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歌と和弦の日々 6-2


 「うん。じゃあこんな感じでいこっか」
 「だね。そしたら僕、これPAさんと照明さんに渡してくる」
 「お願いね、玉城くん。じゃああたしはお化粧の続きに戻るかな」
 玉城が書き直した曲順表を持って楽屋を出て、千晶ちゃんが鏡に向き直る。
 「それじゃオレ、リュウジたちのとこ行ってるね、千晶ちゃん」
 「うん。あ、ついでにミネラルウォーター買ってきて、玉城くんのも」
 「了解」
 そうしてオレは、もう一度外へ出る階段を上がった。

 うん──きっとこんな光景が目に入ってくるんじゃないかな、って予想はしてた。だって状況が状況だし、もういい時間だし。
 ライブハウスの前の路地には、まもなく開場時間だからお客とおぼしき人々がすでに大勢集まっていた。
 その中で人混みがあえて避けている異様な空気を醸しているあたりに、オレは確信めいた視線を送る。
 やっぱり、か。
 無視するわけにも当然いかないので、そっちに近づいていった。
 
 「これはこれは。お揃いで」
 無言のままの視線の応酬を続けている連中に外側から声をかける。
 と、3対3の睨み合いをしていた面々がそれぞれオレを振り返った。
 「ハヤト!!! 馬鹿、お前、何で出てきたんだ?」
 慌てたようにリュウジが言うのに、オレは落ち着いて答えた。
 「うん。お使い。ミネラルウォーターがいるんだって」
 「ほう。余裕だな、特攻隊長」
 「どうも。オレ、緊張しすぎると開き直る体質だからね」
 なんて言葉を返す先は──当たり前のようだけど暗黒一家のコウヘイだ。
 「今日、タカシも出るんだね。オレぜんぜん知らなくて。彼、ギター巧いな」
 オレは挨拶がわりに、純粋にタカシを讃えてみる。コウヘイは何も答えなかった。

 「オレは飛び入りだから大したことないけど、ウチのメインのふたりはコウヘイも知ってる顔だ。だから期待していいよ。ふたりとも真剣だし。いいもの聴けると思うから」
 何の偽りもなく、煽るようなつもりもなくオレは言ったんだけど。どうしたことかダイゴとノブオが慌ててオレのシャツを引っ張った。
 「ハヤト。ここは放っておいて早く買い物に行ったほうがよい」
 「そうっスよ。何もここで揉めなくたって」
 「揉める? なんで?」
 「ああ、もう。ハヤトは!!! いいから早く行けや!!!」
 なんだかわからないけど、オレは言わないほうがいいことを言ったらしいと今さら悟る。
 説明してもらったりは出来そうもない雰囲気だった。コウヘイらはオレを嫌な目つきで見ていた。仕方なくリュウジたちの言に従って場を去ろうとしたとき──
 
 「あ、総帥。ハンゾウさん、ゴンタさん──あ……」
 自分の先輩らの姿を見つけたタカシが近づいてきて、同時に目に入ったらしいオレたちに微妙な視線を寄越した。
 「タカシか。今な、鬼浜の特攻隊長が挨拶に来たところだ。お前も挨拶しておくといい」
 「そ、総帥……。いえ、今はそんな」
 「言ってもいいんだぞ。玉城のピアノで共演するギターは自分ひとりのはずだってな。特攻隊長に思い知らせてやるがいい」
 「え……?」
 何を言われているんだかわからなくて、オレは間抜けな顔をコウヘイに向けた。
 
 場の空気が揺れた。騒ぎを起こすつもりはないとは言え、リュウジは鬼気迫る表情でコウヘイを睨む。
 リュウジが何か言おうと口を開きかけるのと同時に──タカシが大声を出した。
 「総帥!!! すみませんがここは穏便に頼みます。オレにとっては大事な闘いの前なんです。大丈夫──オレ、今日は敵の特攻隊長に負けたりしませんです!!! だから今は……」
 細い体を張って、タカシはおのれの総帥に強く言ったんだ。その姿は逞しくさえ見えた。



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