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鬼神生還 2

 「そんなわけで、お世話になりました」
 珍しく普通の敬語で言ったリュウジは、控え室にいた若い女性の多い看護師さんたちから口々に祝福をもらっていたようだった。
 「そうかそうか。今日退院だったのね。リュウジくん」
 「リュウジくん、またおいで~。可愛がってあげるから」
 「え……いや、もう俺、入院は結構だな」
 「そんなこと言わないで」
 あはははは、なんて女性たちの高らかな笑い声が廊下で待っているオレたちのところにも聞こえてきていた。

 「あ~、参ったぜ。まったく」
 最後に扉のところでぺこりとお辞儀をしたリュウジは、ようやく看護師さんたちから開放されたようだ。
 「俺、もし傷が開いたら今度は別の病院行くかな。ここの姉ちゃんたち、みんなで俺をおもちゃみたく扱うんだぜ? 敵わねえったら」
 「リュウジ、それってどこでも一緒かもよ? だってリュウジって、なあ?」
 「押忍。可愛がってもらっているだけではないか」
 「ええっ、そんなもんなのか?」
 なんか納得いかなさそうな顔をリュウジはしてた。どういうわけだかそれにノブオが付き合って、これまた渋い表情なんか作っている。
 「とにかく、あとは先生のとこ行って挨拶したら終わりだぜ」
 振り向きざまにリュウジはオレたちにそう言った。うん、うれしそうだな。

 さて、あと一仕事。そんな気楽さにオレたちが満たされていた矢先、急に病院の中の空気が慌ただしい色を帯びたことに気がついた。
 ばたばたと走る医師先生、付き従う看護士師さん。
 やがて遠くからサイレンの音が聞こえてきて、どんどん近づいてくるのがわかった。
 「ああ、救急車が来るんだ」
 「そうか。それでみんな慌ててるんだな」
 感慨深そうにリュウジが言った。
 「俺のときもこんなふうだったんだろうな」
 「うん。きっとね」
 オレはそんなふうに返している。あのときは、病院だけじゃなくて学校でも大騒ぎだったんだよな。

 「ああ、先生!!!」
 リュウジが呼び止めたのは、こちらへ向けてどてどて走ってくる、恰幅のいいお医者さんだった。たしかリュウジの執刀医だった先生。
 「おや、リュウジくん。退院おめでとう」
 「ありがとうございます。挨拶行こうと思ってたとこなんすけど……」
 「ああ、そうか。申し訳ないが、いま急患でね。悪いけど今日はここで。また数日したら来なさいな。経過診るから」
 「わかりました!!! んじゃ俺はこれで」
 リュウジが会釈するのに手を挙げて応えた先生は、そのときちょうど到着した救急車のもとへ駆け寄っていったんだ。

 さて、これでリュウジの長かった入院生活も晴れて終了だ。
 ようやく外の空気をリュウジに吸わせてやれるんだな、なんて思いながら視線をやったら──
 「あ、れ?」
 見るとはなしにオレの視界に入ってきたのは、ちょうど到着したところの救急車。リアのハッチが開いて搬送されてきた人が降ろされるところだった。
 「うん? どうした、ハヤト?」
 「ほら、あれ。救急車に乗せられてきたのって──」
 「え? あ……れ? コウヘイじゃねえか?」
 「何?」
 「ええっ、コウヘイですって?」
 オレたちはそのまま立ちつくして、救急車をとりまく慌ただしさをぽかんと口を開けたまんまで眺めていたんだ。

 オレたちの目の前を、ストレッチャーに乗せられたコウヘイが運ばれていく。付き添いは暗黒水産の佐藤先生だった。佐藤先生はオレたちに気付いたようで、『おや?』っていう顔を見せたがそのまますぐに行ってしまった。
 「ああ、ちょっと看護師の姉ちゃん!!」
 通りかかった看護師さんをリュウジが呼び止めた。
 「あら、リュウジくん。退院ですってね」
 「オウ。そうなんだが、今救急車で運ばれてきた奴って病気か? 俺、知ってる奴なんだが」
 「ああ、あの子。リュウジくんが運ばれてきたときと似たような症状みたいよ」
 「え──」
 オレたちはそろって顔を見合わせた。
 「なんだ。タイミングいいじゃん。退院の挨拶、ここでできるな。リュウジ」
 「だからハヤト。そんな問題か……?」
 リュウジに呆れたような顔をされてしまった。そういう問題じゃないのか。
 
 ちょうど一週間前にオレたちが気を揉んでいた手術室の前のベンチ。
 そこに今、あのときと同じような不安さが満ちていた。
 付き添いの佐藤先生を真ん中に、ハンゾウとゴンタとタカシが揃って険しい面持ちで『手術中』のランプを見上げてる。
 退院するための荷物を抱えたままのリュウジ以下オレたち一行は、結局町立病院から一歩も外へ出ないまま、すこし離れたベンチに陣取って手術室の前の様子を窺っていた。

