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湖畔に吹く烈風 6

 
 いつもの勝負ルートは湖畔から町へ下って県道を流すコースなんだとタケルが言った。
 「距離はずいぶんあるのか?」
 リュウジが聞き返した。
 「実際測ったことはないが、時間にしてだいたい15分程度かな。細くてくねった道が多い」
 「それじゃ技術が要るな」
 「そう、ハヤト。そのあたりの勘はテツがうちの隊ではずば抜けてる」
 オレたちが話しているのを、離れたところで敵の隊長が腕組みして眺めている。
 なんとなく余裕が見える表情だ。もしかしてテツの単車の状態を知っているのかもしれない。たとえばさっき、オレが修理しているのを通りすがりに目撃したとか。あり得るな。

 「うん? 音がするな?」
 「え、リュウジ、何の音?」
 「いや、爆音がそっちのほうから近づいてきてねえか?」
 リュウジに言われてそっち──テツとライバル氏が走っていった方向に意識をやる。すると確かに、改造マフラーの奏でる音らしきが聞こえてきた。
 そして、しばらく後に見えてきた1台の単車の姿。
 「あれは──? テツと一緒に走り出した奴?」
 「どうもそうみたいだ」
 「って、今さっき出てったばっかりじゃねえか? でもって、テツはどうしたんだ──」
 リュウジが言い終わるかどうかの間に、テツのライバル氏は想像したのと違う方向から単独で戻ってきて、スタートした地点に単車を停めた。

 「一体どうした? うちのテツは?」
 タケルが訊くのに、薄く笑ってテツのライバル氏が答えた。
 「どうもこうも。テツはゲームオーバーだ。自走不能だな」
 それを聞いて、向こうの隊長も低い声で笑っていた。
 
 オレたちの怖れていたことが起きてしまったようだ。
 「勝負はあったようだな。タケル」
 「────」
 「タケル、あんたテツを迎えに行きな。ちゃんとここまで戻ってきて詫びてもらう」
 「──ああ。言われなくても迎えに行く。詫びるかどうかは別だが」
  落ち着いた声でタケルは答える。悔しそうなのは見ていてわかるが、信念を曲げるつもりはないらしい。さすが漢だ。
 「おら、御託はいらねえからさっさと迎えに行って来い」
 言う清河軍団の隊長格を冷たい目で見返して、タケルは単車にエンジンをかけようとしていた。

 そんなタケルを見てたオレは──実は我慢がならなかった。
 さっきからリュウジが首を突っ込みたくて仕方ないのは解っていた。部外者だし、むしろリュウジを留めておくほうに気を回していたんだけど──
 そのとき、オレは反射的にこう口を開いていた。

 「待ってる間、暇だろ? 清河軍団の人。仕切直そうか? よかったらオレがテツのかわりに走るけど?」
 「ああん? 何だと? そもそもお前等、何者だ?」
 敵の隊長を真っ向から見据えて、オレは臆すことなく言い放つ。
 「オレは鬼浜爆走愚連隊のハヤト。特攻隊長を務めてる。こっちが総隊長のリュウジ。オレたちはタケルたちに縁ある者だ」
 「おい、ハヤト──お前」
 「いいから、リュウジ」
 いつもとまったく逆だ、これ。オレはリュウジをさしおいて、感情のままに声をあげていた。
 「タケル、早くテツを迎えに行ってやって。間つなぎくらいは出来ると思うから。単車はどこか安心な場所があったら置いてくるといい。あとでもう一度タイヤ見てみるよ」
 「わかった。恩に着る、ハヤト」
 短く言ったあとすぐに、タケルは単車を始動させたんだ。

 「ハヤト、お前大丈夫なのか?」
 「さあね、リュウジ。でもなんか我慢できなくて。オレ」
 「そんなのは俺も一緒だけどよ。けど、ここら道もろくにわかんねえだろ?」
 「ああ、そう言えばそうだな。気付かなかった」
 あはは、なんて笑ってみる。そうか、これがオレらしいってリュウジは言うんだよな。
 でも、今日ばかりはそんな軽口たたく余裕がリュウジにはないらしかった。逆にオレは開き直っているというか、変に落ち着いてる。
 「とにかく先を走ってもらうよ。ついていければ何とかなるんじゃない?」
 オレはリュウジに笑みを見せてた。

 「それで? 鬼浜の人。あんた本気でやるんだな?」
 切れ長の目をした坊主刈り──テツのライバル氏がオレを見据えた。やっぱり薄く笑っている。
 「うん、そのつもりだけど?」
 「いい度胸だ」
 「あはは、褒めてくれてどうも」
 たったさっきまで敵でも味方でもなかった初対面のひとりの単車乗りと、何の因果で勝負することになったんだろう。世の中、一瞬先ってわかんないもんだな。

 自分の好みの音が出るようにカスタムしたマフラー。親父に手伝ってもらって、できるとこは自分で手を出して。だからオレの愛車はこんなとき、オレを励ますようにいい音を聞かせてくれるんだ。
 
 我ながら心地よいノイズを聞きながら、オレはスタートの合図を受けて走り出した。
 テツのライバル氏の背中を凝視して、振り切られないように細心の注意を払いつつ。
 
 初対面同志の勝負は相手の技量もわからない。しかもオレにはコースさえわかっていないというハンデつき。
 それでもオレは走らずにいられなかった。
 思えばオレたちは、ほかの似たような隊と親しくすることって今までなかったんだ。オレたちが普段顔を合わせるのは敵対する暗黒一家の奴らくらいだから。
 そんなオレが初めて会った、自分と似たような立場のテツ。そう、オレはだからきっと感情的になったんだと思う。

 ──そんな徒然の物思いは一旦やめておこう。ここは集中しないといけないんだった。
 テツのライバル氏に引き離されたら一巻の終わりだ。
 オレは大きく息を吸って、前を行く背中を強い視線で睨みつけてみる。
 なんとなく額の真ん中が熱を持ったような気がした。
 
 下りのまがりくねった道。先には急カーブ。
 知った道だったらカーブを狙って迷わず単車を寄せていって突っかけるところだけど、ここはオレが前へ出ても話にならない。
 たしか15分程度のコースだってタケルが言ってた。オレは普段はしない腕時計をたまたま持っていたのを幸いに、出発からの時間をみてラストスパートのみを念頭においた勝負に賭けることにした。

 最初が下りだということは、ラストに近い辺りは上りのはず。
 知らない道程だって、それだけヒントがあったらどうにでもなるだろう。
 オレの勝負感覚をオレが信じないでどうするんだ?
 ──そうオレを励ましながら、湖の方角から吹いてくる強い風に髪をなぶらせていた。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

カッコいい!

こんばんわ、華丸様。
特攻隊長カッコいいですね!
やっぱりハヤトには喧嘩より単車勝負の方が似合ってますっ。
しかも何時もと違って感情が優先してる当り、素敵でございます!
こういう時のハヤトってもしかしたらリュウジにも止められないのでは…
仏恥義理だぜっ…!?

>>単savaさま

ハヤト、なかなか男だった!!!
……とわたしも思ったわけでございます。だはは。

まさかハヤトが、自分から「行く」って言い出すとは
思ってもみない展開だったんです、わたしにも(汗)

おとなしい人ほどキれると怖い……ってのと似てる?
とぼけた奴ほど強気になったら手がつけられないかな?

……ぜひとも実機でも、もうちょっと「その気」になって
ほしいですな。ぜんぜん出てこないでしょ?

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