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鬼の霍乱 6

 
 「なあノブオ。偶然の対義語って何だか知ってるか?」
 「え──急に難しいこと言いますね、ハヤトさん。え~と、何でしたっけ?」
 「必然、だ。ノブオ。今の俺たちが立たされている状況は、どちらかというとそちらだろうな」
 ダイゴの視線は横のノブオではなく、まっすぐ前を向いている。ノブオもオレも同様だ。
 「ナルホド。じゃあやっぱり、昨日はタカシに見られて、聞かれてたんっスね」
 
 オレたちが病院から出たところをタカシに目撃された、翌日の放課後のこと。
 例に倣ってリュウジのお見舞いに出向いたオレたち3人は、町立病院の前で暗黒一家に足止めをくっている。
 「──オレたちに何か用か?」
 リュウジのいない間を託されたオレは、ふたりより一歩前へ出てコウヘイの前へと進んで訊いた。そう、これはいつもだったらリュウジの役目だ。
 そんなオレの目の前でコウヘイは、いつもの物騒な笑いを隠さない。
 「ほう。こんなところで会うとはなあ。奇遇なことだ」
 「────」
 「今日は貴様等だけなのか?」
 「悪いか?」
 リュウジの不在を言われたのだと思って、オレたちは咄嗟に身構える。
 
 けれどコウヘイの仲間たちの反応は──
 「そうですね~、総帥。昨日はほら、あの女子も一緒にいたんですよね」
 「タ──タカシ、黙ってろ。俺が言いたいのは、そのことじゃねえ」
 「え? 総帥? けど……」
 「五月蝿いぞ、ハンゾウ」
 すこし論点が違ったような。

 「ええと、千晶センパイなら今日は一緒じゃないですけど?」
 ノブオがこう言うと、コウヘイは歯を剥いてノブオに凄んだ。
 「ゴラァァァ!!! 誰がそんなこと言ったんだ!!! 俺はなあ、今日はリュウジがいねえなあと言ったのだ。そうだろう? お前等」
 「ああ、そのことか」
 「…………っ!!」
 仲間のハンゾウが答えるのにも、コウヘイはなんだか凄味を効かせて振り向いてた。
 
 「とにかく、俺はリュウジに会いたくてなあ。ほれ、中にいるんだろう? 俺もちょっと挨拶させてもらおうか?」
 ひと呼吸おいてから、コウヘイはさっきまでより不穏な笑みでそう言った。
 「いや、コウヘイ。悪いがそれは遠慮願おう。ここはそういう場所じゃない」
 「ほう。ではやはりリュウジは病気なのだな?」
 「ああ。あれでリュウジも人間だからね。たまにはそういうこともある」
 もう逃げも隠れもできないと悟ったオレは、コウヘイにこう応える。
 
 「ふん。女々しいことだな。病気なぞに負けるとは」
 コウヘイが言うのに、我慢できずにノブオが返した。
 「な、なんだとぅ? 兄貴のどこが女々しいってんだ!!」
 「こらノブオ。黙っているのだ」
 ダイゴがノブオを制するけれど、熱しやすいノブオはすでに沸騰寸前で。
 「このようなところで事を起こすことが、リュウジの意に叶うと思うか?」
 「でも、ダイゴさん!!! オレ、許せないっス!!!」
 「いいから。ノブオ、落ち着くんだ」
 
 「ほう──やるんだな? 鬼工の若いの」
 「いや、済まなかった。今のはこちらが悪い。それは認めるから今日のところは──」
 「退けと言われて退くような俺等ではないのは承知だろうな?」
 嗚呼、やっぱりこうなっちゃうのか──。
 必然というか、予定調和とでもいったほうがいいのか。
 
 「そもそも俺はリュウジの見舞いに来たのだ。それを断る無礼に続けて、逆に若いのに喧嘩を売られて引き下がれるわけがねえだろうがあ!!!」
 面白がるように怒号を上げるコウヘイに、病院に入っていく人々は足を止めてこちらに視線を向け始めたんだ。
 とにかく、こんなところで騒ぎを起こしたりしたらマズいな。
 このままいたら、リュウジに見つからないとも限らない。今は余計な心配をかけるべき時じゃないのは充分承知だ。

 しかたなくオレはこう切り出した。
 「──場所を変えよう、暗黒一家。話し合うなりケリをつけるなりは、ここは適していないから」
 「いいだろう」
 待ってましたと言わんばかりのコウヘイの表情。いいさ、わかってる。これがコウヘイの仕掛けた罠だってことくらい。
 けど、オレたちにだってある程度の覚悟はあったから。
 「貴様等、逃げたりする気じゃねえよなあ?」
 「当然」
 オレはリュウジがするみたいに腕組みをしてコウヘイに頷いた。いまひとつ貫禄に欠けてただろうけど、それは大目に見てほしい。

 コウヘイの指定したのは、30分後に河川敷。
 ひとまずリュウジのお見舞いはその後に回すことになってしまった。
 「ハヤトさん、スミマセン。オレ、つい……」
 熱しやすいノブオは、一度頭が冷えるといつもこんな具合だ。そう、わかっていないわけじゃないんだ。こんなとこ、ちょうど1年前のリュウジによく似てるかもね。
 
 そんなノブオにオレとダイゴはこう返してやる。
 「いや、しかたないさ。ノブオ。お前のせいだけじゃない」
 「その通りだ。リュウジ不在の好機を逃すとは思えんし、奴らは端から因縁をつけるために待ち伏せしていたに決まっている。単によいきっかけを与えたに過ぎんよ」
 「──ダイゴさん」
 「まあ、やると決めた以上はどうにかせんとな」
 「そうだね、ダイゴ。穏便には済まないんだろうけど」
 「ハヤトさんまで、そんな──」
 「そんな情けない顔するんじゃないよ、ノブオ。ほら、そんな顔してたら、リュウジがいたら尻のひとつも叩かれるだろ?」
 もちろん空元気だ。オレも。
 でも、こんなとこで仲間の不安を煽ることなんてできっこないし。

 リュウジのいない間の代役を頼まれた、ってそれだけのことで、オレの気持ちはあきらかに数日前とは違っていた。
 そうか。人を引っ張っていくってこういうことなんだな。ひとつ勉強になった。
 なんとなく視線を合わせたダイゴが、訳知り顔で大きく頷いていた。
 ──仲間って頼もしいな。

 「さて、とにかく行こうか。さっさと決着つけないと、今日の面会時間に間に合わないから」
 オレはひときわ声を響かせて、ダイゴとノブオに不敵な笑みを作って見せた。
 うん、これって重要だね。どんな不安を抱えた状況でも誰かが胸を張っていること。
 
 ああ、願わくばオレにリュウジの完璧な代役は無理でも、少しは漢気みたいのをわけてもらえたら──そんなふうに思って、オレは後にしてきた病院を振り返った。
 リュウジの病室って多分あっちの方角だよな、なんて思いながら、ココロの中で手を合わせてみたりする。
 
 

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