「ハヤト。いよいよだな」
「うん。緊張するね、さすがに」
「わはははは。それがハヤトらしくねえって言うんだ」
今日は付き添い役を買って出たリュウジが大きく笑って見せる。
あはは、なんて一緒に笑ってみたら、多少は緊張も……ほぐれてないけど。
ついに千晶ちゃんと玉城のユニットのライブ当日がやってきた。
ひょんなことからオレがギターで参加することになって、練習に練習を重ねて迎えた今日なんだ。
練習の日々の合間に走りに行って暗黒一家と揉めたとき、自ら売られた闘いを買おうとしてリュウジに叱りとばされて以後、リュウジのオレへ対する監視の目はとっても厳しくなってた。
学校で練習するときはおろか、脱出しないようにとか言って家までついてきたりして。
そうじゃないときは1時間おきに電話がかかってきたりして。
しかも、最近喧嘩っ早いのは栄養が偏ってるんだって言って、カルシウムのサプリメントを飲まされたりもして。
とにかく、リュウジはオレの世話を焼くことに必死になってたみたい。
なんだかな。オレ、そんなに手間がかかるかな。
そうした日々を経てきた今日。
隣町にあるライブハウスまで、今日は駅に集まって一緒に行くことになっていた。
真っ先についたのはリュウジとオレだった。ふたりで千晶ちゃんと玉城を待ってる。
「でもあれだ。ハヤトは実際巧くなったよな、随分」
「あはは。ムリに褒めても何も出ないってば。リュウジ」
「ん? いや、そんなんじゃねえよ。俺がお世辞言えると思うか?」
ああ、言われてみれば確かにそうかもしれない。
それじゃ素直にいただいておこう、とリュウジに笑ってみせた。
「やっぱりな、巧い人と一緒にやれば何でも上達するんだよな。引っ張られるってのかな。そんなんじゃねえ?」
「ああ、確かにそれはある。基本的には玉城と千晶ちゃんがいれば成立するとこに入ってるからね、オレ。邪魔しない程度には成長しただろ?」
「うんうん。ハヤトのおかげでいい感じになったと思うよ。ね、玉城くん?」
「ほんとに。音に厚みができたし、隙間が埋まった分に僕も遊びでアドリブ入れられるから楽しいし」
「お、千晶ちゃん、玉城」
リュウジと話しているうちに、千晶ちゃんとキーボード持参の玉城──さすがにライブハウスにはピアノは置いていないんだそうだ──が到着してた。いつの間にか会話に参加してたんだ。
「なあ、ふたりとも。ウチの特攻隊長はなかなかいいだろ?」
「あはははは。うんうん。リュウジ、悪かったね。忙しいのに手を借りちゃって」
「いいんだぜ、千晶ちゃん。ハヤトにとっちゃ何事も修行だからな!!!」
リュウジが言ったのを聞きながら、玉城がオレに耳打ちをした。
「ハヤト、君も苦労するね。大将が熱血だとさ」
「あ、わかる? そうか、玉城のとこも森園主将がそうなんだ」
「うん。リュウジとそっくり。他人事とは到底思えないんだよね」
「うん? 玉城、何か言ったか?」
「えええっ……!!! いや、何でもないよ。ね、ハヤト?」
「そう。こっちのことだ」
玉城とオレは慌てて手を振った。横では千晶ちゃんがくすくす笑ってる。
リュウジはだいたい察しがついてたみたいだったけど、それ以上何も言わなかった。
……助かったな。
「さて、それじゃそろそろ行こうか。みんな」
千晶ちゃんの一声に、オレたちは振り返る。
「だね」
「了解!!」
「よっしゃ!!! 気合い入れてけよ、お前ら!!!」
リュウジの声は勝負の前の景気づけのよう。ある意味勝負だから合ってるか。納得。
テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル
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