目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

湖畔に吹く烈風 7

 
 初対面の相手と、初めて走るルートでのオレの志願した勝負の途中。
 湖から通じる坂道を下りきったところで、タケルとテツの姿が視界に入った。
 ふたりしてどこかへテツの単車を移動させてる。
 一瞬、ふたりはこちらに気付いて振り返った。
 横目で見たけど、今はそんなことに気を取られている場合じゃない。オレは勝負相手の背後を執拗に追いかける恰好だ。
 
 山道と言ってもいいくらいの道路は、平日のせいか夕方でも交通量は極めて少ない。お誂え向きといったところか、すれ違う対向車はぜんぜん来ない。
 だから海辺が地元のオレたちと違ってこんな時間に単車勝負なんてことができるんだと、走り出してから気が付いた。

 タケルの言っていたように、確かにカーブはきつい。
 オレの前を走る、美山瀬のテツのライバル氏──清河軍団の特攻隊長は、細い道をオレの行く手を阻むように蛇行する。
 コーナーにさしかかると、先のコースがわからないのでオレはスピードを緩めざるを得ない。
 しかもライバル氏は巧みに、カーブの手前でオレの単車に突っ掛けてくる。
 知った道ならこちらから仕掛けるところだけど、突っ込むところと退くところがわからない以上はひたすら受け身だ。

 いくつかの下りの急カーブをそうしてやり過ごした。
 交通量が少ないとはいえ、公道だから当然ときどき信号もある。なるべく停まらずに済むようにスピードを調節するのはいつものことだけど、その信号が変わるタイミングなんかも知っているのといないのとでは大違いだ。
 気付いたらオレは、ライバル氏の策略にはまったかのように彼の前を走っていた。
 あらら、なかなか勝負巧いな、敵も──なんて言ってる場合じゃないので、オレは速度を緩めて敵の後ろに回り込む。
 ついでに一度、こっちから単車を寄せて突っ掛けてった。なんか一矢報いたような気分。
 
 続けざまのカーブ。気を抜いたら曲がりきれなくなりそうになる。
 カーブに気を取られていたら、今度は振り切られそうになる。
 いくつもいくつも気にすることがある勝負っていうのは、不利なのは承知だけどいままでオレが味わったことのないスリルを秘めてて案外おもしろい。
 秋の宵の口。ロケーションは山。もちろん気温はだいぶ低いはずだけど、いろんな緊張がオレに汗をかかせていた。

 時計を見たら、スタートから10分が経過していた。
 ライバル氏がいつものペースで走っているんだとすれば、コースの1/3を消化したことになる。
 そういえば道はしばらく前から上りになってる。
 うん、きっと勝負の賭けどころは遠くないんだろう。
 オレは右カーブを、大きく単車を傾けて曲がりきった。

 道がどこでどう繋がってるのかなんてちっともわからないオレだけど、やっとこさ見覚えのある道に出たように思う。
 もう暗いからあまり自信を持って言えるわけじゃないけど、カーブの急な細い道を登り切ったらさっきリュウジと走った道──美山瀬湖に沿った道らしきところへ出たような気がした。
 時間的にも体感的にもそんな予感だった。だとすると、この先は左カーブ、次いで右のやや緩いカーブ。少し直進でさっきのトンネルのはず。

 よし。ここが勝負どころだ──オレはそう踏んで、定位置にしていたライバル氏の背後から出て、真横に並んだ。
 ちらりと横目で見てみたら、ライバル氏と視線が合った。

 ようやく視界が拡がったところで、オレは自分の勘が正しかったのを知る。
 ライバル氏と並んで激しくぶつかり合いながら通ったその道は、湖畔の商店街──健兄さんの親父さんの店の前につながってた。
 さっきテツの単車を修理した駐輪場を通り過ぎるころには、オレは自信と気合いとをもってライバル氏に本気で挑む準備を整えていた。

 湖の形に沿った左カーブ。オレは右側からライバル氏に単車を寄せる。相変わらずマフラーからはオレの好みの排気音がしていた。
 カーブをアウトすると、ほんの少し直線だったと思う。
 直線の間に先行しようと試みたけど、相手もさすがに手練れの者。前輪を寄せてきて、なかなか簡単に許してはくれない。
 相手が強いと自然に気概が高まる。互角と認めるハンゾウと勝負するときと同じくらいのテンションで、オレは再度ライバル氏を横目で見据える。
 今度はライバル氏は、まっすぐ前を見ていたから視線が合うことはなかった。
 
 ラストのトンネルへ続く右カーブ。内側を走るオレは、今度は突っかかられる側となる。
 外から当たってきつつも抜き去ろうとするライバル氏の進路をなるべくふさぐように、オレはハンドルを強く握って持ちこたえる。
 ふと思い立って、一瞬あえて速度を落としてみた。するとライバル氏は当たり前のようにオレの前へ出る。
 さらに速度を緩めて、今度はライバル氏の左側へ回り込む。さっきまでの山道と違って車線に幅があるので、そんな小細工もできた。

 やがてトンネルへ──これを抜けたらゴールだ。
 あえて減速したオレは、ふたたび加速をつけてライバル氏に寄せていく。
 トンネルの中はやたらと音が響く。ライバル氏のマシンの音、それにオレのマシンの音。ほかに通るクルマもなかったから、そのふたつだけがまるで喧嘩をするかのように縺れあって耳に突き刺さってくる。
 トンネル特有のオレンジ色の灯りのもとで、オレとライバル氏の本気の走りがぶつかり合っている。
 さあ、あとひと踏ん張りだ。ほら、あと少しで出口。

 ここまで来たらオレもライバル氏も、ゴールを見据えて加速するのみ。
 信じるものはおのれの力量。それ以上にマシンとの一体感。
 マフラーから出てる音は、オレの叫び声と一緒だ。負けてたまるかと咆吼してる。

 ふたつの音の狭間で、きっとオレは自分の腹からも声を振り絞っていたと思う。
 「だから言ってるだろ──オレの本気が負けるわけないぜ!!!」
 
 速度を保ったまま駆け抜けるトンネルの出口際。視界を掠める赤いリーゼント。オレを待っている頼もしい姿だ。
 ──ああ、戻ってきたよ、リュウジ。
 ──いや、やっぱ知らない道ってキツかったよ。
 ──で、どうだった? オレは先にゴールできていたのか?

 世界で一番美しい排気音が、オレの代わりにリュウジに訊いてくれていた。
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 湖畔に吹く烈風 8 | ホーム | 湖畔に吹く烈風 6 >>


コメント

ハゥゥゥ~

かっこいいぃ~ハヤトぉぉぉ♪
スリルを楽しみに感じてしまうなんてッ!
さすが特攻隊長!シビレルッ!

もちろん、「ドゥユゥアンダスタァーン?」って
いってくれるよね?ね、ハヤト?

>>ピノコさま

ハヤトもだんだんリュウジに毒されてるなあ(^^:)
とか思ってみたり……。

なんかこう、話が進めば進むほどクールじゃなくなって
きますなあ。ウチのハヤトは。

>「ドゥユゥアンダスタァーン?」って
んじゃ、そのときはピノコさんの耳許で。
だはははは。

うおーー

正に疾走!
なんて生き生きとしてかっこいいんでしょう!!
しかも勝負中に淡々とレースプランを立ててるあたり
coolですね~

Do you understand?
Yes,It understood…

ハヤトかっこいいーー

>>単savaさま

ここへ来て、ハヤト人気が浮上してますなあ。
ウチんとこではwww
わたしとしても展開が意外だったし……。

実はわたしもハヤト、見直しました。
さすがリュウジの右腕だなあ、とか。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。