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自転車狂詩曲 3

 
 「あのさ、補助輪ってんだっけ? あれついてるのってないの?」
 いきなり乗ってみるようにと実車を渡されて、オレは少なからずたじろいでいた。
 「すまんな、ハヤト。あいにく家にはこういう自転車しか置いておらん」
 「てゆーかダイゴさん、それ普通ですからね~」
 「オラ、ハヤト!!! なんでもいいから試しに乗ってみろや。ちょこっとだけでいいからよ」
 「ああ、うん。それじゃあ──」
 自信なく頷いて、それからオレはおそるおそる足を置いたペダルを漕いでみようと試みた。

 今日はここ、鬼浜寺でオレのための特訓が開催されている。
 敷地内の、お墓参りに来る人のための駐車場がオレの鍛錬の場だ。平日の夕方とあって、車の姿はひとつもなかった。
 特訓の目指すところはオレが自転車に乗れるようになること、この一点。
 子供の頃から単位=馬力の二輪車にしか馴染みのなかったオレが、単位=自力──しかも決まって1人力だ──の二輪車に挑戦することになった経緯は、手っ取り早く言えばプライドと嘘をつかない意志のたまもの。

 とにかくオレは3人に見守られながら、サドルに腰掛けて右足をペダルに乗せた。
 ペダルを動かすと、それにつれて車輪が前に進む。
 「あ、動いた」
 「当たり前だろ!!! だって動かしたんだからよ」
 「そりゃリュウジには当たり前かもしれないけどさ。オレには馴染みがないから」
 「ハヤト。しゃべっていると危ないぞ?」
 「そうっスよ~。いいから、ほら、左足も地面から離して」
 ノブオに言われて、オレはちょっと悩んでから右足も地面に戻した。

 「左足もって、どのタイミングで離せばいいのかわかんない。だって、両足とも地面から離したら確実に転ぶよな?」
 「だからハヤト、転ばねえように漕ぐんだろ? 漕いでる限りは倒れねえもん。ちょっと貸してみろ」
 言ってリュウジはオレを自転車から降ろして、自分がサドルに跨った。
 「ほら、こうだろ? で、ちょっと進んで勢いついたらこんどはこっちの足をペダルに乗せて──でもって、こんな感じだって」
 鮮やかに──とオレには見えた──リュウジが自転車を操るさまを見せつけられて、オレは感心してしまった。そのまま駐車場を大きく一周してもとの位置に戻ってくる。

 「お~、リュウジかっこいいな」
 「わはははは、これが普通だぜ。なあ、ダイゴ? ノブオ?」
 「その通りっス。ああ、でも兄貴はかっこいいっスけどね~」
 「押忍。ハヤトは理屈で考えすぎているのでは? 理屈が先行する歳になってからだと確かに大変かもしれんな。体が覚えれば大したことはないのだが」
 「うん。そうは思う。転んじゃいけないって意識あるからね」
 ほんとにこれって、子供時代に覚えておくべきだったよな。ちきしょう、親父め。

 「でもハヤトさん。誰だって最初は転びますからね~」
 「ノブオの言うとおりだぜ!! 転ばなきゃ覚えないからな」
 「そっか。そうだよな」
 「第一、転んだとこで大したダメージねえだろ? 自転車の練習にライダースーツ着用なんて聞いたことねえぜ、俺」
 「あはははは。だって、安全だろ? リュウジ」
 たしかにリュウジの言ったとおり。オレのいでたちはつなぎのライダースーツだ。ほんとはメットとグローブも持ってくるかどうかも悩んだとこだった。
 「けれどもいきなり転ぶことを念頭においては辛いだろう、ハヤト。俺が後ろを支えておいてやろう」
 ダイゴがそう言って、自転車のリアに手を添えてくれた。
 「ほら、これなら転ぶ心配はないので」
 「ありがと、ダイゴ。なんか安心だな」
 それじゃあ気を取り直して、ということで。

