目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

自転車狂詩曲 6


 「おし!!! そんじゃ外へ出てみるか。特攻隊長」
 ノブオが落ち着いてから、リュウジがオレにそう言った。我知らず心臓が高鳴る。
 「あ──ああ、そうだね。うん」
 「何だよハヤト。弱気じゃねえか? 特攻っつったらお前の得意分野だろ?」
 「特攻……いや、こっちはまだ経験浅いからさ。でも本気で特攻かけたらオレ、何しでかすかわかんないよ?」
 「わはは!!! いいじゃねえかよ。それで度胸つけろや!!!」
 リュウジに背中をどやしつけられたんだ、オレ。
 いいのか──? 仮免のオレ、本当に特攻なんて、いいのかな……。

 オレの自転車修行もようやく終盤に入ったみたいだ。
 それぞれ自転車に乗ったリュウジとダイゴ、タカシの3教官に連れられて、オレは教習所──ダイゴの家だけど──を出て、ついに町の中へ自力で自転車を漕ぎだした。
 いつも単車で走るときみたいにリュウジの先導でオレが続く。今日はダイゴとノブオがオレの脇についてくれる。
 「ハヤト、無理せんでいいから」
 「うん、ダイゴ。ありがとな」
 「あ、ハヤトさん。その先右ですよ。曲がり角、ちょっと段差っス」
 「了解、ノブオ」
 左右から言われるのに答えるだけで、オレは精一杯だ。
 もちろん話しかけてるふたりの顔を見てる余裕なんか皆無。

 「ハヤト、どうだ? 路上は」
 振り向いたらしいリュウジが訊いてくれたけど、やっぱりオレには余裕がない。その顔を見ることは叶わずに、声のする方向からそれを推量しただけ。
 「どう、って……。なんか緊張する。こんなとこで転ぶの嫌だしね」
 「いいじゃないっスか。転んだってオレらが慰めてあげますよ、ハヤトさん」
 「いや、慰めとかそういうのはどうだっていいんだよ、ノブオ」
 ノブオの軽口に適当に答えるのが関の山なオレ。
 「でも、たまにはみんなで自転車も悪くねえよな。なんつったって、走りながらしゃべったりできるしな。単車と違って」
 「押忍、リュウジ。けれどもまあ、ハヤトはその領域にはまだまだだがな」
 「ホントっすね~、ダイゴさん。だってハヤトさん、おでこに汗かいてますもんね」
 「も~~~、オレは一生懸命なんだよ!!! ちょっとは放っておいてくれってば」
 「わはははは、ハヤト怒ってるぜ!!! 珍しいな」
 …………。いいんだ、もう。オレはオレの道を行くから。
 転んだら前も左右も道連れだから。

 路上教習のコースは、いつも単車で流すルートと同じようなものだった。その順路を車道ではなくて、路肩を走る。
 ここまではさすがに転んだりはしなかったけど、町中を抜けて海沿いの国道へ出るころにはオレはもう全身の筋肉が硬直してた。
 「リュウジ、オレ疲れた……」
 「ん? そうか? まだいくらも走ってねえけどな?」
 「しかし無理もないのではないか? ハヤトは初めて外を走るのだから」
 「兄貴、ちょっと休みません? さすがに辛そうっス、ハヤトさん」
 「そうだな、ノブオ。そうしてやるか。こんなとこでギブアップされたら困るもんな」
 「……悪いね、みんな」
 オレは詫びを口にする。目はまっすぐ前を向いたまま、誰の顔を見ることもできなかったけど。

 「おっしゃ!!! んじゃ河原で一息つくか」
 ちょうど川の手前の信号で停止したときに、リュウジがそう言ってくれた。
 国道を川に沿って左折すると、道は町に続くなだらかな坂。
 それから逸れた本道ではないほうを選ぶと、河川敷まで続く少し急な坂道だ。
 「ハヤト。先は坂道だが平気か? 初めてだろう?」
 オレの左でダイゴが言った。
 「坂……ね。うん。大丈夫じゃない? ゆっくり走れば」
 「ハヤトさん。坂道はいつもブレーキに手を添えてたほうがいいっス」
 「ノブオ!!! 違うだろ? 下り坂は全力疾走だ。ノーブレーキが漢を磨くんだぜ」
 リュウジが人の悪い笑い顔を見せて、こんなふうにアドバイスしてくれる。
 「あ、兄貴っ! そりゃ、オレ自身だったらもちろんノーブレーキっス!!! ただハヤトさんにはまだ……ねえ?」
 「ええと……オレ、いいや。この際、漢になれなくっても」
 「そんな弱気でどうすんだ、特攻隊長ともあろう者が」
 って、面白くなさそうな顔しないでほしいなあ、リュウジ。
  
