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湖畔に吹く烈風 8

 「リュウジ、まさかオレが勝負に出てる間に向こうの隊長氏と殴り合いなんかしてなかっただろうな?」
 「……ハヤト、お前言うようになったな」
 高ぶった思いで訊くオレに、わはは、と笑ってリュウジは応えた。
 「まあ、そのう、アレだ。ほんの挨拶程度にはな」
 「あはは、リュウジは結局喧嘩っ早いんだもんな」
 「オイ!!! 今日ばっかりはハヤトに言われたくねえぜ」
 ちょっと呆れた色を混ぜた複雑な顔をして、リュウジはオレにこう言った。

 海辺の鬼浜町から40kmの山の中。ここで気の合う新しい仲間と出会って、それでもって彼らの因縁の宿敵とのちょっとした勝負を終えたオレはやたらとテンションが上がっていたことは事実。
 「それで? 向こうの隊長は強かった?」
 「いや、そんなでもねえかな。腹が開くほどじゃなかったしな」
 「あはは。それじゃいいリハビリになったんだ」
 「まあ、そんなとこかもな。いい運動だったぜ!!!」
 わはははは、なんてリュウジとオレはどっちもハイな気分のまま笑いあってた。

 テツのライバル氏との単車勝負の結果は、どうやらオレに軍配があがったみたいだ。
 僅差でゴールしたとは思ったけれど、オレが息を整え終わってひとこと言ってやろうとしたころには、美山瀬烈風隊のタケルとテツの宿敵・清河軍団のふたりは早々に引き上げにかかっていた。
 「余所者風情が生意気に」
 そんな言葉と唾を吐いて、ふたりとも納得いかなそうな顔をして。
 
 ぜんぜん知らない道での勝負っていう不利があったけど、オレは旅先──ってほどの距離じゃないけど──で出会った新しい仲間の助けになれたら、という思いに走らされたんだ。
 きっと待ってる間のリュウジも似たようなもんだったんだろうな。リーゼントの形が崩れているのがそれを物語ってる。
 オレも強い風に煽られっぱなしだったから、髪の毛とんでもないことになってるな。
 まあ、いいか。これもひとつの勲章みたいなもんだよな。

 さて、これからどうしたもんかと思案していたら、坂の下のほうから排気音が近づいてくるのがわかった。
 ふたたびパンクしたテツの単車を安全な場所へと運んでから、ふたりはタケルの単車に乗ってここまで戻ってきたんだ。
 「ハヤト!! おれのかわりに勝負行ってくれたんだって?」
 「うん。なんかね、ついうっかり」
 「え、うっかりって……」
 「わはははは。テツ。ハヤトってそういう奴だからあんま気にしねえでくれ」
 「ふーん。そうなんだ」
 「けど、本当にふたりには世話になった。感謝してる。俺もテツも」
 「ほんと、タケルの言うとおり。ありがとな、リュウジ、ハヤト。まさかこんなとこで、知らない奴と勝負してくれる人がいるなんて思ってもみなかった」
 美山瀬のタケルとテツはそう言って、ふたりしてオレたちにお辞儀なんかしてるんだ。
 
 「まあ、いいってことよ!!! 俺らは俺らで楽しんだし。なあ、ハヤト?」
 「うん、そうだね。オレ、なんか意外と熱い男だった自分に出会えたよ」
 「他人事みたいに言うなー、ハヤト」
 「え? そう? オレ、地元じゃクールで通ってるからさ」
 なんて言ってみたら、リュウジにため息つかれたよ、オレ。
 「あ~、悪い悪い。ふたりとも、あんま信じないでくれ。ハヤトの戯れ言は。ちょっととぼけてるだけだから」
 「心外だなあ……リュウジ」
 わはははは、と4人で笑いを分かち合ったんだ。
 なんかいいよね。まだ出会って数時間ってとこなのに、どこか通じるとこがある仲間って。
 そんな中でテツはオレに握手、と右手を出した。ふっくらとしたテツの掌は、しっとりしていて温かかった。
 
