目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

自転車狂詩曲 1

 もうすっかり秋も深まってきた今日このごろ。吹き抜ける風も冷たさを帯びてきてる。
 さっきも帰り道、そろそろこたつを出す頃かな、なんてリュウジと言い合ってた。
 そんな中でもさすがに小学生ってなもんで、近所に住んでるケイタは今日も元気に半ズボンでオレの家に現れた。膝小僧がかわいいな。
 「元気だなあ、ケイタ。寒くないの?」
 「ぜんっぜん!!」
 ふっくらした頬がピンク色。まったく、オレも何年か前はこんなんだったのかな。

 「それで? 今日はどうした?」
 「うん。あのさあ、ハヤトにたのみたいことがあってね」
 「そっか。よしよし、聞いてあげよう」
 「ほんと? わ~い、ありがとハヤト」
 ケイタはオレに懐いてる子だ。弟がいたらこんな感じなのかもな、ってときどき思う。 ちなみにケイタの仲良しの友達・カズマくんの兄さんは、ハンゾウだったりする。

 「あのさ、ぼく大きくなったらバイク乗るっていったでしょ?」
 「ああ。オレが教えてあげる約束だったからね」
 「うん。それでね、あの──ちょっとはずかしいんだけどね」
 ケイタは上目遣いにオレを見た。そして背伸びをして、オレの耳許に内緒話の要領で囁く。
 「ぼく、実はまだ自転車のれないんだ」
 「え──自転車?」
 「うん。あのね、こないだカズマにいわれた。バイク乗るんだったら自転車くらい乗れないと話になんない、って」
 「……ああ、でも──」

 実はオレ、ちょっとたじろいでいたりする。でもそんなことに気付く様子もないケイタは、当たり前のようにこう続けた。
 「だからね、ぼく、自転車乗れるように特訓してほしいんだ、ハヤトに」
 「え──ああ、まあ、そうだね。そうかもしれないな、うん」
 「でしょ? だから教えてくれる?」
 くりくりっとしたケイタの目が、オレにすがりついてきた。
 それを見たオレの、オレへの命令──ウマイ事言ッテ切リ抜ケロ!!!

 「あ~~~、ケイタ。ごめんな。今日はオレ、ちょっと都合悪いんだ。ほら、あのさ、今日はリュウジたちと集会ってか会議ってか、なんかまあそんなことになってて、急いでる。だからその件は、また今度にしてくれるかな?」
 嗚呼、きっとオレ、声がうわずってただろうな。相手が素直な子供でほんとに助かったって具合だ。
 「え~、そうなんだ。んじゃあしょうがないよね。そしたらさ、またこんど教えてくれるよね」
 「うん、ケイタ。約束だ」
 「ぜったいだよ?」
 「当然。一度した約束を破ったりしたら、リュウジに叱られるからね」
 「きゃはははは。それじゃ安心だね!! じゃあまた来るね、ハヤト」
 「そうだね、そうしてよ」
 ばいばい、と手を振ってから道を走って去っていくケイタの後ろ姿を見つめて、オレはごめんと謝った。
 ほんとのこと言って──今のオレにはその約束を果たせる能力はないんだ……。

 幼稚園にあがる年齢になるより前から、オレが親父に教えてもらって乗ってたのはポケバイだった。
 ときどきはサーキットに連れて行かれて、レースなんかにも出てたな。
 その頃から誰にも負けないっていう意志はあったんだ、オレ。
 ……って、そんなことはこの際どうでもよくて。
 そんな子供時代を経てきたオレの生活には、自転車が入る余地なんて皆無だった──って、これは言い訳かな?
 そうなんだ。オレ、自転車って乗れないんだ。たぶん。

 たぶんと言ったのは、ろくに乗ったためしがないから。昔からウチには自転車ってそう言えばなかった。
 一度も乗ったことがないわけじゃない。ちょうどケイタくらいの歳のときに、やっぱり友達連中に誘われて、友達の自転車を借りたことがあった。
 たしか派手にすっころんだ記憶があるな。
 それから中学のときにもやっぱりそういう話になって。その時はほんの少しだけなら直進はできたと思う。いや、曖昧だけど……。

