電車でたった2駅の距離。この辺までだったら単車で流すときにも通らないことはないんだけど、まるで遠征に来たような気分がするのは何でだろう。
おそらくそれは、縄張り意識みたいなもんなんだろう。
リュウジ以下オレたちは、ホームというか地元でのポジションを守ることに精一杯だ。
だから案外、いざ地元を離れると何が待っているのかわからないっていう緊張があるのかもしれない。
しかもオレにとっては、ステージらしいステージに立つのは初めての経験だし。
ライブハウスの前まで辿り着いたオレは、自分のふたつの掌で両方の頬をぴしゃりと叩いてみた。
「どうした? ハヤト。気合い入れてるのか?」
「うん。なんか緊張してきちゃったからね」
「わはははは。そうか。それなら俺がやってやろうか?」
「え、あ、いや、それは遠慮しとくよ、リュウジ」
オレはこないだリュウジに平手を喰らったのを思い出して、逃げ腰になってた。
「そうだよ、リュウジ。せっかくハヤト目当てにチケット買ってくれた女子がいるんだからね。彼女たちにハヤトの腫れたほっぺを見せるわけにはいかないのっ」
「え……? そうなのか? 千晶ちゃん」
そうなんだ。オレに加勢してくれる千晶ちゃんの意外な言葉に驚いた。知らなかったな。
「確かにね。ハヤトは今回、集客力に大いに貢献してくれたよ」
「玉城。お前までハヤトを甘やかすんだな? 覚えておけよ、あとでどうすっか」
「あは、リュウジ。そんなに妬くことないでしょ? いいじゃないの。仲間が人気者で何が悪いのよ」
困ったように千晶ちゃんがリュウジの背中を叩いた。
「いや、別に俺は妬いてるわけでも悔しいわけでも、納得いかねえわけでも……」
「リュウジ。千晶ちゃんはそこまで言ってなかったような」
あ〜あ、かわいそうに。突っ込んだ玉城は、リュウジに思いきり睨まれてたよ。
そんな前奏を挟んでから、オレたちはライブハウスに入っていった。
そこは細い階段を下りきった地下2階にある老舗のライブハウスで、親父に話したらびっくりしていた。昔、同じステージに立ったことがあるんだそうだ。
約束された時間に到着してみると、最初のリハーサルが始まったところだった。
こういう、いくつかのバンドが出るライブっていうのは通常『逆リハ』の形が用いられるんだって玉城が教えてくれた。
逆リハってのは、出演順が遅いほうから順にリハーサルをやる、ってこと。
だから今リハーサル中のバンドは、本番ではオレたちの次に出演することになってるらしい。本日4つのバンドが出るうちの、オレたちの出番は2番目だそうだ。
今日の催しは、高校生バンド限定ライブなんだとか。千晶ちゃんが言うには、女の子だけのバンドがひとつと、ここらじゃ同世代には割と名の知れた美形男子のバンドがひとつと、あとひとつはパンクバンドなんだって。
音からすると、今リハ中なのはパンクバンドのようだ。
照明を落としてあるから薄暗い客席に荷物をおろして、チューニングの準備にとりかかろうとオレはギターケースを開ける。
「ん?」
ちょうどその時オレの肩をたたく手があって、振り向いてみたらリュウジがステージに向かって指をさしてた。
なんだろう──そう思って示す方向を見たオレの目には。
「あ──れ? ギター、タカシじゃないか」
そう。本日共演のパンクバンドの構成員のひとりは見知ったピンクのモヒカンだった。
複雑そうなリュウジの横顔。
嗚呼、こんなとこでまで奴らと遭遇しちゃうのか。オレたちは。
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タカシキター!
やっぱりハヤトと一緒に組むってことはないか(笑)
ケンカばっかりしないで、音楽やってたらいいのにねぇ。
あ、ところでまだチケット余ってますか?
「ハ・ヤ・ト」って書いてあるうちわを持って
見に行きたいんですけどw
>>ピノコさま
そうだったみたいですね〜ww
ハヤトと組んだらどんなだろね。タカシ。
それはそれで気になる(^^:)
>あ、ところでまだチケット余ってますか?
入り口のとこでリュウジが売ってるよ。
あ、ダフ屋じゃないとは思うけどww
>「ハ・ヤ・ト」って書いてあるうちわを持って
だはははは。ウケタ!!!
ぜひとも夜露死苦ぅ!!
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