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鬼の霍乱 7


 日中の河川敷は、平穏そのものといったふう。
 サッカーボールを追う少年達がいたり、犬にフリスビーを投げたりする愛犬家がいたり。
 そんな町の人々の憩いを壊すわけにはいかなくて、オレたちは暗黒一家を電車の通る鉄橋の下で待ちかまえていた。
 ここだったら、多少の物音がしてもタイミング次第では不自然じゃないから。
 それに丈の高い雑草が生い茂っているので、目隠しにもなるかと思って。

 そんなオレたちの姿を見つけたコウヘイら暗黒一家が、肩で風を切って近づいてくる。
 「ふん。こんなところに隠れていやがったか」
 「別に隠れるつもりなんかないさ。変に目立つ趣味がないだけだ、オレたちにね」
 「つまらねえ言い訳しやがるなあ、特攻隊長さんよ」
 からかう口調で言うコウヘイに、オレはできるだけ強い視線で睨みを利かせてみた。

 早速──といわんばかりにコウヘイが続けた。
 「この間からな、うちのゴンタが一戦交えたくて仕方がないのだ。なかなか相手が見つからなくてなあ。かわいそうにストレスが溜まっている。相手してやってくれるよなあ?」
 「モンガ~~~!!!」
 コウヘイに名を呼ばれ、前へ出てきたゴンタが吠える。
 
 拳で自らの胸を叩くゴンタは、すでにやる気が充実しているようだ。
 「ゴンタか──それじゃダイゴ、行くか?」
 「押忍」
 「いいえ、ハヤトさん、ダイゴさん!! オレが行くっス」
 「ノブオ……?」
 「ダイゴさんは後で。オレ、ここは絶対になんとか持ちこたえますから。そしたら次があるかもしれないでしょ? だから、オレに先に行かせて欲しいっス」
 今日のノブオはいつもと違う。ただ単に、向こう見ずにつっかかっていくわけではなくて、ちゃんと展開を考えての志願だった。
 「よし。それじゃノブオ。頼んだ」
 「ええ、ハヤトさん。オレ、兄貴のために──!!!」
 決意を秘めた目の色でこちらを見返して、そしてノブオはゴンタの前へと進み出る。

 「オレが相手だっ!! いくぞ~ッ!!!」
 「フンガ~!!!」
 咆吼を放ったノブオとゴンタは、初っ端から凄まじいぶつかり合いを見せた。
 「オレをなめんなよ!!」
 続けて叫びざま、ノブオはジャンプして高い位置にあるゴンタの頬に痛烈な平手を見舞う。
 「うお……ッ!!」
 そこを狙ったのか偶然なのかはわからないが、ノブオの掌はゴンタの左目を襲撃した。
 一瞬怯んだゴンタを認めて、次のノブオの一手は蹴りだった。
 「どりゃ~~~!!!」
 「ウ……ガ~~っ……!!!」
 今度は低い位置を狙われたゴンタは、ノブオに蹴られた脛をかばうように構えを下げる。

 ノブオ優勢か──と思った次の間合いは、さっきよりも激したゴンタの拳が繰り出された。
 「う──グッ!!」
 「ノ、ノブオ……」
 ゴンタのパンチがノブオの腹部にめり込んだのを見て、オレは思わずちいさく洩らす。
 いくら打たれ強いとはいえ、明らかな体格差=威力の差をノブオはどうして持ちこたえられるんだろう。

 オレの心配をよそに、ノブオは尻餅をついた体勢を立て直してふたたびゴンタの前に立つ。
 「すごい──ノブオ」
 「ああ。あの気迫がな」
 お互いの顔を見ることなく、視線は闘いの場に向けたままでオレとダイゴは囁き交わしていた。
 
 その後のノブオとゴンタの闘いは、もう激闘と呼んでもいいくらいだった。
 雄叫びを上げつつ素早く動いてゴンタを翻弄しながら平手を繰り出すノブオ。
 対するゴンタは、手数は多くはないものの命中すれば重い打撃を与えてくる。
 ゴンタの攻撃を喰らっても、絶対に退くものかの意志を露わにしたノブオの背中が頼もしい。
 
 そして──
 「うおりゃ~~~!!!」
 「グオオオオオ~~~!!!」
 両者の怒号とともに繰り出された拳が、互いの頬を打ちあった!!
 相討ちの恰好となったふたりの体は、まるでスローモーションのように、同時に枯れ始めた雑草が覆う地面にどさりと音を立てて倒れ伏した。

 ふたりとも、もう立ち上がらない。

 「引き分けだ──」
 「ああ」
 オレはようやくダイゴと目配せしあった。ノブオ、頑張ったな。

 「だらしねえぞゴンタ」
 脇に下がっていたコウヘイが、立ち位置を変えて中央に進み出た。
 「ハンゾウ、タカシ。ゴンタを後ろへ」
 「了解、総帥」
 コウヘイの指示に従って、暗黒のふたりがゴンタの体をひっぱってゆく。
 オレたちも同様に、ノブオの近くへ。大健闘のノブオの頬には血が伝っていた。
 
 ひとり中央で腕組みをして、両軍を順に見遣りつつコウヘイは吠える。
 「引き分けじゃあ面白くねえよなあ、鬼工よ」
 「──来たな、ダイゴ」
 「押忍。ノブオの想像どおりだな。よし、俺も負けたりせぬゆえ」
 「ああ、頼む」
 オレは立ち上がるダイゴの背中をひとつ叩いた。

 ダイゴが中央へ進み、コウヘイの正面へ立つ。
 と──
 「貴様じゃねえぞ、鬼浜寺の」
 「何──?」
 コウヘイはそう言って、ダイゴから視線をずらす。その視線の先が捉えたのは──オレだった。

 「貴様が来い、特攻隊長」
 「ん? オレ?」
 意外なコウヘイの言葉に、オレは驚きを隠せないでいる。
 「当然だ。このような展開のときにはいつも総隊長が出るだろう? ただ今その代役は貴様ではないのか?」
 「ああ、確かに」
 「解っているのならさっさと出て来い、特攻隊長」
 
 コウヘイの絡みつくような視線がオレを立たせた。
 オレはどうしていいんだかわからなくて、それでも行かなくてはマズいらしくて。
 きっと無様な表情をしているんだろうと思いながらも、操られたように一歩、また一歩とコウヘイに近づいて行ったんだ。


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