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カッ飛ばせ!! 5

 試合はいよいよ終盤。7回裏に暗黒水産が2点入れて、ついに逆転を許した。
 8回は両者無得点に終わり、9回表もノースコア。

 ついに迎えた最終回。スコアボードは5-4──1点のビハインドで臨む9回裏、鬼浜工業の最後の攻撃だ。

 「おめえら、ここで声出さなくてどうすんだ!!!」
 「オ~ス!!」
 「全開でいけや!!!」
 「オ~~~ッス!!」
 「ほ~れカッ飛ばせ~い、オ~ニハマ~!!!」
 「カッ飛ばせ~、オ~ニハマっ!!」
 リュウジに唱和する我が鬼浜の面々たち。
 すっかりこの場はリュウジが仕切ることへ、すでに誰もが疑う余地もなかった。

 先頭は1番打者──ノブオの同級の投手だ。彼が森園主将のサインを受けて初球打ちで出塁に成功した。
 続く2番打者の犠牲フライで、1番打者は2塁へ進む。

 迎えた1アウト2塁で、打席に向かうのは3番打者。
 「ね、ハヤトさん。知ってます?」
 「ん? 何だ、ノブオ」
 「あの打者、赤石さんっていうんですけどね」
 ノブオが指さした先には、後ろ髪を伸ばして束ねた細身の男がいる。
 しかし鬼工野球部は、森園主将からしてそうなのだが、ちっともスポーツマンらしからぬ風貌の奴ら揃いだ。

 「ダイゴさん、同級でしたよね?」
 「おう、いかにも」
 ちょうどダイゴが太鼓の手を止めた瞬間にノブオが水を向けた。
 「で、赤石さんね。伝説の勝負師の血統なんですって」
 「は──?」
 「まあいいから。見ててごらんなさい」
 人差し指で鼻の頭をこすりながらノブオが言った。
 何やらわからないまま、オレは打席を凝視する。
 「あの人、きっと何かやりますぜ」
 
 「なんだノブオ。お前さっきからやたらと詳しいな」
 何本か素振りをする赤石とノブオを交互に見て、リュウジが言った。
 「へへっ、でしょ~? 兄貴。オレ、今日のために勉強したっス」
 誇らしげなノブオをよそに、審判の「プレイ!」の声が微かに聞こえてきた。

 リュウジが声を張り、従うオレたちも声の限りにエールを送る。
 ダイゴも力強く太鼓を鳴らす。
 男たちの怒号がスタンドを揺らす。
 
 そして──ノブオの言うところの「何か」がやってきた。
 勝負師の血統という赤石の放った痛烈なファウルボールは、またしても狙い澄ましたかのように暗黒の応援席の隅を掠め──

 「あ──れ?」
 「ああっ、また誰かに打球が──!!!」

 そもそも今日、奴はついていないだけに違いない。
 今度はオレにもはっきり見えた。
 ファウルボールの描く放物線のなれの果てにあったものが、どこかで見慣れたピンクのモヒカンだったことが。

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