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鬼の霍乱 8

 「ハヤト──」
 オレがコウヘイの前へ出ると、一歩脇に退いていたダイゴがオレを呼ぶ。
 「お主、大丈夫なのか?」
 「……まあ、多分」
 
 総隊長の代役として最後の決戦に挑むようコウヘイに名指されたオレは、今からコウヘイと喧嘩をすることになったようだ。
 喧嘩なんて滅多にしないんだけど、そんなこと言ってる場合じゃないし。ましてやリーダー戦なんてやったことないから実感がわかなくて、なんとなくふわふわした気分でオレはいた。
 
 「とにかくやらないといけないんだろ? 早くしないと面会時間に間に合わない。オレたちが行かないとリュウジ拗ねるだろうしね。それにここが決着ついたら、どのみち行き先は病院だから、怪我したって診てもらえばいいしさ。オレに何かあったら担いで行ってくれるだろ? ダイゴ」
 目ではコウヘイを捉えて、オレはダイゴに向けて言葉を放った。
 言い終わったらなんだかすがすがしい気分がした。
 これって覚悟ができたときの気分だ。

 なんとなく笑顔を作って、オレは目前のコウヘイに言う。
 「よし、じゃあ始めようか」
 「ふん。いい度胸してるじゃねえか」
 コウヘイもうっすら笑みを返してくる。一瞬先の展開なんて想像もつかないような穏やかでさえある空気が流れたような気がした。

 いざ闘いということになってみると、オレの肝も案外据わっていたようだ。
 ぼきぼきと指の関節を鳴らすコウヘイの姿を、わりと落ち着いた心持ちで眺めている。
 ──さて、どうしたものだろうか。
 オレから先に手を出すべきか。
 もちろん勝ち目なんてあるわけないことは解っている。
 殴られたら相当痛いだろうな、ってことも。
 けど何とかしなくちゃいけない。ここはどうにか切り抜けないと──リュウジが待っているから。
 
 ほんのすこし思いを馳せていたオレだけれど、一瞬のうちに現実へ引き戻された。
 「ウラぁぁぁ!!!」
 掛け声もろとも、コウヘイがオレに殺到してきた!!!
 と思った次にオレを襲った感覚は、頬がやたらと熱いこと。
 ──どうやらオレはコウヘイに、したたか頬を殴られたらしい。人間、あまりに痛いと熱さを感じるらしいって初めて知った。

 オレは当たり前のように倒れた。背中が地面を擦っているのがわかる。
 くらくらする頭を振って、拳を受けた頬を拭う。触った掌には血がついてた。
 それでもオレはまだ正気だった。そんな自分が意外だったけど、なんとかもう一度立つことができたんだ。

 「ほう。まだやれるのか、特攻隊長。ハンゾウ、見習っておくといいかもなあ」
 余裕綽々のコウヘイが心底憎らしく見えた。
 遅蒔きながら、オレの内心に怒りみたいなものが芽生えてくる。
 「オレだってやられっぱなしは恰好悪いからね」
 しゃべってみたら、口の中に血の味が広がった。こっちも切ったな、オレ。
 「できたら一回くらいは命中させてみたいよね」
 慣れない拳を握りながら、オレはコウヘイに言ってみた。
 コウヘイは何も答えない。

 「それじゃ今度はオレから行く」
 って言ったけど、そんなふうに宣言するのって聞いたことないよな。まあいいか。オレ初心者だし。
 握った拳の内側では、爪が掌に跡をつけてると思う。それくらい強く握りしめて、オレはコウヘイに突進していった。

 大きく振りかぶって、オレの拳は確かにコウヘイの頬を捉えることに成功した。
 が──同時に避ける素振りもなかったコウヘイの拳が、今度は避けられる距離ではなかったオレの腹にめり込んだ。

 ふたたびオレは地面に転がる羽目となる。
 立たなくちゃな。早く立たなくちゃいけない。
 オレの中のオレはそう命じるんだけど、カラダがそれを拒んでいる。
 頼む、オレのカラダ。こんな恰好悪いまま負けさせないでくれ。だってオレはリュウジの代役を託されているんだぜ?

 なんとかならないものかともがいているオレ。見下ろしているコウヘイ。
 息は苦しい。拳を受けた腹も熱いように痛い。
 けどどうにかしなくちゃ。でもどうしたらいいんだろ。
 不慣れなオレは、正気をどこかに吹っ飛ばされたみたいな心持ちだった。

 なんだか時間の流れがいつもより遅いような気がしてた、そのとき。

 「あ、いたっ!! ダイゴだ!!!」
 遠くから聞き覚えのある声がした。
 「うん──千晶さん?」
 これは呼び止められたダイゴの声だな。そうか、千晶ちゃんの声か──って!!!
 「ダメだ、千晶ちゃん。こんなとこへ来ちゃダメだ。巻き込まれる──」
 って言いたかったんだけど、きっと声になっていなかったんだろうな。

 朦朧とした意識の中でも、危機感みたいのってちゃんと生まれるんだな、なんて倒れたままのオレはこれまたぼんやり思っていた。
 

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