目次

過去の記事をまとめて表示できるようにしてみました。 【 】がついている項目をクリックすると、それぞれのタイトルの記事を一括でお読みいただけます。 【 】内の数字が若い順に古い記事となっております。 【 】内の冒頭数字が同じものはそれぞれ対になるおはなしです。

これまでのおはなし

全タイトルを表示

御来訪感謝

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

贈り物を心より 5


 クリスマスを目前に控えた日付の今日。学期末だから早めの放課後、最近にしては珍しくオレはリュウジに連れ出されることになっていた。
 一旦家に帰って着替えてから、オレは単車でリュウジの家まで戻ってきている。
 「今日は用事ないのか? リュウジ」
 「ああ。作業もようやく一段落だからな。あとは多少手直しすれば終わりだぜ」
 すがすがしい表情をリュウジは見せた。作業とやらは峠を越えたんだなと理解した。
 「それで? 今日はどこへ行くんだ?」
 「ちょっとな。行けばわかるぜ。ハヤトに相談に乗ってもらおうかと思ってよ」
 「相談──オレで役に立てばいいけどね」
 「オウ!! きっとハヤトが適任だと思ったからな!!! まあ、早いとこ行こうぜ」
 「うん。了解」
 行き先はリュウジ任せのオレは、エンジンをふかして走り出すリュウジのあとについてハンドルを切った。
 身を切るような風が吹き付ける。それでもオレは単車に乗るのが大好きだ。大人になってクルマの免許を取ったとしても、きっと冬も単車の男なんだろうな。

 リュウジが単車を停めたのは、デパートの駐輪場だった。
 こないだオレたちが出たライブハウスのある駅の、メインの通りにある大きなデパート。
 「用事って買い物なのか?」
 「オウ。まあそんなとこだ。ハヤト、何軒か回る時間あるか?」
 「うん。オレは暇だからね。どうせ」
 「わはははは。それは好都合だぜ」
 笑い飛ばしてリュウジがオレの背中を叩く。そうだよな。オレってほんとに暇だよな。
 
 デパートの中へ入ってみたら、時期が時期だけに店の飾りもかかっているBGMもまるっきりクリスマスのそれだった。
 「お、ツリーあるな」
 正面から入ってすぐのところにあるのを見つけてリュウジが指さした。
 「ほんとだね」
 「これも悪くねえけど、俺ら美山瀬のやつ見たからな。あれに敵うもんはねえよな」
 「あはは、うん。そうだね。でも美山瀬のがここにあってもちょっと困るよね」
 「……ハヤト。困るってか、有り得ねえだろ、それは。ハヤトの発想ってのはなあ……」
 リュウジはあきれる顔になる。ああ、どうせオレはそういうキャラだから。

 店内をすこし歩いて、あたりをきょろきょろしているリュウジを見てる。
 正直言って、リュウジにデパートって不似合いだ。本人もそう思っているのか、どうも慣れない足取りでフロア案内板に寄っていった。
 「ええと──そうか。もっと上だな」
 納得した顔で頷いて、リュウジはエスカレーターに乗る。オレも後に続いた。
 「何を買うつもりなんだ?」
 「いや、まだ迷ってるな。だからハヤトを連れてきた」
 「迷ってるって……」
 「どんなの贈ったら喜ぶかわかんねえんだよな、いまひとつ。ハヤトのほうがそういうの選ぶの上手そうだと思ってよ」
 「え──もしかして誰かへのプレゼント?」
 「まあな。そんなとこだ」
 答えたリュウジは、いかにも気恥ずかしそうな表情だった。オレ、こんなリュウジを見たのは初めてかもしれない……。
 そうか。プレゼント──ってことはクリスマスの。
 「へえ。リュウジにプレゼントを贈る相手がいるなんて、オレ初耳だ。ちょっとおどろいたな……」
 「そうか? 俺ってそういう柄じゃねえか。やっぱり」
 言葉少なにやたらと照れた顔のリュウジを見てたら、意味不明にこっちの背中がむずむずしてきた。
 「でもまあ、柄じゃなくてもいいよな? ちょっとでもあいつが元気になるようなやつを贈ってやりたいし。協力してくれな、ハヤト」
 言って、フロア表示に目をやってからリュウジはエスカレーターをおりた。
 うん。そういうことならオレも努力するよ。がんばれ、リュウジ──背中に呟いた。

