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湖畔に吹く烈風 5

 ふたたび駐輪場に4人で戻ると、テツが今すぐ町へ出てタイヤ交換をすると言い出した。
 「って、これから行くの? そろそろ日が暮れるけど」
 遠出だっていうことで、オレはいつもはしない腕時計をつけてた。文字盤に目をやったら17時を過ぎたところだ。
 「うん。だっていつ奴らに狙われるかわかんねーから」
 「なるほどね。なんかわかるけど。こっちが弱いときって不思議とそういう展開になるからね」
 オレは納得した。そう、いつだって暗黒一家はそんな風にオレたちに仕掛けてくる。リュウジが入院してるときなんて、オレ、コウヘイに殴られたもんなあ……。

 「でもまあ、用心に越したことねえやな」
 「ああ。けどリュウジ、それ以前にテツはそうと決めたら絶対に意志を曲げないから」
 「正解!! さすがわかってるなー、タケル」
 「だてに付き合い長くないってこと」
 あはは、なんて美山瀬のふたりは笑いあう。
 「よし。そしたら町まで一緒に走ろうぜ!! 俺らも通り道だし。な、ハヤト?」
 「そうだね。そうしようか」
 といったわけで、リュウジとオレ、それに美山瀬のタケルとテツとの4人で町の方角へ向けて単車を発進させた。

 もう日が落ちる寸前の湖面を見ながらの帰り道だ。リュウジとタケルが並んで先行して、オレとテツとはその後ろへつく。
 しばらく走るとトンネルに入る。それを抜けたら町の方角へ通じる下り坂なのだが──
 「ん? なんだ? うるさいのが近づいてくるな」
 ただでさえ音が反響するトンネルの中、オレの呟きは後ろから近づいてくる爆音にのまれて誰の耳にも届かなかった。
 何だろうと思って振り向いてみると、オレたち4台との距離を縮めてくる爆音の主は2台の単車だった。
 ちらりと見たテツの顔は、苦く歪められている。
 たぶんこの表情は、彼には見覚えのあるだろう追随者が作り出させているんだな、という確信めいた理解がオレに訪れた。

 トンネルを抜けたところで、2台の爆音マシンがオレたちの行く手を阻んだ。
 2台はリュウジとタケルの前に回り込んでブレーキを掛けた。
 仕方なくオレたちも単車を停めて路肩に寄せて──そして美山瀬烈風隊の隊長・タケルは、爆音マシンの主に声を放つ。
 「何だ。何か用か。くだらないことで呼び止めたりしないでくれ」
 「さあな。くだらんことかどうか、な」
 タケルと正面から睨み合うふたりは、どちらも坊主刈りだ。応えたほうは不吉に声が太くて、どっしりした体をしていた。
 おそらく彼らが、テツがさっき話していた『ちょっかい出してくる奴ら』なんだろう。
 揃いのつなぎ服の胸には、「清河軍団」の刺繍があった。彼らの部隊名らしい。

 「俺はあんたに用がある、テツ」
 そう言って視線をテツに向けたのはもうひとりのほう。切れ長の目に冷たい光を浮かべている。
 「え、おれ? こっちには別になんもないけど?」
 「ふざけるな。あんた昨日、俺に何をした?」
 「昨日? さて、何かしたっけか?」
 
 日が落ちようとしている、山に囲まれた湖の景色を強い風が吹き抜ける。
 リュウジもオレも黙って見ているけれど、こうした会話から繋がる次の展開なんてだいたい予想がつく。

 「昨日、町で俺の単車を無理矢理追い越しただろう?」
 「いやー、無理矢理っていうか、追い越したっていうか。だって低速走行はほかのクルマとかに邪魔だろ? おれ、そう思っただけだし」
 別段悪いことをした感のないらしい口調でテツはそう答えた。
 「そういうことなら言いがかりだ、清河軍団。俺たちは好きこのんで喧嘩を売るようなまねはしない」
 「そんな道理がどこでも通用すると思うのか? 随分甘いな、タケル」
 「……無駄だ。そんな挑発には乗らない」
 落ち着いてタケルが言った。
 
