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烈風、南へ 2

 
 しばらく屋上で時間をつぶしていたリュウジとオレ。
 そろそろいい時間だし──ということになって、いったん健兄さんの病室に顔を出しててみることにした。
 病室には、豊かであったかい時間が流れていたことが察せられた。
 風貌はいかつい3人だけど、みんなおだやかな顔で静かに話していたから。

 「それでは健さん。近いうちにまた、必ず」
 「ああ。だが無理はするな。短い距離ではないだろう?」
 「そんなことないですよー、健さん。だってタケルは健さんのためならどんなに遠くっても平気みたいだし、なー?」
 「……テツ。余計なこと言わなくていい」
 くすり、と健兄さんは笑っていた。
 自分が後を託した後輩たちを、かわいくてたまらないといった目で見てたのが印象的だった。
 なんか、うらやましいな。オレたちはリュウジが初代だから、どっちかって言ったら後に託してゆくほうだから。

 そしてオレたちは4人して健さんにかしこまったお辞儀をして──タケルたちにつられたな──、それから退室した。
 病室を出ると、タケルが深い吐息をついてた。よっぽど緊張してたのかもね。

 「元気だったろ? 健兄は」
 「ああ。今日は本当にありがとう、リュウジ」
 いまだ深い目の色を湛えたまま、タケルはリュウジにそう言った。
 「わはは、そんな俺にまでかしこまって言うことねえぜ、タケル」
 「でもさー、リュウジ。タケルはほんっとに健さんに憧れてるからさ。しょーがねえの。だから感謝されといてよ」
 「……そうか?」
 「うん。そういうことにしとこう、リュウジ」
 なんとなくオレにはわかるような気がしたから、オレもリュウジにそう言っといた。
 置き換えてみたら、きっとノブオがリュウジに対してそう思ってるようなもんなんだろう──って考えたら釈然とするもんな。

 「そしたらそろそろ行くか!!! 今日は俺たちの仲間を紹介するって約束だしな」
 「ああ。是非挨拶しないといけないから」
 3階の病室から階段を1階分降りたところで、そんなふうに隊長ふたりが目配せしあうのを見てた。
 一歩下がってついて歩いてるオレとテツも、互いに頷きあったんだ。
 
 と──そのときだった。すぐ下の踊り場のところに奴らの姿を見つけたのは。
 「お、コウヘイじゃねえか?」
 リュウジが思わず口に出した名前。呼ばれた本人は当たり前だが振り向いてオレたちを視界に入れる。
 入院患者のコウヘイは寝間着ではなく服を着ている。同じように振り向いた、付き従うハンゾウらはそれぞれ大きな荷物を持っていて。
 
 「退院か?」
 リュウジが訊いた。ただでさえ響く声が、狭い階段にこだましている。
 「──まあな」
 どことなくきまり悪そうにコウヘイが答えた。
 「そうか!!! そりゃよかったな。俺、結局見舞いもしねえでよ。悪かったぜ」
 「何──?」
 コウヘイはリュウジの言葉に、意外そうに顔をしかめていた。
 「オウ。だってよ、俺、約束したじゃねえか。俺が退院したら速攻で挨拶行くって。守れなかった非礼を詫びたいと思ってたんだぜ」
 「……そんなの忘れたな」
 リュウジが言ってるのは、皮肉なんかじゃないのはオレにはわかる。ただ約束は守る漢だから、ごく自然に口をついて出たんだろう。
 けど、コウヘイたちにそれが伝わったかどうか。

 「とにかくこないだの決着はつけねえとな!!!」
 「──ちっ、そんなことまで覚えてやがる」
 「当たり前だろうが!!!」
 リュウジの言葉に、コウヘイらは揃って面白くない顔をした。そりゃそうだな。今だったら奴らには分が悪すぎる。
 けど、リュウジはこう続けた。ごく自然に、裏の思惑なんかまったくない口調で。
 「俺、待っててやるから退院してもちゃんと養生しとけな。早く治らねえといつまで経っても勝負棚上げってのも気分悪いだろ?」
 「ふん。リュウジ、貴様は甘いなあ」
 それだけ言って、コウヘイは仲間を促して階段を降りていった。オレの立ち位置からではコウヘイがどんな顔をしてるかわからなかった。