 リュウジのおりたのは、貴金属とか時計の専門店が入っているフロアだった。いわゆる海外有名ブランドのマークのバッグなんかも置いてある。
 おいおい、リュウジはいったいどんな贈り物を選ぶつもりなんだ? こんなの、オレにアドバイスできると思えないんだけど──オレ、かなり不安だ。
 ところがリュウジは──
 アクセサリーのコーナーは素通り。バッグのコーナーも同じく。
 時計売り場では、七人の小人が模されているからくり時計をちょこっとつついただけ。
 一周したところにあった香水売り場には見向きもしないで、こう言った。
 「悪い、ハヤト。ちょっと間違えたな。もう一階上だ」
 「え……ああ、そうなんだ」
 目に見えて安心したオレを眺めてリュウジは笑ってた。あ~、びっくりしたな。

 気を取り直してエスカレーターに乗り直すと、着いた次のフロアの気配はさっきのところとまったく異なる世界。
 とはいえ、これはこれでオレの分野なのかどうか極めて疑問だったんだけど……。
 「ここだここだ」
 リュウジがオレを招き入れた先は、どうしたことかメルヘンの世界だった。
 「ええっ、ここって……おもちゃ売り場?」
 「ああ。まだ宝石とか香水に喜ぶ年頃じゃねえからな。あいつ」
 「は──?」
 「だってあいつ、こないだ7歳になったばっかりだからな」
 おもちゃ売り場の前に突っ立って、オレはぽかんと口を開けている。

 「ええと……リュウジ、そんな若い彼女ができたのか?」
 「彼女? わはははは、そんなんじゃねえよ、ハヤト。まったくどっからそんな想像が湧いてくるんだよ、お前って奴は。おかしな男だぜ!!!」
 「おかしくないってば。このごろリュウジ、オレたちに何かを隠したそうな行動だったし。それでもって今日はわざわざデパートまで来て気合いの入ったプレゼント選びっていったら、誰だってその辺を想像すると思うんだけどなあ」
 オレが楯突いたところで、リュウジはぜんぜん取りあってくれなかったけど……。

 さっきのフロアもそうだったけど、メルヘン漂う空間にもオレたちはぜんぜんミスマッチだった。店員さんが笑っているのは気のせいかな……。
 それでも陳列された数々のおもちゃを見ながら、リュウジは真剣な様子。
 「ハヤト。これってどうだろ?」
 「ドールハウスね。かわいいけどさ、一式揃えるのって大変だろうね」
 「そうか。人形とかちっこい家具とか要るんだな」
 それでもって値札を見て、リュウジは目をまん丸くしてる。
 「こっちは? オルゴール。きれいじゃん」
 「う~ん。あいつ、歌は俺が唄ってやるのが一番喜ぶからなあ」
 「ええ……それほんとに?」
 「なんだよ。文句あるのか? ハヤト」
 「いえ。なにひとつ」

 そんなこんなで、リュウジが気に入ったらしいのはぬいぐるみだった。
 「そうだよな。やっぱこのあたりかな。俺もクマのぬいぐるみで元気出たからな。入院してたときは」
 「あはは。くーちゃんね」
 「オウ。ダイゴはあのあと、本気でもう一頭買ってくれたんだぜ!!」
 「そうだったんだ。じゃあまーちゃんもいるんだ。リュウジの部屋には」
 「まあな。とにかく病院の友って言えばこれに限るな。あいつも寂しいだろうから、ちょっとでも紛れるよな、ハヤト!!」
 「え──入院するんだ。リュウジのちいさい友達は」
 「ああ。だからな、俺にできることはしてやろうと思って。元気づけることぐらいしか思いつかないもんで」
 ちょこっと神妙にそう言って、リュウジはひとつの大きなぬいぐるみを抱きかかえた。
 それはリュウジの髪の毛と同じ色の、ふかふか毛並みでおどけた表情のチンパンジーのぬいぐるみだった。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

<< 贈り物を心より 6 | ホーム | 贈り物を心より 4 >>


コメント

狂ってるよね

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP 


  1. 無料アクセス解析
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。