 「そうか──コウヘイも辛い思いするんだな」
 過去一週間に思いを馳せるように、リュウジは神妙な口調で言った。
 「かわいそう? リュウジ」
 「まあな。腹減るだろうからな」
 「あはは。やっぱりそれか。辛いのは。寂しいことじゃなくって?」
 「いや、それは別に。毎日お前ら来てくれたじゃねえか」
 「あはは。それにくーちゃんもいたし、ね?」
 「ああ、こいつか」
 リュウジはお見舞いにもらったクマのぬいぐるみを見て、ちょこっと笑った。
 「コウヘイに貸してあげれば?」
 「え、冗談じゃねえぜ、ハヤト!!! こいつは俺の友達だからな」
 「うはは、兄貴、似合ってますぜ~」
 「そうだろ? ノブオ」
 ……まあいいや。リュウジが気に入ってるならそれで。
 
 「けれど、これは幸いだったのではないか? 約束通り挨拶できても、今度はあちらの都合で決着が先延ばしできるからな」
 「そうだな、ダイゴ。今のうちに鍛え直しておかねえとな!!!」
 リュウジは晴れがましく言ったんだ。
 「あ、兄貴!! 終わったみたいっスよ」
 「そうか、ノブオ」
 
 思わずオレたちは立ち上がった。同時に手術室の扉が開いて──目を閉じたままのコウヘイがストレッチャーに乗せられて出てきた。
 「総帥~~~!!!」
 「モ……ガーーー」
 「君たち、大丈夫だから。麻酔で眠っているだけ。心配いらないのよ」
 「ちゃんと目、覚めますよね?」
 「当たり前じゃないの。ほら、眠らせておいてあげなさい」
 そんなふうな光景を、奴らは作り出していた。
 そしてそのままコウヘイは病室に運ばれていったんだ。
 
 「……なんだ? コウヘイ、全身麻酔かけてもらったのか? ふん。だらしねえぜ。俺なんか腹切られながら、先生としゃべってたぜ。切ったあとのやつ見せてもらったしな」
 「うえ……オレ、無理だな。ソレ」
 なんとなく勝ち誇ったリュウジの顔。あ~あ、強いな。

 さすがに今すぐ挨拶はできないということになって──オレ、名案だと思ったんだけど──、ひとまずオレたちは予定より1時間ほど遅れて、今度こそ病院の外へ出ることにした。
 通りすがりに受付で知り合いなんだと言ったら、難なくコウヘイの入った病室を教えてもらえた。それだけ訊いて、ついにオレたちは正面玄関から出ようとしているところ。
 「──ってことは、俺がさっきまでいたベッドに入ったのか。コウヘイは」
 「そうみたいだね」
 「じゃあちょうどいいな。いろんな約束がいっぺんに果たせるぜ」
 「押忍。同室の皆さんのお見舞いも、コウヘイへ挨拶もな」
 「うはは。なんか一石二鳥っスね~」
 「まったくだぜ」
 約束を守る漢・リュウジはいろんな意味で満足そうに、ようやく晴れて病院を出て鬼浜町の空気を吸ったんだ。
 「うん、やっぱ外はいいな。なんかこう、酸素が濃い気がするぜ」
 大きく呼吸をするリュウジを、みんなで見てた。

 リュウジが帰ってきた鬼浜町は、夕暮れ前の陽射しできらきら輝いていた。
 オレも試しに深呼吸してみたら、なんだか昨日までとは違う空気が胸を満たしたような気がした。
 あはは。気のせいだろうけどね。
 

   * 鬼神生還 完 *
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

ぎゃははッ

さいこぉぉッ!こんなオチがくるとは!(笑)
くーちゃん貸してあげればよかったのにぃ。
もちろんリュウジ達、お見舞い行く・・よね・・・?

意外とコウヘイも、看護師さんにかわいがられそう。。。うふふ。

>>ピノコさま

笑ってもらえたようでよかったww

くーちゃんは、もうリュウジのよだれで悲惨なことに
なっていると想像。だはは。

いいんですよ。ピノコさんもコウヘイをかわいがって
あげて。
コウヘイもピノコさんの好きな年頃でしょ?

携帯復活で読破w

やっとこさおいつきましたよぉwww
霍乱←カクランって読むんですね。。。
勉強になるっすw

コウヘイも・・・(自主規制part2w
ってことでそこらへんで2人の対決も想像のなかでたのしみたいとおもいますd(d≧▽≦)♪ぃゃぁ~ん♪(≧▽≦b)b

アレ?スレ違い??
しつれいしましたぁぁぁ(笑)

>>Tohkoさま

ケータイ、無事発見? それとも最新機種入手?
いずれにしても、おつかれさま~(^-^)/

「おにのかくらん」は
『病気しそうもない人が病気すること』って意味らしい。
意味といい字面といい、なんかリュウジにぴったりでそ?

>コウヘイも・・・(自主規制part2w
そんなこと言ってると、真っ赤になったコウヘイに
ゴラァァァ!!! って怒られるよwww
コウヘイだってお年頃だからね~。だはは。

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