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歌と和弦の日々 9-3


 「総帥!!!」
 悲鳴に近い甲高い声が、裏通りのライブハウス前に轟いた。
 地下から通じる階段を上がってくるなり事に感づいたらしいその声の主は、リュウジとコウヘイが火花を散らす真っ只中へと躍り込む。
 「頼みます。拳を下げてください。おふたりとも、どうかここは……」
 きっぱりとそう言って、ピンクのモヒカンはコウヘイに深く頭を下げ、続いてリュウジにも頭を下げて。
 それだけに飽きたらず、両者の間のアスファルトに崩れるように膝をついて土下座をしたのだった。

 「タカシ──?」
 おのれのリーダーに名を呼ばれるも、顔を上げようともせずにタカシは言い募る。
 「総帥がオレのことを思ってくださっているのはわかってます。けど、だったらここで騒ぎを起こさないでください」
 中途半端になってしまった拳をコウヘイは一旦収める。さすがに割って入られたとあってリュウジも面白くなさそうではあったが、しかたなしに一歩下がった。

 「総帥。ここはオレの戦場でも聖地でもあるところなんです。オレ、またここへ出て、ここから大きくなるのが夢なんです。だから頼みます」
 「俺に指図するつもりか? 俺がそれを飲むと思うのか? タカシよ」
 「総帥がどうする気なのかはわかりません。けどここは退けません。いくら総帥でも」
 「だったらどうするのだ? タカシ」
 「それならば……失礼します!!!」
 弾かれたように立ち上がって姿勢を正したかと思うと、タカシは腰を折って一礼をして

 ──コウヘイの頬を開いた掌で打った!!
 ──すぐさま回れ右したかと思うと、今度はリュウジの頬にも……。

 相次いで『ピシャリ』と聞こえたふたつの乾いた音に、一同は呆気にとられてしまった。
 今日聞いたどんな音よりも、それは魂のこもった音だったかもしれない。
 改めてオレは思う。
 今日のオレは、タカシに完全に敗北したと言わざるを得ないな、そんなふうに。

 玉城を含めたオレたちは、5人で空いた電車に揺られている。
 向かいの座席に座ったリュウジの脇にはにはダイゴがいる。こんなとき、ダイゴは黙ったまま隣にいてくれるだけで気持ちが落ち着くのをオレも知っている。だからリュウジのことはダイゴに任せておいたらいいんだろう。
 
 オレの両脇にはノブオと玉城が座っている。
 黙っているのも落ち着かなくて、オレはノブオを相手に話し出した。
 「な、ノブオ」
 「はい? ハヤトさん」
 「あのさ。タカシって時々すごいんだな」
 「ええ……。正直言って、自分とこのリーダーに手を出すなんてオレだったら考えもつきませんね」
 「だよな。オレだって、リュウジに平手なんて絶対ムリだ」
 あはは、とオレは力無く笑った。

 「うん。でもさ、タカシって昔からそういうとこあるから」
 ふたりの幼い頃を知る玉城が、遠い目をしながら話した。
 「ああ見えて、自分の分野には一線を引くからね。今日のコウヘイは、タカシの陣地で勝手に喧嘩しようとしたようなもんだから」
 「それはわかるけどさ。それでもコウヘイに楯突くなんて思ってもみなかった」
 「ああ──でも、暴走したコウちゃんを止められるのってタカシだけだった。自分から殴られに行って、それでコウちゃんの怒りを静めたりとか」
 「あいつ、案外冷静で頭脳派だったんっスね。玉城さん」
 「頭脳派……そりゃどうかな。わりと本能だと思ってたけどね、僕は」
 元来本能でコウヘイを止める男・タカシの今日の行動は、少なくとも確固とした意志によるものなんだろう。
 「どっちにしても、オレはあいつには負けたな。今日は」
 ほんのり笑って口にした言葉には、嘘もなく、悔しさもなく。ただ素直にそう思えた。
 車窓の外で鳴ってる踏切の警告音がやたらと耳に残っている。

 ライブハウスからは2駅の鬼浜町。ひとつめの駅を過ぎたから、家につくまであと少し。
 改札を通るまでにはリュウジの気分も少しは落ち着いてるかな。
 そうだったらオレは、別れ際にリュウジにちゃんと言わないといけない。
 今日はありがとう、と。
 練習をはじめてから今日までのこともありがとう、と。
 もしもいつかまたこんな機会があったら、その時こそリュウジに悔しい思いをさせないようにするから、と。
 心の中でいくつかの言葉を準備しながら、窓の外の景色が流れるのを見る。
 
 そして、電車は鬼浜駅の構内へ滑り込もうとしていた。
 ちらりとリュウジのほうを見たら視線があった。
 その表情は、もういつもと変わらない晴れ晴れした顔で。
 よし。改札を抜けたら本番だ。
 オレはリハーサルしてた言葉のうちのいくつかをリュウジに向けて放つつもりで、座席から立ち上がって肩に愛用のギターを担いだんだ。
 

   * 歌と和弦の日々 完 *


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コメント

すごいっす

お早うございます、華丸様。
いやいやタカシカッコいいですね!
思わず惚れそうですよ~
コウちゃんもタカシのこういう強さが好きだったりするのでしょうね(^^
ちと大人気ないところもあった総長2人でしたが、
軍配はタカシに上がったという事ですね。
よかったよかった!
ところで私事ですが、喧嘩番長なるゲームを買ったのです。
主人公は勿論リュウジと命名。
苗字は苦し紛れに鬼浜としましたが、本当は何なのでしょうね~
果たして番長リュウジの地域制圧なるか!?(笑

>単savaさま

こんばんわ!!
うっかりレスが遅れてしまって申し訳ありません o(_ _*)o

タカシの存在ってナゾじゃなかったですか?
我ながら「あ~、だからこいつがコウヘイの手下だったんだ」
とか思いました。だはは。

タカシは、将来のことを見据えているというか、すでに
ミュージシャンになるという目標があるみたいですからね。
そのへん考えると、大将ふたりよりオトナかも^^

番長リュウジですか!! 楽しそう (*^-^)b
そちらのリュウジは強いんですか? いいなww
彼らの苗字、ほんっと気になりますよね。
これ書いてて、ときどき苦しい……ぐはっ。
いや、でも赤ジャージの名前がないのが一番苦しい……ぐほっ。

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