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自転車狂詩曲 4

 夕方までの特訓を終えて、リュウジとノブオは自宅へ引き上げた。
 オレは自在に自転車を操れるようになるまで家には帰らない覚悟で出てきたから、そのままダイゴのところに泊めてもらうことになっている。
 
 風呂を借りたら、傷がお湯に沁みた。
 傷がないところも痣ができていたり、やけにいろんな筋肉が張ったりしてるのがわかる。
 それから図々しくも夕飯をご馳走になって。

 そして今、ダイゴの部屋に到着したところ。
 「ああ、なんかダイゴの部屋って久しぶりに来たかも」
 「そうだったか? ああ、大勢のときは広い部屋へ通ってもうらうからな」
 「うん。夏にみんなで押し掛けたときもそうだったしね」
 居心地がよくて落ち着くダイゴの部屋。
 しっかりと片づいていて、物が少ないわけじゃないけれどすっきりした印象だ。
 
 「相変わらずきれいにしてるなあ、ダイゴ」
 「うん? そうだろうか」
 「オレの部屋なんかとんでもなく荒れてるもん。ガラクタとかおもちゃとかつい増えるから。でもまあ、リュウジのとこも大差ないけどね」
 「ああ」
 と言ってダイゴはちょっと笑った。
 「リュウジのところは、あれは物が多すぎるのだろうな。雑誌とかな」
 「そうそう。捨てられないらしいんだよね、雑誌。暇つぶしに買ったどうでもいいやつもなかなか捨てられないって言ってた」
 「わかるような気もするな」
 「でもって、必要なものはしまい込んで見つけられないんだって」
 そう言いながら、そんなリュウジの姿を想像して吹き出した。ダイゴもつられて笑ってる。
 
 「その点、ダイゴは見上げたもんだね。几帳面でさ」
 「そうか? まあ、そういう性分なのだろうな」
 オレが見つけたのは、本棚に並べてある小学校からの文集の列だった。
 「こんなのも、ちゃんと古いのから順番なんだよね、きっと」
 「ああ。おそらくそうなっているな」
 「ちょっと見てもいい?」
 ダイゴが頷くのを確認してからオレが適当に手に取ったのは、小学校5年生のときの文集だった。表紙には『希望』って題字が書いてある。
 「おう、懐かしいな。置きっぱなしにして久しいから。そうだ、5年生だとリュウジの作文も載っているはずだな」
 「へえ。同じクラスだったんだ」
 「押忍──ああ、これだ」
 ページをめくるダイゴの太い指が止まった。示す先は、やたらと大きな字で書いてある元気のいい印象の文章。
 「どれどれ」
 オレはダイゴと首をつきあわせて、リュウジの作文を読んでみた。
 
 『こないだ会ったなまいきなやつ』
 ふつう文集ってのは将来のゆめとかそんなのを書くもんだけど、おれはそんな遠い未来とかには今はきょうみがない。
 そんなことより、こないだあったわすれちゃいけねえことを書きのこしておきたい。
 ダイゴといっしょに学校から帰るとちゅう、おれはそいつに会った。
 そいつは別の学校のやつで、はじめて会ったのに、いきなりおれをにらみつけてきた。
 おれは「なんか用か」って聞いたんだけど、そいつはおれを見てにやにやしてた。
 それで、「用がないんだったらそんなふうに見るな」って言ったら、そいつは「ぼくに命令するつもりなのか」とか言って、急になぐりかかってきた。
 なんかよくわかんないまま、けんかになった。
 おれだって頭にきてたからがんばったんだけど、そいつもけっこう強かったんで決着がつかなかった。
 そしたらダイゴが「まかせておけ」って言ってくれて、そいつに、じゅう道のわざをかけてくれた。おれとそいつはおなじぐらいの強さだったけど、ダイゴはもっと強かった。
 それでそいつはにげてった。おれはダイゴをそんけいした。
 おれが言いたいことは、ダイゴは強いっていうことと、それから意味もわからずに他人をにらみつけたりそういう人にだけはなるもんかっていうことだ。
 けんかしちゃいけないってことじゃない。
 ただ、無意味にけんかを売るような男にはなるもんかって思った。
 それでもって、いつかはだれにも負けない、ダイゴにだって負けない強い男になってやる、ってそのときそう決心した。だからあのなまいきなやつと会ったことは、おれにはいいことだったのかもしれない。
 大きくなったらどういう人になりたいかと聞かれたら、おれはこう答えることにする。
 おれは、男の中の男になりたい。

