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鬼の霍乱 9


 突然現れた千晶ちゃんに、オレはそうできなかったんだけどかわりにコウヘイが訊いた。
 「ほう、女子。どうかしたか? 総隊長の次は特攻隊長の見舞いか?」
 コウヘイに倒れたオレと見下ろすコウヘイの間に立って、千晶ちゃんは上目遣いにコウヘイを見る。
 「なによ、暗黒の大将。あんたハヤトに手を出すなんて、鬼工の女子全員敵に回すよ? 数は少ないけどね」
 「千晶センパイ……」
 「千晶さん──」
 正気づいたノブオとダイゴのおろおろする声が聞こえた。

 これはまずい。何としてでも立たないと、千晶ちゃんに何かあったら困る。そう自分を鼓舞して、オレはなんとか上体を地面から引き剥がすことを得た。
 そんなオレを振り返って、千晶ちゃんはこう言った。
 「ハヤト、リュウジからの伝言だよ。無理するなって。無理だと思ったら退いてこいって」
 「千……晶ちゃ……?」
 「あたし遅れて行ったのに、ハヤトたちまだ来てないってリュウジが言うからさ。きのうのことを思い出してリュウジに話したら、きっとここでこうしてるだろ、って」
 口早にオレに向けてそう言うと、今度はコウヘイに向かって言葉を放つ。
 「で、これは暗黒の大将への伝言ね」
 「リュウジからか?」
 「ええ。そう。悪いが決着は次に回してくれって。俺が退院したら真っ先に挨拶に行くから、そしたら俺が直々に闘うぜって」
 千晶ちゃんが持ってきたリュウジの伝言は、場にいたオレたちを揃って黙らせる威力を持ってた。

 次に口を開いたのは、仲間を振り返ったコウヘイだった。
 「お前等、退くぞ」
 「総帥──?」
 その意外な言葉に、ハンゾウの声が聞き返している。
 「ふん。女子に水を差されては仕方がねえさ」
 「総帥──甘くないすか?」
 「黙れ、タカシ。本気を出す気が失せただけだ」
 
 コウヘイはオレたちに向き直って、今度はこう続けた。
 「女子よ。リュウジにこう返事せよ。俺は病み上がりだろうが何だろうが容赦しねえとな」
 「うん。それくらいリュウジだって覚悟してると思う」
 「ふん。せいぜいリハビリしてから退院できるといいがなあ」
 「あら、ありがと。優しいね、大将。それも伝えとくね」
 千晶ちゃんがほんのり笑ったのを見てつられたようにコウヘイが、半分目が死んでるオレの見間違いかもしれないけれど物騒ではない笑みを浮かべたんだ。

 納得できない表情の部下たちを連れて、コウヘイは土手を上がっていった。
 その後ろ姿に夕日が映える。

 「うわ、あたしたちも急がないと面会時間終わっちゃうよ」
 なんとなく黙ったまま暗黒一家を見送っていたオレたちに、千晶ちゃんがこう言った。
 「そ、そりゃタイヘンっス!! オレ、兄貴に会えないと今夜眠れないっス~」
 唇の端に血の跡を残したノブオが、それでも元気に答える。
 「押忍。急がねば。ハヤト、背負ってやろう」
 「いや、大丈夫。歩けるから」
 ──ダイゴに答えて立ち上がってみたけど、思いのほか全身に痛みが走った。
 「う……いろんなとこ痛いかも」
 「ほら。怪我人のペースに合わせてたら日が暮れちゃうでしょ。ハヤト、ダイゴの背中行き決定ね」
 「……はい、了解」
 あ~あ、かっこ悪いなあ。オレ。

 病院までの道すがら、オレたちは話した。
 「それにしてもあのリュウジがムリするなって──」
 「ああ。意外だったな。無理で固めるているような漢がな」
 ダイゴの背中でそう言うと、首を後ろに回してダイゴが答えた。
 「病気をしてみて、考え方が変わったのかもしれんな」
 「うわ~ん、やっぱカッコイイっス、兄貴~!!!」
 ノブオは泣き出さんばかりだ。

 「でもさっきはさ、ホントは病室から脱走しちゃう勢いだったんだよ、リュウジ。でも看護師さんに捕獲されちゃってさ」
 「……なんか目に浮かぶね、その光景」
 痛む全身を感じながら、オレはちょっと笑った。みんなも笑ってた。

 ようやく町立病院に着いたときには、大きい夕日がオレたちを照らすような時間になっていた。
 「ダイゴ、サンキュー。ここで降ろして」
 「歩けるか? ハヤト」
 「ああ。リュウジにこんなとこ見せたくないしね」
 「うはははは。ハヤトさんカッコつけますね~」
 「……オレも鍛えようかな。ノブオを殴れるくらいには」
 「きゃ~、ヤられちゃうっス~」
 ノブオはおどけてオレから逃げる素振りで、正面玄関を走り抜けた。追っかけたかったんだけど……恥ずかしながらカラダにストップかけられた。情けないな、オレ。
 「ちきしょう。覚えてろよ、ノブオ」
 「あは。ハヤトもちょっと変わったかな?」
 そんなふうに千晶ちゃんが言う。ダイゴも頷いてる。
 あはは、なんか照れくさいような感じ。

 はやいとこリュウジが退院できるといいな。
 そしたら今度は、リュウジに真剣に鍛えてもらうのもいいかもしれない。
 ずきずき痛む数カ所をどことなく誇らしくすら思いながら、オレはいい経験したな、と思っていた。
 
 かなり腫れてるだろうオレの頬を見て、リュウジはどんな顔をするんだろ。
 ……やっぱり笑うかな。


   * 鬼の霍乱 完 *
 
 

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コメント

あたいのハヤトにッ!

>鬼工の女子全員敵に回すよ? 
あたしも黙っちゃいないよッ!
やっぱハヤトは唯一萌える・・・じゃなかった
モテる存在なのねぇ。
嗚呼、ハヤトの顔に傷がつくなんて・・・コウヘイのバカッ!

リュウジ、元気になったのかな??

>>ピノコさま

だはは。ピノコさんが今日も萌えている(^^)

だってもう、むしろピノコさんってアレでしょ?
気分は鬼工の女子全員のうちのひとりでしょ?
なんちて。

ハヤトは、まあ、アレです。
たまにはひとつくらい怪我してみるのもいいんじゃないかと。
男の子だしね~ (´∀`)

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