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湖畔に吹く烈風 2

 
 「なんかこう、試験ってのはいっつも思うけど俺の気力を吸い尽くすぜ」
 とか何とか言いながら、リュウジは晴れ晴れとした表情を作ってた。
 いざ試験が終わってしまえばこっちのもの、って言わんばかりの顔だった。
 「あはは。そんなもん?」
 「当然じゃねえか!!! なんか神経使うし、緊張もするしな」
 「え、リュウジが緊張するって、なんか珍しいこと言うね」
 「そりゃ誰だって固くもなるだろ? つーか、ハヤトが図太いだけじゃねえの? まあな。結果に心配なさそうだしな、ハヤトに限っては」
 「そんなこともないけどさ。オレだって1学期んときには居眠りしちゃって白紙提出したり、ああ、回答欄を全部いっこずつ間違えたのもあったな」
 「ハヤトらしい武勇伝だな。恐れ入ったぜ」
 「あはは、お褒めいただけて光栄だよ」
 わはははは、って気安く笑いあうのがいい感じだな。って、こういうとき大概笑われてるのはオレなんだけどね……。

 試験を終えたリュウジとオレは、一緒に美山瀬湖を目指して走りに出掛けるところだ。
 平日の、時間はまだ昼前。道路は空いてる。こんな恵まれた状況で遠くまで走るのって滅多にないことだから、思いっきり堪能しようとオレは目論んでる。

 海沿いの国道4649号線をしばらく走って、今度は県道に入る。
 それをひたすら北上して、片側3車線の広い国道を横切る。
 そののち今度は山へ向かう国道をしばらく走って、さらに細い県道で現地を目指す──というルートが今回の旅程だ。
 距離にして40kmほどをオレたちは、昼間ってことも考えて、信号無視とかスピード違反とかをなるべくしないように気をつけながら一路山へと向かって行った。
 あ、一応ヘルメットも持参してはいるんだ。一応、ね。

 予想どおりどこも混んでいるところもなくて、オレたちの行程は順調そのもの。ちょっと風が冷たくなってきているのを感じながら、リュウジの背中を見て走る。
 手術してからそんなに経っていないからすこし心配だったけど、リュウジもこれといって調子悪かったりはしないようでまずは安心だ。
 行き先の書いてある青い看板を見ると、どんどん目的地までの距離が縮まっているのが気分よかったりする。
 
 そうして辿り着いた山道のトンネルを抜けると、目の前には想像よりもずっと大きな湖が広がっていたんだ。
 オレたちは感激のあまり、トンネルの出口際に単車をちょこっと停めてみた。
 「うわ~、大きいんだ。美山瀬湖って」
 「ああ。俺も驚いたぜ」
 リュウジと顔を見合わせてしまう。
 「水が青いよな。当たり前だけど」
 「ほんとだね。ところどころ青の色が違うのがまた、いいね」
 「な、来てよかっただろ? 気分いいよな」
 「うん、リュウジ。いいとこだ」
 オレが頷くと、リュウジは満足そうに頬をほころばせた。
 
 「ほんとはみんなで来たかったね」
 「そうだよな。残念だったな。ダイゴもノブオも」
 ふたりを誘ってはみたんだけど、どちらも忙しいらしかった。
 ダイゴは法事の手伝いがあるそうだ。ノブオは、何だかお母さんと約束があるとか。
 「でもさ、そしたら今日のは下見ってことで。今度ダイゴたちを案内してあげればいいんじゃない?」
 「オウ、それ名案!!! ハヤトってとぼけてるけど時々いいこと言うよな!!!」
 「……どうもね」
 なんか釈然としないけど、そこでつっこむのはキャラじゃないからな、オレ。

 「よし、それじゃそろそろ行くか。俺は今日は目的があって来たんだからな」
 そんなリュウジの掛け声で、オレはふたたび単車に跨った。
 そこからは、湖に沿って道を行くのみ。陽射しに湖面が輝くのなんかを横目で見ながらの走行は気分がいい。海とは違った色合いが、なんだか目新しかった。

 リュウジについてしばらく走って、湖畔の飲食店や売店なんかが並んでいるあたりまで来た。駐輪場に単車を並べて停めると、リュウジは何やらリアにくくりつけていた荷物をほどいた。
 そして、ポケットからメモを取りだしてそれを頼りに歩き出すリュウジに、オレはついていく。

 「ああ、ここだここだ」
 と言ってリュウジが足を止めたのは、何軒か並んだおみやげ屋さんのうちの一軒の前。
 おまんじゅうとかを売っているお店ではなくて、木でつくった小物ばかりが並んでいるところだ。お客さんは女性ばっかりだった。
 