 ようやくオレたちが美山瀬湖のそばを離れた頃には、空には星が出始めるころだった。
 先導するタケルの単車について走る。テツとのふたり乗りだ。
 さっき勝負のときに走った坂道を下って、着いた先はメインの道を逸れてしばらく行ったところ──大きな家のガレージの中だった。
 ここはタケルの家なんだそうだ。
 「そしたら悪いけど、もう一度頼んでもいい? ハヤト」
 「うん。もちろんそのつもり」
 テツにそう答えて、オレはテツのマシンのタイヤと向き合った。
 「ありがとー、ハヤト。おれ、どうやって恩返ししたらいいんだろ?」
 「あはは、そんなのぜんぜん気にしないでいいよ、テツ」
 お互いに呼び名以外は知らない同士だけど、もうすっかり気安い感じになってた。
 今日ここに来てよかったな、って思って横のリュウジを見たら、オレの言いたいことがわかったみたく頷いてた。

 せめて何か食べるものを用意してくれると言って、タケルとテツは一旦この場を離れた。タケルの家のガレージには、作業するオレと見守るリュウジだけがふたりで残る。
 「今日ここ来てよかったって思っただろ? ハヤト」
 「うん? ああ、さっきね。やっぱわかった?」
 「当然!!! 俺らだってもう付き合い短くないもんな」
 オレはリュウジに目を細めてみせた。
 「そうだね。なんだかんだ一緒にいるしね」
 「オウ。まあハヤトいつも暇そうだしな。ダイゴとかノブオみたく用事そんなになさそうだしよ」
 「え。そんなことないけど……」
 言ってはみたものの、確かにちょっと弱いな。オレの反論は。
 まあいいか、なんて思って、ごまかし笑いに興じてみる。

 「でもま、今日はいろいろあったけど楽しかったよな」
 オレは手には工具、目はタイヤを見つめながらリュウジに言った。
 「だろ? 俺、そんな予感がしてたぜ!!!」
 「あはは。いつも前向きだな、リュウジ」
 「それが俺の生き様だからな」
 オレはついタイヤから目をそらして、自信たっぷりに言い放つリュウジを見た。
 腕を組んだその両肩には、オレたちの信頼のすべてが乗っかっているんだよな。

 それからオレは、リュウジといつもみたく会話しながらパンク修理に勤しんでた。
 仲間のこと、学校のこと、それから暗黒一家のことなんかをとりとめもなく。
 初めてくる場所だっていうのに、リュウジと一緒だとそんな気がしないのが不思議だってときどきオレは思うんだけど、なんとなくその理由がわかった。
 リュウジの醸す空気そのものが、きっとどんな場所の気よりも強いんだろう。
 
 これから先、どんな出会いとか闘いとかが待ってるんだかわからないけど──リュウジが隣にいる限り、オレは案外どんなシーンにだっていつも通りのオレでいられそうな気がしてた。
 もっともリュウジはオレこそマイペースだって言うかもしれないけどね。

 ガレージの入り口から見える美山瀬の夜空は、鬼浜町で見るよりもたくさんの星座が貼り付いてる。
 帰り道、こんな夜空を見ながら走るのも気分いいんだろうな。
 
 
   * 湖畔に吹く烈風 完 *


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

連投すみませぬ

とっても爽快なお話でしたね~
温かくなったらバイクがほしくなりそうです(笑

華丸様の描くハヤトはリュウジの居るところがhomeってことですね。
こういう深い絆って羨ましいです。

はじめまして。最近ブログを始めたちづおと申します。

自分も鬼浜爆走愚連隊好きでよく打ってるのですが、こういった視点からみる鬼浜も斬新でとても面白いですね。

今度打つときにこのストーリーを思い返しそうです。
バイク欲しいなあ…

またちょくちょく拝見させてもらいたいと思います。それではm(_ _)m

>>単savaさま

連投カンゲ~イ!!
がんがん来てくださいませ♪

「爽快」って評してくださって感激です☆
わたしもバイク免許ほしい……。
夏に思い立ったんだけど、実現しないまま仕事が
多忙続きでこんな時期に突入しちゃって(^^:)

>ハヤトはリュウジの居るところがhomeってことですね
あ、そうなのか!!!
そうですよね~。そうみたいです。だはは。
リュウジのオーラって、実機打ってても感じるからな。

>>ちづお様

はじめまして。華丸です。
コメントありがとうございます(=^▽^=)

ちづおさんも鬼浜スキですか。
仲間ですね~ (*^o^)乂(^-^*)
実機打ちながら、いろいろ想像してたりする結果が
コレです。
液晶の中だけじゃもったいないですもん。いいキャラ揃いだから。

>今度打つときにこのストーリーを思い返しそうです。
ほんとですか? 恐縮です o(_ _*)o

これからもぼちぼち続けていきますので、お立ち寄り
くださいね。
お待ちしてま~す!!!

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