 ダイゴが後ろを支えてくれているという安心感があったから、それからの練習はそれなりに進んでいった。
 「右足を乗せて、ちょっと漕いだら左足──と」
 「そうだ、ハヤト。両足を乗せたら間を空けずに漕ぐ」
 「了解、ダイゴ」
 全身の筋肉が硬くなっているのを感じた。視界は極端に狭くて、まっすぐ前を見る余裕しかない。
 おそるおそるペダルを漕ぎ進むオレ。太股に不自然な力が入っている。
 すこし離れたところまで来たころには、なんだか汗ばんでいるのを感じてた。
 
 ダイゴについてもらってよたよたと自転車を操って、どうにかこうにか駐車場を小さめに一周してもといたところに戻ってきて一旦停止。
 緊張のせいか、心臓がどきどきしてる。
 「ハヤト!! ちっとは速度上げてけや。あんまゆっくりだとそれだけ倒れやすいぜ」
 「え、そんなもんか? だってスピード出したらいざって時に止まれないだろ?」
 「ダメっすよ、いざって時のことばっかり考えてちゃ。いいっスか、ハヤトさん? 自転車乗れるようになるまでって誰でも痛い思いをするもんなんですから」
 「そう……だよな、ノブオ」
 自転車道の先輩たちのアドバイスを受けて、オレはいちいち頷いた。
 頭には入ってくるけど、体に解らせてやるにはもうちょっとかかりそうだな。
 「よし。ではハヤト。今度はもう少し速度を上げてみよう。大丈夫だ、お主は最速なのだろう?」
 「あはは。まあね。単車だったらちょっとはね」
 「押忍。それは幸いだ。そのスピード感を思い出せばいい。エンジンの代わりがおのれの足になっただけゆえ」
 「え~と、チューンするのに時間かかってもいい?」
 冗談めかして言ってみた。まあ、お許しはもらえなかったんだけどね。

 ダイゴについてもらって駐車場を何周かして、なんか肩が凝ったなって思ったころに一旦小休止を挟んでもらって。
 それから、今度はダイゴに代わってリュウジが後ろについてくれた。
 そしたら──リュウジってばスパルタで。
 駐車場を半周したとこで違和感を感じたから後ろに向かって話しかけてみた。けど、反応なしで。
 あれ、って思ったときには遅かった。
 「って、うわ~!!!」
 ……転んだ。しかも派手に。
 
 「リュウジ、なんで手を離すんだよ……」
 オレは擦りむいた手の甲を舐めながらリュウジに言った。
 「わはははは、それが愛の鞭ってやつだぜ!!!」
 「うわ、兄貴の愛の鞭!! ハヤトさん、幸せ者っスね~」
 「……どうもね、ノブオ」
 「けれども推定5mは直進できていたな、ハヤト」
 にこりと頬を緩ませて、ダイゴが褒めてくれた。
 「だろう? これくらいしねえとダメだ、こういうのは。ダイゴ」
 「押忍、リュウジ。肝に銘じておこう」
 「ええと、せめてダイゴには優しくしてほしいんだけど……」
 「甘えちゃダメっス、ハヤトさん!!!」
 「はいはい、了解」

 そんなわけで、練習は暗くなるまで続いたんだ。
 本日の成果は──転倒6回。頬とか、ライダースーツにかばわれていないところにいくつも擦り傷作ったよ。
 
 

テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

あーわかる

頭ではわかるけど、体がいうことをきかないって。
私にとってはスノボーがそうだったなぁ。
人並みに滑れるようになるまで、どれだけかかったことか!
私「運動オンチ&理屈っぽい」のダブルパンチなもんでw

自転車の練習において
後ろで支えてる手を離すのって基本ですよねぇ(笑)
リュウジがやらないわけがない!

>>ピノコさま

わたし、ほんっとに運動ダメでねえww 
体育は5段階で設定1でした。ホントに。
逆上がりも跳び箱もバレーボールもからっきしダメなの。だはは。
ほんっと小さい頃(幼稚園に上がる前)に自転車覚えて
おいて助かった!!!
スノボは……ムリだな、絶対。とほほ。

>リュウジがやらないわけがない!
はい喜んで~!!! みたいな感じかと(^^:)

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