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自転車狂詩曲 8

 
 そう言えば──オレは考えていた。
 コウヘイは退院してからまだ一週間も経っていない。リュウジのときのことを照らし合わせてみれば、まだ通院してるんじゃないのか?
 仮にリュウジがコウヘイの腹を狙ったらここは簡単に切り抜けられるだろう──いかに精神力が強かろうと、通常ではない肉体が訴えればいかなコウヘイでも折れるはず。
 けど、リュウジがそこを狙うとは思えない。 
 ただでさえ弱みにつけ込む漢ではないのに加えて、自分の体をもってして、敵の状況を知っているはずだから。

 多分、オレのそんな物思いは当たっていたんだと思う。
 次にコウヘイが狙ったのはリュウジの腹だった。
 リュウジはそれを受けても大したことはない様子──というか、いつも通りの痛み方をしただけだった。
 見ていたオレも、ダイゴもノブオも上げかけた叫びを押しとどめられたから。
 
 リュウジのそれへのカウンターは、思った通りコウヘイの腹ではなかった。
 執拗に顎を狙っている。さっきと同じ箇所への攻撃だ。
 さすがに2度目は、コウヘイにも効いたようだった。
 逆にそれが、コウヘイの怒りへ油を注いだらしい。
 「貴様──」
 吐いた唾には血が混じっていた。

 「こんな悠長な闘いなど、俺は望んではいねえぞ!! 全力で来いやあああああ!!!」
 叫ぶなり、コウヘイは素早くリュウジの懐へと躍り込んでいった!!
 リュウジはまたしても腹にコウヘイの拳を受けて──結果、ついに河川敷の砂利へと背中をついた。

 避けようとすれば避けられた間合いだった──少なくともオレにはそう見えた。
 けれども避ける気がないって感じでもなかった。
 そう、言うなればリュウジは一瞬ためらったような顔をした、そんな気がした。
 喰らうつもりで喰らったのではないと思う。
 ただ、なにがしかの迷いがあったから交わせなかったとでもいうような。

 「貴様、どこまで俺を馬鹿にすれば気が済むのだ?」
 上半身を起こしかけるリュウジに、冷ややかな言葉をコウヘイは投げた。
 リュウジは何も答えない。
 「故意に受けて故意に倒れるなぞ、俺が解らないとでも思っているのか?」
 「何を──コウヘイ」
 「ふん。さっきから黙っていれば。リュウジ、貴様いま本気ではなかったのだろう?」
 「…………」
 「俺はなあ、そういう手加減こそ一番腹が立つのだ。何度言ったらわかる? 俺は貴様と、久しぶりに真剣に手合わせしてえんだぞ、ゴラァァァ!!!」
 
 コウヘイの顔をみれば、それが強がりだとは思えなかった。
 敵の病後を気にしているのが明らかにわかるリュウジは、慮った相手に罵倒を受けて奥歯を噛み締めるような顔になる。
 そして──
 「オウ、解ったぜ、コウヘイ。俺が間違っていた」
 一段と低いトーンでリュウジは応えた。そう──それは凄惨な覚悟を秘めた声だった。
 
 両者の間の空気に漂うものは、緊張と互いの自尊心だった。
 同病を患って先に快復したリュウジの遠慮も、ただいまの闘いの発端となったコウヘイのオレへの憤りも、いまとなっては完全に消し飛んでいるように思う。

 リュウジは先程までと較べものにならない鋭い眼光でコウヘイを見遣り、対するコウヘイはそれを受けて、心底好戦的な表情を浮かべている。
 まるで、久々の対峙を楽しんででもいるようなふたりの雰囲気。
 見守るオレたちも、また対面を陣取るハンゾウたちも絶対に立ち入れないような「気」がそこには確かにあった。

 「ふん。かかって来やがれ、リュウジ」
 「言われるまでもねえぜ!!! 望みどおりやってやる」
 リュウジもコウヘイも、あとは何も語らなかった。
 ただ、見ている者たちへは長く長く感じられる時間を、勝負者ふたりは瞬間に魂をこめて立ち回っていた。

 リュウジの拳が風を切る音をさせて、コウヘイに躍りかかる。
 それへ反応して、コウへイは横っ飛びに立ち位置をずらすけれどもリュウジもそれを予想していたようで、拳はコウヘイに追いすがる。
 とはいえ勢いは減じていたらしくて、大したダメージを与えるには至らなかった様子。
 対するコウヘイの反撃は、今度はリュウジの頬へ向かう。
 見切るなり、リュウジは自らの掌で敵の拳の威力を削いだ。
 攻めつ守りつの構図。力が伯仲しているのがわかる。
 川からの風は冷たくオレたちを責める。けれども対戦中の両者の周囲には、陽炎が見えるような気がした。

 幾つかの攻防が展開したあと、リュウジは眉間に皺をよせて大きくひとつ頷いた。
 これ、覚悟が決まったときの顔だ。
 見るや、リュウジは後ろへ大きく一歩退く。そして──
 「いくぜ、コウヘイ!!!」
 辺りに声をこだまさせて、リュウジは勢いをつけてコウヘイに挑む。
 そのリュウジの目の色から出方を読んだかのように、コウヘイは腰の位置を落とす。
 受け太刀一方では済ますまいという表情が見て取れる。
 
 迎えた次の間合い──
 両者はどちらも決して体を退かず、ただおのれの攻撃力のみを頼みにして錯綜した。
 肉を打つ、響きのない音が風にさらわれることなくオレの耳を打つ。
 目をそむけてはいけない。これがオレたちの総隊長、漢・リュウジの生き様なのだから。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

うひょ~

こんばんわ、華丸様。
カッコいい展開ですね!
ぶつかり合う拳と拳、火花散らすプライドとプライド。
漢と漢の闘いは熱いものと決まってますな~
ところでコウちゃん、抜糸終わったのかな?
術後4~5日っていうとまだですよね。
イテテテ…

>>単savaさま

熱いですよ、漢の闘いは!!!
そうですね。プライドが熱くするんでしょうね。
漢じゃないから詳しくわかんないですけど(^^:)

でもパチスロで負けてるとき熱くなるのも、ある意味プライド
かかってるから? いや……生活か。とほほ。

コウちゃんは、退院後数日ってことでございます。
抜糸ってまだなのかなあああ? ←無責任(汗)

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