 「へえ。男の中の男か」
 ひととおり読み下したオレは、小学生らしく平仮名ばっかりの大きな字で書かれた作文にリュウジの過去を見た気がしてた。
 「こんなことがあったんだ、ダイゴ?」
 「あったのだろうな。記憶にはないが」
 「ふうん。そう」
 「けれどそういえば、ある日を境にリュウジは逞しくなったように感じたな、俺は」
 「じゃあこれがきっかけだったんだ、きっと」
 「そうかもな。実際その頃、柔道技もいくつか教えたことがある」
 「なるほどね。転機ってやつだ」
 「押忍。おそらくは」
 とはいえ、リュウジがこのことを今でも覚えているのかどうなのか。
 何にせよ、小学生時代のリュウジを垣間見たオレの感想は──
 「リュウジって変わんないね。今でも」
 「そうだな。あの性分は一生ものだろう」
 ダイゴと頷きあってみた。

 「でさ、このなまいきなやつってのがさ、もしかしてコウヘイだったら笑うよな」
 とか言ってみたら、ダイゴが難しい顔をした。
 「案外そうかもしれんぞ、ハヤト。しかもコウヘイのほうは覚えていたりするのかも」
 「あはははは。コウヘイ、執念深そうだからね」
 とか冗談交じりにオレは笑ってみたけど、ダイゴはひとり神妙な顔をしてた。

 それからオレは、めくった次のページにダイゴの書いた作文を見つけた。
 いつも冷静なダイゴなのに、その時はあわててオレから文集を取り上げようとしたのがおかしかった。
 「なんだよ、そんな恥ずかしがることじゃないだろ?」
 「いや──やはり照れるので」
 「いいじゃん。リュウジのだけ読んだのがリュウジにバレたら、きっと怒るよ?」
 「そうか……」
 いくぶん視線を外したダイゴは観念したみたいに、オレの好きにさせてくれた。

 ダイゴの書いた作文は『写経と柔道』って題がついてた。
 どっち心を落ち着けてやらないといけないから、お互いにいい作用を及ぼしあっていると思われて、とてもいい修行になるっていう内容だった。
 達筆なのは子供の頃からだったみたいで、文章も整っていた。
 ぜんぜん記憶ないけど、オレはこれくらいの頃どんな作文を書いていたんだろう。なんとなく郷愁を呼び覚まされる感じだ。
 よし、オレも家に帰ったら押し入れを探してみようかな。
 その為には自転車に乗れるようにならないといけないんだよな……。
 急に現実に引き戻されたオレは、昔のリュウジみたいに頑張ってみようかなと思ってた。


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コメント

チャリがのれなかったとわ・・・

ハヤト・・・自転車おしえてあげるよ・・・お姉さんがw
なんなら2ケツでのせてあげるよ・・・お姉さんがw

先日Ritsuと歩いていた時に子供とおかあさんが2台ならんでチャリチャリ・・・
すると子供は10mすすんでは歩道ワキの植え込みにドーーーーーン。
また10mすすんではドーーーーーーーン。。。
気づくとおかぁさんは遙か先。。。
ちょっとナキソウな子供をRitsu隊長は救出にwww
かわいぃな~っとおもったけど・・・
あのチャリどうみても子供のサイズにあってない。
ちいさすぎたんですw補助ペダルついてたけど子供はどうみても10歳前後。。。
おかぁさんが戻ってきて御礼をいわれてふっとみるとおかぁさんのチャリに妹がのってましたw
どうやら小学生のお兄ちゃんは妹のチャリで出撃していたらしくそりゃドーーーーーンだwっとナットクでしたw

>>Tohkoさま

だはははは。Tohkoさんやさしいなあ(=^▽^=)
2ケツでのせてあげるんだww
甘やかしちゃダメだってば。

目撃談。
すっごい笑った (*^-^)b
連発でドーーーーーーーーーーン!!! かあww
なんかこう、目に浮かぶようですな、その光景。
Ritsu隊長って、やさし~い♪
自転車のお兄ちゃんも妹への優しさからそんなことに
なったのかな?
きっと大きくなったらRitsu隊長みたくなるね~。

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