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湖畔に吹く烈風 1


 「あ~、ったく、何で俺が英語なんか勉強しねえといけねえんだ? 外国なんか行く気これっぽっちもねえのによ」
 ため息混じりにリュウジが毒づく、ここは夜のオレの部屋。
 「外国行く気はオレもないけどさ。でもせめて高校は卒業したいだろ? そのためには試験くらい切り抜けないと」
 「いいよなあ、ハヤトは。頭いいから俺の苦労なんてわかんねえだろ?」
 「オレ? そんなこともないけどね」
 「……これだよ。あ~、まったく」
 もうひとつため息をついて、リュウジはそのまま寝っ転がって天井を仰いだ。

 やれやれ。試験っていうとリュウジはいっつもこんな具合。
 期間中は毎晩オレの部屋に来ては一緒に勉強したりするんだけど、どうも何かとご機嫌ななめなんだ。
 まあ、今回に限っては試験直前まで盲腸で入院していたから、ハンデあるもんな。そのへんオレも理解してるんだけど。
 「ほら、リュウジ。いいからここ、きっと出るから教えてあげるよ」
 「……ん~」
 「仕方ないな。そしたらここ終わったらさ、気分転換にコンビニ行こう」
 「え、ほんとか、ハヤト!!! それじゃ気合い入れるか」
 あはは、リュウジって単純でいいよな。扱いが簡単だ。まるっきり予想通りでオレはうれしいよ。

 そんなわけで、ノルマを果たしたあと、リュウジと一緒にコンビニへ行ったんだ。
 時期が時期だけに、けっこう夜の道は冷えていた。
 お菓子やら飲み物やらを買いこんだ帰り道、あれこれと話しながらそぞろに歩いてた。
 「そういやさ、さっき病院行ってきた」
 「ああ、そうか。診察か。大丈夫だって?」
 「オウ!!! 縫ったとこもきれいだって褒められたぜ。見るか? ハヤト」
 「え──いや、結構です……」
 「そうか? それは残念だぜ」
 わはは、と笑うリュウジは、もうすっかり元通りだ。ちょっと笑っただけで手術の跡に響くなんてことは、もうないみたい。

 「でな、入院してた部屋に約束通り行ってきた。お見舞い」
 「うん。みんなどうしてた?」
 「おっちゃんたちはどっちも、もうちょっとで退院だって言ってたな。で、健兄はまだしばらくかかるらしい」
 「そうか。大変だよね。足の骨折ると」
 「ああ。かわいそうなもんだぜ」
 リュウジの言ってる健兄さんってのは、入院中のリュウジを可愛がってくれた大学生のお兄さん。歳もいくらも違わないしよっぽど気があってたみたいで、おかげでリュウジも思いのほか寂しくない日々を送れていたみたいだ。

 「で? コウヘイはどうしてた?」
 「コウヘイな。あいつ個室が空いてそっちに移ったんだってよ。健兄が言ってたぜ。だから結局は挨拶できてねえんだ」
 「え~、個室? なんて贅沢な……」
 「だろ? つーか個室なんて俺は逆に嫌だけどな。病院の部屋でひとりっきりなんて無理だぜ」
 「……リュウジらしいね」
 うっかり言ったら、ちょこっと睨まれた。

 「それでな、ハヤト」
 「なに? リュウジ」
 「明日で試験終わりだろ? そのあと暇か?」
 「明日? べつに予定ないけど」
 「じゃあちょうどいいな。ちょっと付き合ってくれや」
 「いいけど、どこへ行くんだ?」
 「オウ。美山瀬まで。久々に一緒に単車で走りに行こうぜ!!」
 
 リュウジが言ってる美山瀬──みやませ──ってのは、鬼浜町からは40kmくらいの距離がある場所だ。遠くに見えてる山のほう。造成されたダム湖のあるとこだ、たしか。
 「いいけど。ずいぶん遠くまで行くね。腹は大丈夫なのか?」
 「当然!!! ちっとは鍛えねえとな。退院してすぐ試験だったから、本気で鈍ってるぜ」
 「鍛えるにはちょうどいいかもしれないね」
 「そうだろ? 漢の筋肉は鍛えることによって美しくなるんだぜ!!!」
 「あはは。何かの雑誌のキャッチコピーみたいだな」
 
 そんな話で盛り上がりながら、ふたたびオレの部屋へ帰ってくる。
 買いこんできたお菓子を片っ端から開封しながら、さっきの話の続きへ戻る。
 「それで? 美山瀬に行ったら何があるんだ?」
 「自然がいっぱいで空気がうまいらしい。健兄が教えてくれたぜ」
 「ふうん。健兄さんが。詳しいんだ」
 「つーか、健兄の地元なんだ。美山瀬は」
 「なるほどね」
 オレは頷きながら、チョコレートに手を伸ばす。
 
 「実はな、ちょっと頼まれてることがあるんだ。健兄にな」
 「ああ、それでなんだ。納得」
 行き先をはっきり決めて走りに行くなんて珍しいな、って思っていたんだ。
 だからそれを聞いてやっと得心がいった。
 頼まれごとをしたらリュウジは絶対断れないもんな。

 「そしたら重要任務を遂行する前に、何があっても試験は無事に切り抜けないとね」
 「……ちぇ。結局そう来やがるか、ハヤト」
 「あはははは。別にオレの趣味なわけじゃないよ。高校生の宿命だろ?」
 「ううう。早く卒業してえぜ」
 「とか言って。リュウジが一番学校好きなくせに」
 「まあな。学校は嫌いじゃねえけどな」
 複雑そうな顔をしながら、リュウジはいちご牛乳にストローを挿した。

 明日は久しぶりに走りに行く──そう思うだけでオレもわくわくしてきていた。
 入院してたリュウジの復帰走行ってとこかな。一緒に単車を走らすのって、もう何日ぶりだろう。
 そんな気分を一旦置いといて、今夜のオレはリュウジをしごくという任務を帯びている。
 だってリュウジ、ちっとも英単語の綴りが覚えられないんだもんな……。
 やたらと難しい漢字には詳しいくせに。おかしなもんだ。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

試験…

学生諸君は忍耐の季節到来って所でしょうか。
リュウジは追試の常連っぽいですね~(笑
あ、でも優秀な先生がついてるからギリギリセーフかな?
コウちゃん、たった1週間の入院で個室って…
流石、財閥の御曹司は違いますにゃ。

ふと思ったんですがリュウジってば自宅でもくーちゃん抱いて寝てるんでしょうか……

>>単savaさま

追試上等!!! だと思うなあ、リュウジwww
だもんで、そのたびにハヤトがまた付き合わされるとか。

コウちゃんの入院生活ものぞいてみたいもんですね~。
執事とか付き添ってたりして(^^:)
財閥なんてわかんないからなあ、わたし。だはは。

自宅寝室のリュウジは、くーちゃん と まーちゃん
(ダイゴ寄贈)の両手に花な予感。

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