 オレはなんとなくリュウジを見た。むしろリュウジが率先して喧嘩を買ったりしないといいな、なんてちょっと心配になったら案の定──リュウジはこめかみに青筋を立てんばかりの表情をしてた。
 「リュウジ。落ち着きなよ。オレたちの出る幕じゃない」
 「──わかってるぜ、ハヤト。でもよ、俺は本来こういうの黙って見てられねえんだよ」
 俺たちはちいさく囁き交わす。そんなオレたちに一瞬だけ清河軍団の視線が向けられた。
 
 「とにかく昨日のツケは払ってもらおうか」
 隊長格らしき体つきの大きいほうがタケルとテツとに言い放つ。
「へー、そんなにおれと対決したいんだ?」
 耳の裏側を掻きながら答えたのはテツだった。
 「おい、テツ。自ら煽るような真似はよしたほうがいい」
 「だってしょうがないだろ、タケル。おれ、ご指名受けたんだぜ?」
 「そうは言っても、テツ──」
 終始落ち着いた印象のタケルがすこし慌てた顔をする。
 そうだ。テツの単車は万全な状態じゃないんだ。タケルの反応ももっともだ。
 「いいさ。やれるとこまでやるよ、おれ」
 口笛でも吹くような気楽さでテツは言って、わざと大きくアクセルをふかしたんだ。

 沈み行く夕日の残りに金髪を輝かせて、夕日の色に塗装を施したマシンを操るテツがスタートラインへ立つ。
 その横でテツに冷たい視線を送ったのちに正面を見据える、テツのライバル氏。
 きっと誰が止めてもテツは聞かないんだろう。半ばあきらめた表情のタケルの横顔がそれを物語っていた。

 「よし、いいな? では──Ready GO!!!」
 清河軍団の隊長格が低い声を辺りに響かせると同時に、2台のマシンは爆音を轟かせながら湖に沿ったカーブの先へ姿を消した。

 「なあ、ハヤト」
 「うん?」
 爆音が遠ざかるのを感じていると、リュウジがオレに声をかけた。
 「正直言って、どうなんだ? テツの単車は大丈夫なのか?」
 「ああ──どうだろう。とりあえず通常走行には差し支えないんだけど。無茶しなけりゃね。パンクは釘のせいだったけど、タイヤよくないから」
 「無茶しなければ、か。それは耳が痛いな」
 オレの答えるのを聞いて、タケルがため息混じりにそう言った。
 「そういう時に限って無茶をするのがテツだから」
 「なんかタケルの気苦労、俺にもわかるぜ」
 眉間にしわを寄せてリュウジが洩らす。
 「無茶する仲間をとりまとめるのって大変だよな。ウチにもそういう奴いるからな」
 言いながらリュウジはオレを見た。
 「え? オレ?」
 オレ、そんな無茶するかな? あんまり自覚ないんだけどな……。

 どのみちリュウジも、それからタケルも、オレなんかじゃ味わえないような苦労をしてるってことなんだろう。
 リーダーって大変なんだな、なんて朧気に思いながらオレは気を揉むふたりを眺めてた。
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

あっちでもこっちでも

こんばんわ、華丸様。
いやいや、どこも青春真っ盛りですね。
若いって良いな~
>ウチにもそういう奴いるからな
リュウジに言われたくないでしょうね(笑

リュウジ、他所様の喧嘩に怒筋立ててないで
リーダー対決がんばってほしいな…

>>単savaさま

わたしが中学生だったころ。
土地柄(神奈川県)、身の回りにはリュウジたちみたい人がたくさんいました。
そのころは彼らを理解できなかったけど、今になってみれば
彼らはとても熱い青春を送ってたんだろうなあ、とか思います (´∀`)

>リーダー対決がんばってほしいな…
言える!!!
きのうコウヘイに仁義2連敗した……(>_<)

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