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不器用な特攻隊長 2-2

 急に千晶ちゃんに問われて、ただこの急展開を見守っていただけのオレはどきりとする。
 「オレは……その」
 「何よ、ハヤト。はっきりしないね」
 「……うん。っていうかさ。オレ、実はただの特攻隊長に戻ろうかと思って。それを今日はふたりに言おうかと考えてたとこなんだ」
 内心迷いながらも、一度思いを口にしてみると素直に、きっぱりと言葉にすることができたような気がする。
 「ちょうどいいな。ギター弾ける娘が入るんだったら、オレは辞退しやすいよ」
 「何言ってんの? ハヤト」
 千晶ちゃんは目をまんまるにしてオレをまっすぐ見つめてる。
 
 「オレさ、あんまり器用なほうじゃない。だからギターにかかりっきりになると、鬼浜爆走愚連隊の特攻隊長としてのオレが疎かになっちゃうんだ……」
 「おい──ハヤト?」
 オレが言うのを聞いて、リュウジが疑問符をぶつけてくる。
 「お前、そんなふうに言うのか? せっかく千晶ちゃんも玉城もお前に期待してるのに。それを蹴る気なのかよ!!!」
 「リュウジ。そんなつもりじゃない」
 「だったら続ければいいだろうが!!!」
 「そうっスよ、ハヤトさん。せっかくいい感じなんっスから!!」
 オレはさっきずっと話していたダイゴと目を見合わせた。語らないままのダイゴの雰囲気がオレを後押ししてくれる。
 「うん。でもオレの意志はいま言ったとおりだ」
 そして──場には静かな沈黙が流れた。
 言わなきゃいけない思い言葉を言い終わったオレは、なんだか妙に疲れていた。

 「ハヤトの言いたいことはわかった。なんとなく」
 しばらく後、納得行かない顔してるリュウジとオレを見比べて、千晶ちゃんは言った。
 「でもさ。ギターは2本あっても悪くないから、新曲できたらソース渡すね。もし都合がよかったら本番だけでも飛び入り歓迎ってことにしとくよ、ハヤト。だってハヤトがいると女の子集まるし」
 「千晶ちゃん!!! そんなこと言っていいのかよ!!!」
 「落ち着きなよ、リュウジ」
 そう口を挟んだのは玉城だった。
 「リュウジが一番わかってあげなきゃ。ハヤトはさ、きっといっぱい考えたんじゃない? それでこう結論したんだろ? 自分がいま何をするべきなのか、ってさ」
 ああ──ほんの短期間そば近くいただけなのに。千晶ちゃんも玉城も、オレのことをわかってくれているみたいだ。

 「森園の言葉に倣って言うとね、リュウジ。相棒さんはリュウジの右腕としての自分を何より大事にしたいってことなんだと思うよ」
 玉城が言うのを聞いて、なんだかオレは今さらになって腑に落ちた感がする。
 そうか。オレはそう言いたかったのかもしれない──だけど、さすがに自分じゃそんなふうには言えないよな。
 理解してくれたふたりの音楽仲間に、オレは心の中で最大限の感謝を述べた。
 気持ちがつながっているってのは有り難いことだね。

 オレのせいでいっときテンションの下がった打ち上げの場だったけど、そこからは玉城とノブオが盛り上げてくれて助かった。
 何事もなかったようにとは言えないけれど、いつしかふたたび他愛のない会話が戻ってきて──いくらか間を置いたらリュウジもどうにか納得してくれたみたいだ。
 以後のオレのスタンスは、いつでも歓迎してもらえるゲストってことで落ち着いたらしい。
 「さっそく新曲を月曜日に学校に持っていくからね。覚悟しといて、ハヤト」
 玉城が笑ってそう言った。それを受けて、千晶ちゃんが微笑む。
 「そうそう。つかず離れずのマイペースでも、ギターと接していけばいいよ。せっかく弾けるんだかもったいないって。ね、リュウジ?」
 「ん? ああ、そうだな。ハヤトはのんびりしてっからな。そんなんでもよかったら、しばらく面倒みてやってくれるか? 千晶ちゃん。玉城」
 「あはは。それくらいお安いご用だよ」
 「世話をかけて悪いな。ほら、ハヤト。お前もちゃんと挨拶しとけや」
 「え、あ、そうだね。ええと──これからもよろしくね、ふたりとも」
 後頭部をリュウジに押さえ込まれて無理矢理お辞儀させられた。
 うん。これでいいみたい。何よりリュウジが納得してくれれば、オレはそれでOKだ。

 さんざんご馳走になって、たくさん話して、よく笑って。
 昇龍軒の夜の営業が始まるっていうのでオレたちの打ち上げはお開きになった。
 最後の最後まで、リュウジは千晶ちゃんと玉城に言っていた。
 「もう、ほんっとに手間のかかる奴だけど、ハヤトをよろしく頼むぜ」
 まるで保護者だな。
 
 そしてオレたちはそれぞれ帰途につく。最後まで方向が一緒なのは、このメンバーでは千晶ちゃんだ。千晶ちゃんは電車でとなりの駅まで帰る。オレは駅の逆側が家。
 あれこれ話しながらの帰り道。夕暮れ刻が鬼浜町に訪れる時間だった。
 駅前についたとき。別れ際に千晶ちゃんが、オレに耳打ちした。
 「あのね。ハヤトだけに言っとくね。紹介してもらった娘。同い年でね、すっごくかわいいの。あたしの好きなタイプ」
 言い終わった千晶ちゃんは、ほんのり頬を染めてたんだ。
 「え──そうなんだ」
 「そうなのよ、ハヤト。えへ、久しぶりにこれって恋かも~」
 乙女な男子高校生・千晶ちゃんが恋する対象は女の子だっていうことは、まったく知られていない事実。
 リュウジも知らない。玉城だってきっと知らないはずのこと。

 「それじゃね、ハヤト。ほんとにまた一緒にやろうね! ムリしない程度でいいから」
 「うん。こっちこそ。たまにはお邪魔させてほしいよ」
 「OK!! いつでも待ってる~!!」
 小走りに改札を目指す千晶ちゃんは──見てるこっちが照れるくらいのいい笑顔をしてた。
 オレは手を振り返しながら、あらゆる意味での千晶ちゃんの成功を一番星に祈ることにして空を見上げてた。


   * 不器用な特攻隊長 完 *


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