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贈り物を心より 4


 「こっちっス!! ハヤトさん」
 「慌てるなってば、ノブオ」
 とか言いながら、オレもノブオについて小走りに目的へと近づいていく。
 そして目に入ってきたのは──
 淡いオレンジを基調とする電飾が取り付けられた樅の木だった。
 秋にリュウジと昼間に見たその木は、ただの大木から冬のシンボルに変身していた。
 てっぺんには星が飾られていて、巻き付いた電飾がちらちら風に揺れている。
 オレンジの合間を縫うように、赤や緑や青の光がアクセントを添えていて。
 見上げたオレは、その威風堂々たる姿にぽかんと口を開いたままで。

 「おお……本当に大きいな。壮観だ」
 ダイゴは感心したように見上げて言った。
 「そう──ほんとにね。オレ、びっくりしたよ」
 「きらきらしてるっス~!!! オレんちのツリーの何倍あるんだろ」
 「ノブオのとこも確か大きかったと思うけど……何倍っていってもね」
 「押忍。桁が違うだろうからな」
 「そうっスよね~。うはは」
 寒くて暗い冬の夜に灯った樅の木は、オレたちの目にはとても暖かかったんだ。
 「なかなかいーだろ、ハヤト」
 「うん。最高だ」
 そう答えたら、テツはさも自慢そうにVサインを寄越した。

 居並ぶ家族連れや、圧倒的に大多数を占めるカップルたちに紛れてひときわ異彩を放つ男ばっかりの集団のオレたち、という構図。一歩退いてみるとおかしなもんかもしれないけれど、それにしたってオレたちだってあのツリーを見たら盛り上がる。
 オレたち4人は、タケルらの美山瀬の大勢の仲間たちに囲まれて気分のいいひとときを過ごしていた。
 はしゃいで写真を撮ってもらってるリュウジとか。
 ひたすらツリーを見上げて嘆息するダイゴとか。
 美山瀬の若手とおぼしき連中と親交を深めるノブオとか。
 そんなのを見てると、寒いのも忘れるよな。

 タケルが命じたのか、美山瀬の若い連中がメインの通りまで戻って、お団子やらを買ってきて振る舞ってくれた。
 それを機に、暗い中ではあるけれど芝生に陣取ってそれぞれに話したりしはじめた。
 「でさあ。そのときオレ、相手のおっきいヤツをさ。こう──」
 なんて、ノブオが武勇伝を披露してるのがほほえましい。
 ダイゴは、やはり自分と同じような立場とおぼしい大柄なひとりと熱心に語り合っている。どっちも見劣りせずに強そうだ。

 そんな光景を眺めていたら、テツが声をかけてきた。
 「ハヤト。食べてちょっとはあったまった?」
 「うん。なんか悪いね。おいしかった。ごちそうさま」
 「それはよかったー」
 うん、と返して、オレはふたたび巨大ツリーに見入っていた。
 もうプレゼントを期待できる年齢でもないから、クリスマスって個人的にはそこまで盛り上がる行事じゃないって去年あたりは思っていたけど、こういうのは悪くない。
 ちらちらと瞬く電飾を見ながら、オレはそんなことを思ってた。
 「たまにはこんなんもいいって思ったろ? ハヤト」
 「え──? あ、うん。そう思った」
 「だよなー。おれたちみたく毎日気合い入れるべきこととか、敵との諍いとかある身でもさー、さすがに和むよな」
 「ちょっとしたプレゼントみたいなものかもね、コレが」
 「うはは、そしたらおれ、いっつもプレゼントもらってるんだなー。幸せだ」
 軽い会話。軽い笑い。気安い空気が自然に流れてた。そしたら──
 「ああ、ここにいたか。テツ、ちょっと」
 「ん? ああ、ハヤト悪い。タケルのお呼びだ」
 オレの肩をぽんと叩いてからテツは立ち上がって、声のほうに小走りで寄っていった。
 ほんとに和むよな──ひとりツリーに見とれていたオレがつと視線を外すと、湖に近いあたりにリュウジが立っているのがわかった。
 見慣れた背中に声をかけようかな、と、オレも芝生から腰を上げたんだ。

 「よう、リュウジ」
 「え──ああ、なんだ。ハヤトか」
 「なんだよ、そんなびっくりした顔して」
 「ああ、いや、まあ──」
 オレの呼びかけに、なんか知らないけどリュウジは肩をびくりと動かしてから振り返ったんだ。まるで野良猫みたいな仕草だった。
 
 「何を考えてた? ツリーをじっと見てたけど」
 「うん? いや、別にこれと言って。ただきれいだなあと思ってな」
 「確かにね」
 ほの暗い中で、オレとリュウジは並んで話してる。
 「ただな。あいつにも見せてやりたいなあ、って」
 突然、リュウジはそんなことを言う。オレと視線を合わせないまま。
 「あいつ──?」
 「ああ」
 嗚呼──やっぱりリュウジがいつもの気配じゃないのは、千晶ちゃんの言うとおりなのかもしれない。そんな予感が一瞬オレの胸をよぎった。
 
 ちょっと迷ったけど、さっきテツにも言われたし。勝手に気を揉むのをやめようかと考え直して、オレはリュウジにこう訊いた。
 「それ、もしかして──亜由姉さんのこと?」
 「は? 何がだ?」
 「ツリーを見せてやりたい人っての」
 今度はオレが決まり悪くて視線を逸らしたんだけど──逆にリュウジがオレの横顔を凝視してるのがわかった。それでもって──
 「わはははは。まあな。確かに最近世話になってっからな。亜由姉には」
 笑い飛ばす勢いで、リュウジは言った。
 
 「その恩返しがこの程度でいいんだったら俺はついてるな!! でもまあ、亜由姉も俺なんかが連れてこなくても、その気になりゃ自力で来られるだろ? 頼めば連れてきてくれる人もいるんだろうしな」
 「え──違うのか? リュウジ」
 「違うって、何がだ?」
 「いや……あの、ええと」
 真っ正面からリュウジに問われて、オレはたじたじになってた。
 「なんだ。違うのか。やっぱりな。そんなことないと思ってたよ、オレ」
 「だからハヤト!!! 違うってどういうことだ?」
 「あはははは」
 笑ったところでごまかしなんか……効かないんだろうな。やっぱり。
 
 「オレたち、ちょっと勘違いしてたかも。いいんだ、気にしないでくれ、リュウジ。そうだよな、リュウジだったらもっと歳の釣り合う娘がいるもんな」
 「──? よくわかんねえけど?」
 「いいから。で? それなら訊くけどさ。リュウジ、最近亜由姉さんとこによく行ってるのか?」
 「オウ!!! ちょっと教わりたいことがあったからな。亜由姉ってやっぱすげえな。俺、めっぽう尊敬するぜ。初心者の俺なんかにも丁寧に教えてくれるし」
 「へえ。何か教わってるのか」
 「まあな。これ以上は内緒だけどな。照れくさいから」
 案外、訊いてみればリュウジは簡単に話してくれる。
 別に亜由姉さんのところに行っていることが秘密ってことではなかったようだ。
 ──なんだか気が抜けたな。オレ。
 
 さっきまで座ってた芝生のあたりを振り返ると、テツがオレたちを見ていた。
 うん、テツの言うとおりだったね。ちゃんと訊いてみるのが早かったよ。



美山瀬湖のクリスマスツリーのイメージ写真です (*^ー^)ノ
偶然にも今日手に入りました!!


miyagase_tree


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