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歌と和弦の日々 9-1

 
 すべての演奏が終わったあとの、スピーカーから何の音も出ていない、しょんぼりと客電が灯っただけのライブハウスっていうのは寂しい感じがするもんだって初めて知った。
 清算を済ませて──意外とチケットが売れたそうで、自腹はほとんど切らないで済んだって玉城が言ってた──、店員さんたちに挨拶をして。
 それから一緒に出たバンドの人たちと握手したりして。
 そうしてオレと玉城は、荷物を持ってライブハウスの外へ出た。

 冬の夜がアスファルトから伝わってくるけど、外の路地を埋めてるお客さんたちはまだ熱気を残しているみたいで、オレ個人も似たようなものだったし、思ったほど寒くないのが不思議だった。
 いくつかできた人だかりを縫って、リュウジたちが近づいてくる。
 「オウ、ハヤト!!! おつかれ」
 「うん。ありがとう、リュウジ。みんなも」
 「押忍。ハヤト、なかなかよかった」
 「ホントっスね。玉城センパイも、すてきでしたよ~」
 笑顔を湛えて口々に言ってくれるオレの自慢の仲間たち。今日はほんとに有り難かった。

 「野球部の連中は? 森園主将、来てたよね?」
 「ああ、あいつらもう帰ったよな、ダイゴ」
 「確かトレーニングがてらと言って、さっき走っていったな」
 「あはは。こんな時でもランニングなんだ」
 オレは思わず笑ってしまう。
 「そうそう。そういう男だからね、森園は。でもさっき、僕には挨拶してったよ。ハヤトにはなかった? それはごめんね」
 玉城はすまなそうにそう言った。
 
 「それで? 千晶ちゃんはどうした?」
 「うん。何かさっき名刺持った女の人に声かけられてね。それで先に出てった」
 重たそうにキーボードを持ち直しながら、玉城が答える。
 「そうか。何だろうな?」
 「さあね。でも、よかったんじゃない? ほら──奴らいるから」
 顎で示した先にいる奴ら。本日出演者のひとりを応援しにきた、その物騒な人影たち。
 「オレたちは揉め事なんて日常茶飯事だけど、できたら歌い終わったあとの千晶ちゃんをかかわらせたくないから」
 
 ほら、思ったとおりだ。
 オレと一瞬視線が合ったかと思うと、コウヘイはこちらに向かってくる。ハンゾウとゴンタが付き従ってきている。タカシはまだライブハウスの中にいるみたいだ。
 「玉城」
 「なんだい? コウちゃん」
 幼友達のふたりは、それなりに笑顔で向き合った。けど、コウヘイの笑顔ってのはいつもと同じ物騒な雰囲気で。
 「今日は僕らのも聴いてくれたんでしょ?」
 「……ふん」
 「それよかさ。タカシ、巧くなったね。タカシのギター、久しぶりに聴いたけどさ。練習してるんだろうね」
 
 玉城の言葉に応えることなく、コウヘイは玉城をまっすぐ見つめて低い声を出した。
 「玉城。タカシとの約束を覚えていないのか」
 「約束?」
 「中学を出るときに言ったそうじゃねえか。タカシに、また一緒にやれるのを待っていると」
 「ああ──うん。言ったね」
 「それなのに何故、タカシではないギターと組むのだ? 筋を通せや、ゴラァァァ!!!」
 コウヘイの怒号に、そこら中にいた人たちが振り返る。
 「コウちゃん。悪いけどこんなとこで目立つのはやめとこうよ」
 「そうだ。玉城の言うとおりだぜ、コウヘイ──言いたいことがあるんならちゃんと冷静に話せばいいだろうが。ゴラァァァじゃねえだろ!!!」
 コウヘイと負けず劣らずのボリュームで叫ぶリュウジの声。
 「ちょっと──リュウジこそ落ち着いてってば」
 オレが言ったくらいじゃ収まりがつきそうにない。
 何か不穏なものを予感してか、ライブハウスの前からはだいぶ人が減っていた。


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