 要するに、オレは自転車に乗れない男だってのが今現在の動かし難い事実。
 ケイタ、きっと明日もウチに来るんだろうな。正直に乗れないって言うのもちょっとためらわれるし、けど嘘つくのも何だし。
 よし──とりあえずケイタと数日、顔を合わせないようにしよう、ってオレは考えた。
 しかもそれだけじゃなくて。ケイタに自転車教えてあげる約束をしちゃったから、どうにかその資格を身につけないといけない。
 ここはひとつリュウジに相談してみようかな、って思いついたんだ。

 やれやれ。子分を持つのもラクじゃないね。なんて。
 とにかくオレは速攻で自分の部屋に行って、数日分の着替えやらを大きな鞄に詰め込んでから、ふたたび外へ出ることにした。
 出がけに店先で、お客に預かった単車のマフラーをいじってた親父にオレは言う。
 「ちょっと出てくる。もしかしたら数日帰らないかも。目的を達成するまで帰れないと思う。ケイタが来たら忙しいって言っといて」
 「おや? 家出か? 我が放蕩息子よ」
 のほほん、とした声を親父は出した。
 そう、親父はさっきのオレとケイタの話はしっかり聞いてた。しかもオレが自転車に乗れないのを知っている。
 「──誰のせいだよ、もう。そもそも何でウチには自転車ないんだ?」
 「必要ないからだろうな、やっぱり」
 ……これだよ。親父ときたら、しらばっくれてあごひげをいじってる。

 「あのさ、ひとつ訊いてもいい?」
 「なんだ? 我が自慢の放蕩息子」
 「親父ってさ、自転車乗れる?」 
 あっはっは、と口を大きく開けて親父は笑ったんだ。
 「当たり前だろ? じいちゃんが教えてくれたからな」
 「……親父、ちょっとはじいちゃんを見習ってくれたらよかったのに」
 「俺は俺の道をゆくんだ。悪いか?」
 もう答える気にもならなくて、オレは鞄を抱えなおして外へ出た。

 ガレージから大急ぎで単車を引きずり出してエンジンをかける。
 別に誰に見られてもまずいことなんてしてないんだけど、どことなくやましい気分なのはケイタに対する自責の念なのかな。
 オレのマシンは今日もいい音してる。それが今のオレにはちょっとばっかり忌々しいな。
 ──嗚呼、お前にばかりかまけてた代償がきたよ。
 ため息まじりにマシンに向かって呟いて、それからオレは走り出したんだ。
 
 そうだ。オレ、ケイタにはリュウジと会議って言ったもんな。そしたら今からリュウジに会ったらその点は実質嘘じゃなくなるってわけだ。
 向かい風に顔をしかめて、自分に言い訳してるオレ。
 やっぱりちょっと後ろめたいみたいだ。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 自転車狂詩曲 2 | ホーム | ☆4649☆ >>


コメント

ええー!

ハヤト自転車乗れないのぉぉ??
まずはリュウジの元で補助付きから特訓だね♪

私の生活には自転車はかかせません。
実は今新しいのがほしいんだけどぉ
「金がないなぁ」なんて思ってたら
今日の負けで2台くらいは買えそうでしたわ。
とほほ

次回予告特攻隊長チャリラリ~♪

こんばんわ、華丸様。
4649GETですか!かっ飛ばさないといけませんね?(笑

特訓開始ぃ~!
16t、背負って貰おうか(コウヘイ風
師匠は出前持ちリュウジですかね…
しかし、ここぞとばかりに厳しそうですね~

>>ピノコさま

そうらしいよ。ハヤト、自転車のれないんだってwww
笑うよね~ (´∀`)

わたしは何年か前まで自転車依存生活だったです。
今はクルマだな~。
冬は大変でしょ?

>今日の負けで2台くらいは買えそうでしたわ
どわあああああ((((;゜Д゜)))
ヤっちまったね……。
こんどは先に買っとこう!!!

>>単savaさま

>かっ飛ばさないといけませんね?(笑
だはははは(^^:)
どこカッ飛ばしたらいいかなあwww
ええと、自転車でいってきま~す!!! なんちて。

>16t、背負って貰おうか(コウヘイ風
これ……すごい発想!!!
めちゃめちゃ感動しました :*:・( ̄∀ ̄)・:*:
あの声で言ってるの想像しちゃった。
──やけにハマりますなあ。
単savaさんサイコ~ウ☆

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。