 「ねーハヤト。あれ誰?」
 コウヘイらが去ってゆくと、そう訊いてきたのはテツだった。
 「ああ、あれね。オレたちの宿敵一味ってとこだね」
 「へー。宿敵か。やっぱいるんだ。ハヤトたちんとこにも」
 「そりゃいるさ、テツ!!!」
 答えたのはリュウジだった。
 「敵、味方は隊を組む上では避けては通れないな」
 なんてタケルが言う。
 「そうかー。じゃあもし今度リュウジんとこが困ってたら、おれらが助けにこなくちゃな、タケル?」
 「ああ。そうだな。恩のある大事な仲間だから」
 「タケル、テツ──お前らいいこと言うぜ」
 「うん。そう考えるだけで心強いね、リュウジ」
 
 「しかしリュウジは本当の漢だな」
 続くタケルの言葉は、感心そのものを現していた。
 「敵の弱みに乗じない勝負をするのが本当の漢だと思うから」
 「そうそう。それが健さんの教えだからねー」
 テツが笑って賛同した。
 「俺たちはリュウジと知り合えてよかった。な、テツ?」
 「ほんとだねー。リュウジが健さんと仲良くなれたのがよくわかる」
 
 相次いでそんなふうに言われたリュウジは、すこし面はゆそうに話す。
 「俺思うんだけどよ、敵がいるから仲間の絆が強くなるんじゃねえかな、って。あいつら自体には腹立つことばっかりだけど、でもいないと困るんだぜ、案外。だってハヤトはたまには勝負に出してやらねえと、一生とぼけた男のままだしよ」
 「え──って、オレ? そんな風に思ってたのか、リュウジ……」
 「当たり前!!! 全世界がそう思ってるに決まってるじゃねえか。なあ?」
 それはおそらくリュウジの照れ隠し。
 そんなこと、引き合いに出されたオレだけじゃなくてタケルにもテツにもわかってたようだ。
 
 「お、こんなことしてる場合じゃねえな!!! きっとあいつら待ってるぜ。そろそろ行こう」
 つとめて大きな声を張ったように思えるリュウジに促されて、オレたちは病院の外へ向かったんだ。
 「俺らの仲間はな、ひとりはダイゴっつって、寺の息子だ。逞しくてよ、いつも落ち着いてて俺らを支えてくれるんだ。でもって、1年のノブオってのがまた、負けん気が強いのが俺の自慢でよ」
 歩きながら、リュウジはタケルとテツに仲間のことを語ってる。
 そんなときのリュウジっていい顔してるな。
 ──もしもオレのことだったらどんな風に紹介してくれるんだろう。ちょっと不安だな。
 
  
   * 烈風、南へ 完 *



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コメント

先輩か~

先輩って不思議な存在ですよね~
頼もしかったり怖かったり憧れてみたりウザく思ったり。
ハヤトは烈風隊氏達を羨ましそうにしていたけど、
愚連隊君達にはスーパー頼もしい連荘確定の
翔氏が居るぢゃあないですか!(めったに逢えないけど)
実際愚連隊と翔ってどういう位置関係なんでしょうね。
もしや愚連隊には前身があってそこのOBなのかも?
子供の喧嘩にメリケンサック持参で首を突っ込む
大人はちょっと考え物ですが(笑

漢には漢がワカルw

類は友を呼ぶ?!
そんなかんじですよねぇwww

ワタクシ姉で一番上なため先輩とかもうね、ダイスキなんですよ・・・w否応なしに甘えモード全開ばりばりw
年上ダイスキw♀も♂も全部スキw
健兄にあまえさせてもらいますw

あっw自分が高校生ならってことですwww



>>単savaさま

>先輩って不思議な存在ですよね~
おっしゃるとおり!!!
わたし運動部経験ないので、そんなに厳しい上下関係
って経験してないんですけど。
でも学生のころのサークルの先輩は、いろんな人が
いました。
頼れる人、おっかない人、おもろい人。
いろいろ思い出すなあ。

>実際愚連隊と翔ってどういう位置関係なんでしょうね。
それ、ナゾですよね……。
ちょっとハヤトに訊いてきますわwww

>>Tohkoさま

>類は友を呼ぶ?!
まさにそんな感じかな~。
でも、そうすると暗黒一家も類ってか、友なのかもね。意外とww

>否応なしに甘えモード全開ばりばりw
うわ、カワイイこと言うなあ、Tohkoさん(=^▽^=)
きっと可愛がられたんだろうね、先輩方に。
わたしも姉妹の一番上ですけど、どっちかっていうと
弟タイプがスキかもww
あ、子分にしたいだけかもしれないわ。だはは。

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