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自転車狂詩曲 7


 いっぺんににいろんな思いを交錯させたオレの思考は、次なる衝撃に一旦回路が切断された。
 どこにどう突っ込んだんだかわからないけど、何かにぶつかってオレの自転車は動きを止めたことは理解できた。
 反動で、オレのカラダは一瞬宙に浮いたような気がした。
 転んだどころの騒ぎじゃないな、これは。
 自転車って危険な乗り物だな、ってオレはおぼろに思ってた。
 近寄ってくる聞き覚えのある声はどれも慌てた感じでオレの名を呼んだりしていた。

 とにかく起きあがろうとして、なぜか閉じてたまぶたを開いたオレ。
 そうしたオレの瞳に映ったもの──それはあろうことか、鬼工の紺色とは違う、黒の学ランを着た誰かの背中だったんだ。
 その背中越しに見えるのは、自転車を降りたリュウジの姿。
 ふたりは距離を置いて向かい合っている。ああ、これってよく見る光景だ。

 「ゴラァァァ!!! 貴様等、一体これは何の真似だ?」
 「済まなかった、コウヘイ。これは事故だ。故意じゃねえぜ。ちゃんと謝る」
 リュウジが言った。学ランの背中の主──コウヘイは、それに構わず体の向きを変えて、転んだままのオレに視線を移した。
 「ちっと会わねえうちに、不意打ちとは卑怯な技を覚えやがったな、特攻隊長」
 「いや、そんなつもりじゃない。悪かった」
 「やる気なら正面からかかって来いやァァァ」
 
 リュウジとちょうど入れ違いで盲腸を患って入院してたコウヘイが退院して、たしかそろそろ4、5日ってとこだ。
 あと3日もしたら挨拶しねえとな、ってリュウジが昨日言ってたな。
 その頃には傷跡も痛まないだろう、って。自分の経過と照らし合わせて、そんなふうに。
 偶然とはいえ、結果的に久々の対峙となった暗黒一家総帥のコウヘイは、前にオレを殴りつけたときと変わらぬ気迫でオレを見た。
 手には愛用の木刀。ってことはもう元気になったんだな、なんて思考回路のオレ。さっき頭でも打ったかな。
 
 どうやらオレは、坂を下りきったところの段差に引っかかって転倒して、勢いで自転車からすっ飛んだ体をたまたまそこに居合わせたコウヘイに激突させてしまったんだそうだ。見ていたダイゴがそう教えてくれた。

 事故だとリュウジが説明したけれど、さすがに怒ったコウヘイは聞く耳を持ってはくれない。当たり前だとは思うけど。
 額に青筋を立てるコウヘイ。脇にはハンゾウたちいつもの面々が控えていて、奴らは一触即発の状態で──
 「とにかくハヤトは単車ほど自転車が巧いわけじゃねえんだ」
 「そのような苦しい言い訳が通るほど俺が甘いとでも思うか? リュウジよ」
 「だけど真実なんだから仕方ねえだろ?」

 睨み合うリーダーふたり。
 相次いで盲腸で入院したリュウジとコウヘイが間近で対峙するのは、両者の退院後初めてのことだった。
 嗚呼、こんな場面でオレときたら起爆剤なんかになるつもりはなかったんだけど……。
 「いいんだ、リュウジ。オレが悪かったんだからオレが謝ればいいんだろ?」
 オレは言ったけど、コウヘイはすかさずこう返す。
 「謝って済むほど鬼浜町が平和だとでも思っているのか? 特攻隊長」
 にやり、とコウヘイは白い頬に笑いを浮かべる。予想通り次の言葉はこれだった。

 「そんなにやりたいのなら相手してやる。いつぞやの約束とやら、ここで果たしてもらおうか? 来い、リュウジ」
 「いや──だが、コウヘイ。俺は……」
 「何だと?」
 リュウジの前に進み出たコウヘイが低く言う。
 「貴様の部下の失態だ。貴様が責任をとるのが定石だろう?」
 言いざま、コウヘイは木刀を素早く構えて地面に叩きつけた。
 「勝負だ、ゴラァァァ!!!」

 リーダー同士に勃発した対決を止められるような者は、どちらの軍勢にもいない。
 オレもダイゴもノブオも、黙ったままゆくえを見守っている。
 対する暗黒側も同じだ。けれどもハンゾウがひとりだけ、一瞬コウヘイの背中に声をかけようとした──が、コウヘイに一瞥されて思いとどまったようだ。

 コウヘイは猛り狂う炎のようになっている。
 すでにコウヘイの目にはオレが映る余地はなかったようだ。
 目の前に立つリュウジのみを捉えたその視線の先で、リュウジはなんだかいつもの対決のときとは違う表情をしていた。
  
 真正面で間合いをとるリュウジとコウヘイ。
 久しぶりに見る光景に、オレたちは息を呑む。
 「ふん、思い知るがいい」
 言うが早いかコウヘイはリュウジめがけて殺到した!! 手持ちの木刀を振りかざして、リュウジの位置に振り下ろす。
 きわどいところでリュウジはそれを避けて、腰を下げた体勢でコウヘイに叫ぶ。
 「オイ、コウヘイ!! お前、まだ──」
 「私語は慎め。真剣勝負の最中だ」
 コウヘイは声を辺りに響かせる。同時に今度は、木刀を捨てて素手でリュウジに躍りかかっていった──!!!

 応戦するリュウジが拳を握る。
 最初の一太刀はリュウジが受け身だ。頬に喰らったけれど、倒れずに持ちこたえる。
 握ったおのれの拳で頬を拭って、リュウジは観念したような表情を見せてコウヘイを見据えた。
 「お前、そこまでして──それじゃ仕方ねえな」
 忌々しげに低く言ったリュウジが、今度は仕掛ける側だ。
 一歩前へ出て間近でコウヘイを捉えて、素早く後ろに振りかぶった拳を顎へ見舞う。
 「ぐ……ッ」
 食いしばった唇の端から血をにじませて、コウヘイは呻いた。
 とは言え、こちらも百戦錬磨のつわものだけあって倒れるようなことはなかった。

 互いに一撃ずつを与えあった両者は、再度立ち位置を正面に戻して向き合った。
 どちらももう、口を開かなかった。無言の対峙が時間の流れをゆるやかにする。


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コメント

コウちゃん…

こんばんわ、華丸様。
嗚呼、ぶつかってしまいましたね~
待ってましたとばかりにタイマンに持ちかけるあたり、
病院ではさぞ退屈でオネーサン達に可愛がられて
ストレス溜まっていたのでしょうな(笑
しかし、ハヤトってば勢い良くすっ飛んだものですね~(笑

>>単savaさま

コウちゃん……呼び名、気に入ってもらってますなwww

>病院ではさぞ退屈でオネーサン達に可愛がられて
だはははは。
あんま想像つかないだけにおかしい (´∀`)
おねーさんに免疫なさそうだらな。コウちゃん。

>ハヤトってば勢い良くすっ飛んだものですね~(笑
ええ。
特攻隊長ですからっっっっっっ!!!

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