 大事そうに手持ちの包みを抱え直して、リュウジは店先で声を張る。
 「こんにちわ!!! ええと、健兄の親父さんいますか?」
 「うん? 健兄──? 健一だったらウチの息子だが?」
 リュウジの声で振り返ったのは、オレの親父よりちょっと若く見える男性だった。パイプをくわえて、帆布でできた前掛けをつけて、健兄さんと同じ背中の真ん中くらいまである長髪を後ろでひとつに束ねている。
 「どうも、はじめまして」
 リュウジはぺこりとひとつお辞儀をした。それにオレも倣う。
 「俺、健兄に世話になった者です。で、これ。健兄から、親父さんへ渡してほしいって頼まれて持ってきました」
 「健一から……なんだろう?」
 言って、親父さんはリュウジから包みを受け取っていた。

 親父さんが開いた包みから出てきたのは、革製のベストだった。それと一通の手紙。
 手紙に目を通した親父さんの目がちょっと細められたのをオレたちは見ていたんだ。
 「誕生日おめでとうございます、親父さん」
 リュウジが言うのに合わせて、隣に控えるオレも自然とお辞儀していた。

 そうか、親父さんの誕生日プレゼント──そういうことだったんだ。
 足を骨折して自分で来られない健兄さんは、リュウジにお使いを頼んだんだな。
 リュウジから詳しく聞いていなかったから、今ようやくここに来た意図をオレは知ったのだった。

 「ああ、それはどうもありがとう。ご苦労さんだったな、君達」
 「とんでもないです。俺も同じ病室に入院してて、さんざ健兄にはお世話になったから」
 「そうか、君か。リュウジ君というのは。この間、健一から電話があったときに聞いたぞ。なんでもやんちゃな高校生らしいな?」
 「え──俺……わはははは」
 「うんうん。いいじゃないか。そういうのは若いうちしかできないからな」
 健兄さんの親父さんは、リュウジの肩を叩きながら大きく笑ってた。
 
 それからしばらくリュウジは親父さんに健兄さんの近況を話したりしてた。
 そうこうしているうちに、今度はお袋さんが中から出てきて、オレたちに手作りらしきケーキとコーヒーをご馳走してくれたんだ。

 店内の一角にある木製テーブルを陣取って、リュウジと親父さんが話すのを聞いてた。
 親父さんの話からすると、健兄さんってのもオレたちくらいの歳のころはこのあたりでは随分名前が通っていたみたいだ。
 「へ~。だからリュウジと気があったんだね。健兄さん」
 「オウ。なんか納得だぜ」
 オレがちいさく囁くと、リュウジはどことなくうれしそうに頷いた。
 同じ匂いのする人どうしって、惹きあうのかもね。
 

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コメント

ハヤトってば

勉強はできるわ、モテるわ、いうことなしだね!
さすが私が惚れた男だけのことはある
とかいってみる。

鬼浜町も美山瀬湖も秋の気配?ああ、ツーリングとかしてみたいなぁ。
それがたとえ族車でも(笑)

ツーリング

こんばんわ、華丸様。
美山瀬湖迄の行程を読んでいて大昔の記憶が…
秋晴れの日のツーリングって何だかとっても良いですよね~
バイクだと誰とも話せないんだけど、
腕やアイコンタクトでのコミュニケーションがとっても楽しくて、
車には無い一体感がとっても不思議。
って余韻上々浸っていたのに、
そういえばヤツ等ってばもしかしなくてもドハデな族車…
ハヤトはともかくリュウジのバイクは昼間走行厳禁ってくらいありえないっす~(笑
せめて昼間はカウル外して欲しい(笑

>>ピノコさま

>さすが私が惚れた男だけのことはある
だはははは。そうですか~~~?
でも、ピノコさんにはトドロ~キが……www

ピノコさんも秋を感じに出掛けてみたら?
原付でカッ飛ぶんでしょ?
かっこい~。勇者だもんね。

族車も……勇気いるな(^^:)

>>単savaさま

お~、単savaさんって単車乗るひとなんですか?
……ごめんなさい、と先に謝っておきます。
わたし単車道は通ってないから、ぜんぜん間違った
表記しちゃってるかも(^^:)
おかしかったら訂正入れます。つっこんでください!!!

>車には無い一体感がとっても不思議
うらやましいな。そうかあ。勉強になります(^-^)/

>リュウジのバイクは昼間走行厳禁
だはは(^^:) そうですな~。確かに昼間はアレかもな~(汗)

大昔のお話で

単車に乗ったのは大昔のお話しです。
しかも立ちごけするような腕前でございます(哀
互いに抜きつ抜かれつ、仲間の風に煽られ煽りって感じでしょうか。
それが妙な連帯感って言うか、一体感を生むのかも?
しかし!
今は空調無しで遠出なんて考えられません(笑

>>単savaさま

大昔でも、やっぱ経験者サマから見たらおかしなこと
書いてる予感・大!!!
どうか許してくださいまし~(汗)

>妙な連帯感って言うか、一体感
コレ、憧れますね。正直言って。
いい感じなんだろうな~。
わたしも男子に生まれ変わって、高校生からやり直し
たい(嘘)

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