目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

烈風、南へ 1

 
 「オウ!!! こっちだぜ。タケル、テツ」
 「あ、リュウジだー。タケル、こっちこっち」
 「ああ。今日はお招きいただいてどうも」
 リュウジの手招きでオレたちの前に現れたのは長髪の、揃いの革ジャンを着たふたり──美山瀬烈風隊の隊長・タケルと特攻隊長・テツだ。
 
 「よく来たね。おつかれさま」
 地元から40kmの距離を走って、今日は彼らふたりで鬼浜町へ来ていた。
 ここは鬼浜町立病院の待合室。
 「ハヤト~!! こないだはありがとなー。おれ、ほんとに感謝してるんだ」
 人なつこい表情で、金髪を揺らすテツがオレに笑む。
 「いえいえ。どういたしまして。その後単車は? ちゃんとタイヤ替えた?」
 「もちろん。あの翌日には替えたよ」
 「ならよかった」
 
 「まあ、話は後にしとこうぜ。とにかく健兄待ってるからよ」
 そうリュウジに促されて、オレたちは4人して健兄さんの病室──一週間前までリュウジが盲腸で入院していた部屋へ向かうことにしたんだ。
 足の骨を折って入院中の健兄さんのお使いで、リュウジとオレとで健兄さんの地元へ行って。そのとき知り合ったタケルとテツが偶然にも健兄さんの後輩で。
 そんなこんなで、彼らを誘って一緒に健兄さんのお見舞いをすることになったってわけ。

 4人で病室の前まで来た。慣れた手つきでリュウジが扉に手をかける。すると──
 「悪い、ちょっと待ってくれ、リュウジ」
 「ん? どうかしたか? タケル」
 「テツ、俺どこか変なところはないか? 服とか髪型とか」
 「いやー、べつにどこも」
 答えながら、テツはちょこっと笑っていた。
 「相変わらずだなー、タケル」
 「当たり前だろう。だって健さんの前におかしな恰好で出られるわけがない」
 「ふうん。尊敬してるんだ、タケルは健兄さんを」
 オレが訊いたらタケルはもっともらしく頷いた。ついでにテツの襟元が歪んでるのに気がついたらしく、手を出して直してやっている。
 「で、そろそろいいか?」
 「ああ。待たせてすまない」
 答えたタケルは、目を閉じて深呼吸してた。

 「健兄、元気か?」
 「ああ、リュウジか。よく来た」
 「オウ!!! 今日はハヤトも一緒だぜ」
 「こんにちわ~」
 「よう。特攻隊長」
 健兄さんは、オレにも気安く手を振ってくれる。細面で整った顔立ちの健兄さん。軽く脱色した長い髪が頬にかかっている。

 「どうした? 早く入って来いよ」
 「あのな、健兄。今日はお客さん連れてきたんだぜ」
 リュウジは誇らしそうにそう言った。
 「お客──誰だ?」
 そして健兄さんは、扉の前にいたオレの後ろから顔を出したふたりを認めて、うれしそうに頬をほころばせたんだ。

 「お加減いかがでありますか? 健さん」
 「ご無沙汰してまーす」
 「タケルじゃないか。それにテツも。どうしたんだ? え?」
 タケルとテツがお見舞いにと持ってきた花束をオレは花瓶に移し替えながら、その様子を窺っていた。となりではリュウジが、やはりお見舞いの品のパウンドケーキを切り分けているところ。ケーキは手作りのようだ。もしかして健兄さんのお母さんの作かもしれないな。

 「先日、美山瀬でリュウジとハヤトに世話になったんです」
 「それはリュウジに聞いた」
 「おれたち、健さんが怪我してるなんてちっとも知らなくて。ほんっとにお見舞い遅れてすみませんでした」
 「いや──それは、まあな。あまり褒められたものでもないから。恰好悪いだろう?」
 健兄さんは苦笑した。
 「そんな──そんなことありません、健さん。健さんは誰よりも素晴らしい、俺たちの偉大な先輩ですから」
 いつもは淡々とした口調のタケルが熱く語ってた。
 よっぽど心酔しているんだな、ってのがよくわかる。
 
 「ハヤト」
 ちいさくリュウジがオレに耳打ちした。
 「今日な、タケルたち誘ってよかったな」
 オレは気をつけて花瓶を運びながら、リュウジに笑って頷いた。

 美山瀬の先輩・後輩の3人にケーキとお茶を出してあげてから、リュウジとオレは一旦病室を出た。3人でつもる話もあるんじゃないかな、って思ったから。

 美山瀬のふたりを連れて、ダイゴとノブオとは夕方に落ち合うことにしていた。
 一緒にお見舞いに来てもよかったんだけど、あんまり大勢で病室を騒がせてもいけないということで。
 ひとまずすることもないし、リュウジとオレは屋上へ続く階段を上がっていた。
 屋上へ出てみると、秋の空が広がっているのが心地いい。
 「ん~、今日もいい天気だ」
 「そうだな、ハヤト。気分いいよな!!!」
 言いながら、リュウジはやんちゃ坊主みたいにフェンスによじ登った。
 「あはは、危ないよリュウジ」
 なんて答えながら、途中で買ってきた紙パックのジュースをリュウジに渡してやる。

 「おっ!! ハヤト、ちょっと見てみ? ほら、あそこ」
 「なに?」
 振り返ったリュウジに促されて、フェンス際に立ってみる。リュウジが示しているのは病院の玄関付近。
 「あ、暗黒一家だ」
 「見舞いかな? コウヘイの」
 「そうだろうね」
 奇しくもリュウジの退院の日に、コウヘイは入れ違いでここに入院したんだ。
 「でも、あいつらも大変だろうな」
 「あいつらって、ハンゾウたちか?」
 「そう。リーダー不在って、精神的にけっこうこたえるから。オレにはわかるな」
 「そんなもんか?」
 リュウジは不思議そうな顔をしてた。
 
 「そういや俺、結局コウヘイにまだ挨拶してねえんだよな。ここはひとつ顔見にいってやるか」
 「えっ、本気で? いや、それはどうかな……」
 「なんだよハヤト。俺、別に喧嘩売ったりする気はねえけど?」
 「う~ん。でもさ。実際顔見たらどうだかね」
 「信用ねえな。でもまあ、こんなとこで仮に騒ぎになってもあれだもんな。遠慮するか」
 案外聞き分けいいリュウジが珍しくもある。けど、リュウジもこないだまで入院してたんだもんな。きっと病院で過ごす日々って、いつもと全然違うってことだろう。

 「けど、そろそろコウヘイも退院してもいい頃だろうからな」
 そう言いながら、リュウジは目を空へやった。
 もしかしたら何日か後の激闘みたいのを想像しているのかもしれない。



テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 烈風、南へ 2 | ホーム | 湖畔に吹く烈風 8 >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。