 青になった信号を渡って、オレたちは海を背にした方角へと走り出す。
 路肩の幅が狭いから、今度は4人で一列になって道を行くことになる。
 オレの後ろからダイゴが声をかけてくれた。
 「坂に入ったらペダルは漕ぐなよ、ハヤト。自然に進むゆえ」
 「あ、そうか。危なかったなあ。ありがと、ダイゴ」
 ついうっかりするとこだった。ペダル漕がないと転ぶって意識があったからね。
 オレは両手でブレーキをすこし握りながら坂を下る。
 ノーブレーキ派のリュウジもノブオも、オレにつきあって速度を落としてくれている。

 町へ続く本道を逸れて、河川敷までの急な坂に入った。ここから下りる道は舗装されているからなんとか行ける。下りきったら砂利だから、そこがゴールだろう。
 先頭のリュウジの後ろでおっかなびっくりハンドルを握るオレ。
 よし、ここを抜けたら休憩だな──っていう一瞬の気のゆるみがあったのが災いした。
 がこん、と前輪に衝撃を受けた。大きめの石かなんかに乗り上げたみたいだ。
 予期しなかった感覚にオレは慌ててしまう。
 よろけた体勢を立て直そうとするのに意識をとられて、ブレーキから手を離してた。
 しかも前輪の向いた方向が、前を走るリュウジを巧く交わす向きだったもんで──

 「オイ!!! ハヤト、どうしたんだ? 急にスピード出すなや!!!」
 リュウジの声がオレの背中にぶつかってきた。
 ブレーキを解除したオレのマシンはリュウジを追い越してた。
 嗚呼、単車だったら絶対こんなふうにはならないはずなのに。
 こんなミスをオレが冒すはずがないのに。
 わざと転んででも止めたほうがいいんじゃないか?
 ああ、そうか、ブレーキか。そうだった──って、もう遅い!!!


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 自転車狂詩曲 7 | ホーム | 自転車狂詩曲 5 >>


コメント

ノーブレーキ(笑)

あひゃひゃひゃ♪わかるわかるー!
私も下り坂はノーブレーキッ!このままどこまで
漕がずに行けるかなんて朝飯前っすよ!
あと、赤信号もペダルとハンドルの微調整で
絶対地面に足つかないの(笑)

あーでもまだハヤトには無理かぁ。
(っていうか小学生レベルだろッ、それw)

可愛いっ

こんばんわ、華丸様。
特訓も佳境に入りましたね。
自転車ってこんなに大変だったかな?と昔を思い出そうとしましたが、
余りに昔過ぎて覚えてませんでした(笑
私も坂道はノーブレーキ派です!
段々風が強くなって気持ち良いんですよね~
読んでいて、ふとそういえば単車と違って身体倒しても曲がらないよな…
でもハンドル切ったら倒れるよな…等と考えてしまいました(笑
ハヤト卒検まで後1歩ですね?

>>ピノコさま

>私も下り坂はノーブレーキッ
かなりのやり手と見たよ、ピノコさんww
さすが現役はチガウ!!!
つーか、わたし恐がりだからムリっス(>_<)

>あーでもまだハヤトには無理かぁ
うん。ムリ。
でもウチのハヤトは絶叫マシンが苦手だから、きっと
ちゃんと乗れるようになってもムリ。かもww

ピノコさんの小学生魂に……敬礼!!!

>>単savaさま

>余りに昔過ぎて覚えてませんでした(笑
ええ、モチロンわたしも記憶にありません。だはは。

>私も坂道はノーブレーキ派です!
え~、みんなやるなあ(^^:)
度胸あるなあ……ww

>単車と違って身体倒しても曲がらないよな
単車乗る人って、たま~に自転車乗るとコワイって
言ってたの思い出して。
きっとこんな感じかな~、と(^-^)
違ったらすませ~ん!!

>>華丸様

全然違わないですよ。
単車に限らず原チャリもハンドル切っても曲がらないですよね。
足揃えて乗るタイプの原チャリって、
身体倒すの怖くないんでしょうか~

>>単savaさま

あってました?
よかった~(^^:)

たしかに原チャリ、コワイですわ。
わたし乗れない……。
友達に教習受けたけど路上には連れてってもらえ
なかったよ。だはは。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。