!! オレ、漢になります──っ!! タカシ、覚悟しな!! こないだオレを怒らせたの忘れてないだろうな、このヤロー!!」
 頭の上の高いところから聞こえてくる、重たくはない打撃音。
 そしてそれに紛れて──甲高い悲鳴が。
 
 「ひぃ~~~っ!! 総帥、タスケテ~~~」
 崩れないよう必死に足を地面に踏ん張りながら、オレは聞いたんだ。
 空中高くからグラウンドに落下する、パンク小僧が兄貴分を呼ぶ声を。
 暗黒3人で作る馬自体は崩れてはいなかったが、タカシひとりがノブオの平手にかかって、地面に振り落とされていた。
 呆然とする3人を現実に引き戻すかのように──そのとき合図の号砲が鳴らされた。

 「試合──終了だな」
 リュウジの声にオレたちも我に返った。因縁対決への勝利へ歓喜する暇もなく、オレたちの目は、グラウンドに残った各校の騎馬の数を数えることに必死だった。

 閉会式は、つつがなく進行していった。
 実行委員の司会のもと、お決まりの校長挨拶──今年は2校合同だからそれも2回だ──があったり、それから各校の体育教師・赤ジャージと佐藤先生も挨拶に引っ張り出されている。
 
 そして、軽い咳払いのあと、マイクを持った暗黒の実行委員長、たしか柔道部の部長がこう言った。
 「両校ゆずらぬ激闘は、我ら実行委員一同、運営してきた者の冥利に尽きるものがあった。両校選手たち、ご苦労である」
 そしてマイクは森園主将の手に渡る。
 「今回のこの企画は、先生方にもなかなか好評だったようで俺は嬉しい限り。ついては秋のこの行事、おそらくこれからは両校の伝統になってゆくだろう。下級生は是非とも語り継いでほしい。そして第一回に参加した諸君は、伝統の第一歩をつくる者としての栄誉を各々噛み締めてくれて結構だ」
 拍手がわき起こった。
 普段はライバル校同志で知られる2校が、同じことがらに対して拍手するなんて、確かに今まで信じられなかったことかもしれなかった。

 拍手の止まない中、オレは隣のリュウジに声をかける。
 「なんかこういうの、悪くないかもね」
 「ん? そうか、ハヤト。まあ俺は、何だっていいけどな。闘うことが俺の生き様だからな」
 さっきの騎馬戦で、いつもと逆側の頬にも絆創膏を貼る羽目になったリュウジが、その頬をすこしほころばせて答えたんだ。

 「それでは、第一回 暗黒水産・鬼浜工業合同体育祭の優勝旗の授与である」
 喧噪は、佐藤先生の凛と張った声で一瞬にして鎮まった。が、次の瞬間には別の意味合いの怒号がグラウンドをどよもす。
 「優勝校、鬼浜高校の応援隊長、前へ」
 「うお~~~~~!!!」
 「リュウジ、いいぞ~!!!」
 「やったぜ、鬼工!!!」
 口々に祝福する声に押し出されるようにしながらリュウジは胸を張って前へ進み、厳粛な姿勢で重々しい優勝旗を押し頂いていた──。

 体育祭の最終種目・騎馬戦の結果は、残存した騎馬数が暗黒2騎に対して鬼工3騎。玉城の騎乗した野球部チームも残っていた。
 ほんの1騎が明暗を分ける形となった今回の締めの勝負の結果によって、我が鬼工が初代優勝校の栄冠を手にしたのだ。

 閉会式の済んだあとは、もう大騒ぎだった。
 「みんな、今日はよくやったぜ!!! それもこれも森園のお陰だな。それ、胴上げだ、全員配置につけ!!!」
 リュウジの指示で森園主将の胴上げが始められ、点数は関係ないけど持久走で意地を見せた赤ジャージも担ぎ上げられ、次は男子なのに女子代表の千晶ちゃんが空に舞う。
 「わっしょい、わっしょい!!!」
 「それ、次はリュウジだ!!!」
 「そ~れ、リュウジ、わっしょい、わっしょい!!!」
 「うお~、みんな、ありがとうな!!!」
 担がれながら、リュウジは上機嫌。
 それを見てるだけで、オレたちは案外嬉しいのかもしれなかった。

 「次は~?」
 「みんな!!! 次はハヤトを頼むぜ」
 「え──いや、オレはムリ!!! そういうの苦手──うわああああ」
 「そ~れ、わっしょい、わっしょい!!!」
 ちきしょう、リュウジめ。オレが高いところキライだって知っててコレだ。
 オレは鬼工の仲間たちの悪気のないかわりに愛ある胴上げに身を委ねながらリュウジにちょっと憤慨してた。
 けど、まあ、今日ばかりはいい気分のほうが勝っていたかもしれないな。

 浮揚感と失墜感の間を何度も行き来しながら、オレはそんな気分に酔っていた。
 うん、前に苦しんだジェットコースター酔いとはぜんぜん気分が違ったな。
 コウヘイたちとの勝負にも、また全体の勝負にもいい結果の残せたオレたちは、現在天下無敵の心意気。

 そう──いつのもオレたちの隊旗みたいに。それでもって、千晶ちゃんのデザインした応援旗みたいに、でもあるかな。
 きっとあの旗、来年も使うんだろうな。いい出来だしね。
 
 揺り上げられながら見た秋の空にそよぐオレたちの旗は、ホントにかっこよかったんだ。きっと忘れられない光景のひとつになるんだろうな。


   * 栄光をつかめ 完 *


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 愛おしき日々、愛おしき人々 | ホーム | 栄光をつかめ 4 >>


コメント

優勝おめでと~

なんだか暗黒一家の連中は
リュウジたちに頭が上がらないことばかりになっちゃったね(笑)

ふと思ったんだけど、彼らは騎馬戦のときどんな格好してたんだろ?
(ビーチバレーのときと同じ妄想)
ジャージ?それとも短パン??いやぁ~ん、萌えぇぇぇ

>>ピノコさま

暗黒一家は……3歩歩いたらアタマあがらないことなんて
忘れる!!! たぶん(^^:)
だからいっつも、懲りずに闘ったり争ったりしてるんです。奴ら。
根に持たないのは若いから~ (´∀`)

騎馬戦衣装は──ぜひとも特攻服で!!!
ええ、わたしそれがスキなんでっす。だはは。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。