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贈り物を心より 6

 
 そのあと何軒か回ってみたけれど、リュウジは最初に気に入ったもの以上にぐっとくるぬいぐるみとは出会えなかったようだ。
 一休みしようとリュウジが言うので、オレたちは海の近くの国道沿いのハンバーガーショップに来ている。
 海に面した窓際の席で、暗くなりゆく夕景なんか眺めながら遅めのおやつに興じていた。

 食べながらぽつぽつとリュウジが話すのを聞いてる。
 「くるみ、ってんだ。俺んちのご近所でな。ちっちゃな頃からときどき遊んでやってた」
 「へえ。くるみちゃんね。オレ、会ったことないよな?」
 「ああ。多分な。あんまり外で遊べないからな。くるみは」
 「入院するんだっけ? 病気?」
 「いや、病気じゃねえ。くるみな、チビの頃に事故にあって、そっから足が不自由なんだ。杖がないと歩けない。今まで何度か手術してんだけど、今回のは割と大きいのをするらしい。俺もよくわかんねえけど」
 リュウジにしては静かな口調で話す。オレは黙って聞いていた。

 「でもよ、今度の手術でよくなったら、来年は美山瀬に連れてってやりてえなあって思って。こないだ」
 「そうか。見せてやりたいって言ってたの、ほんとに亜由姉さんじゃなかったんだね」
 「わはははは。まだそんなこと言ってるのかよ、ハヤト!!! あのな、亜由姉にここんとこ面倒見てもらってたのな、実は病室に飾ってもらおうと思ってよ、大きめの絵を描いてたんだ。俺」
 「あ~、なるほど。それでつながったよ。全部くるみちゃんのため、か」
 「……まあな。そんなとこだ」
 なんでか照れたような顔になったリュウジは、3分の1くらい残っていたハンバーガーを一口に平らげた。
 『誰かのため』っていう言葉に照れてるんだろう。リュウジって、そういうこと自分で言いたがるような漢ではないから。

 「とにかく絵はな、そろそろ完成だ。亜由姉のおかげで、自分で言うのもおかしいけどけっこうよく出来つつあるぜ」
 「うんうん。よかった。今度見せてよ」
 「いや、それは……勘弁してくれ、ハヤト」
 「あはは、どうして?」
 「──巧くねえから。ハヤトよりはマシだと思うけどな」
 「あ……それは言わなくてもいいと思うなあ」
 どうせオレの描く絵は幼稚園児のソレと大差ないんだけどさ。

 「でな。くるみは2学期が終わったら入院なんだそうだ。ちょっと遠いとこに専門の病院があって、そこへ。俺、どうしてもそれに間に合わせたくて」
 「それでがんばってたんだ。もう日がないもんな」
 「オウ。でも美山瀬の連中とも約束してたし、合間にいろいろやることもあったもんで思ったより手間取ったな」
 本当にリュウジは義理堅い。そんなことならオレたちとムリに走りに行ったりすることないのに。美山瀬に行ったのだって、約束を違えるのをよしとしなかったためか──まあ、リュウジらしいけど。
 「くるみちゃん、気に入るといいね。絵とプレゼント」
 「まあな。それにしても俺ってそんなガラじゃねえよな。我ながら気恥ずかしいぜ」
 そう言って、リュウジは紙コップのふたを開けて残った氷を口の中に放り込んでいた。
 
 窓の外を見たら、もう夜の海が広がる頃だった。そしてリュウジは立ち上がる。
 「ハヤト。悪いんだがもう一度最初のデパート付き合ってくれるか?」
 「OK。やっぱりあれにするんだ」
 「オウ。あの猿の、なんか言いたそうな目が忘れられねえんだよな、俺」
 「あはは。ちょっとリュウジに似てたよな」
 「そうか?」
 夜の色の空に星がいくつか瞬きはじめている。
 海辺の星って、美山瀬のツリーの電飾にも負けないくらいきれいだよな。なんて。

 比較的駅に近いオレの家に単車を置いて、今度はふたりして電車にのって昼間にも来たデパートへ。
 リュウジがプレゼントに決めたぬいぐるみはオレたちが持ってもひとかかえある大きめなサイズだったので、単車だと運ぶのが大変だろうと相談したからだ。
 今度はフロアを間違うことなく、まっすぐにおもちゃ売り場へ直行できた。
 
 目的のぬいぐるみコーナーまで来ると、リュウジは迷わずに思い決めていた一匹を手にとって──リュウジの髪とそっくりの色のチンパンジーだ──、もう一度抱き心地を確かめるようにした。
 「やっぱりいいじゃん。それ」
 「そうだよな? これ、悪くねえよな、ハヤト」
 「うん。いかにもリュウジが選んだって感じがするし」
 「わはははは。そんなもんか」
 満足そうに笑って、リュウジはレジに向かっていった。

 「贈り物ですか?」
 レジで店員さんに訊かれて、リュウジは意味不明に口ごもっている。
 「え……ああ、そのう──」
 「はい。贈り物です」
 見かねてオレが口を挟む。
 「包装してください」
 「かしこまりました。クリスマス用でよろしいですか?」
 「リュウジ? どうする?」
 「ああ──ハヤトに任せるわ」
 「オレ? なんだかな……そしたらクリスマス用で。その赤いの、そうですよね?」
 「ええ。リボンは緑色になります」
 よっぽどリュウジはこういうのに慣れていないみたいだ。普通に応対してるオレにびっくりしたような視線を投げてくるのがおかしい。
 時期柄、なんだかんだ包装してもらうまでに時間がかかった。その間中、これまたリュウジはぜんぜん落ち着かない顔をしてた。
 ようやく品物を受け取ってデパートを出たときには、リュウジの額には汗が浮いてた。
 「ふう。緊張したぜ」
 「あはははは。なんでだよ?」
 「俺、こんなの買うの初めてだしな」
 やたらと大事そうに、こわれものでも扱う手つきで包みを抱えてリュウジは言った。

 そのまままた電車にゆられて鬼浜駅まで帰ってきた。
 一度荷物を置いてから単車を取りにウチに来ると言うので、リュウジの家に立ち寄ることになった。
 「ハヤト。くるみにこれ渡すとき付き合ってくれるか?」
 「あはは。なんでよ? ひとりで渡せないの?」
 「いや……そういうわけじゃねえ。ハヤトだけじゃなくて、ダイゴにもノブオにも一緒にいて欲しい。ほら、みんなで勇気づけてやりてえし」
 「ああ。そういうことなのか。そうだね。それじゃみんなで来よう。オレ、ふたりに話しとくよ」
 「ほんとか? 頼んでいいか? ハヤト」
 「うん。お安いご用だ」
 さっきオレひとりを相手にいきさつを話したリュウジのおそろしく照れた顔を思い出すと、そう提案せざるを得ないオレ。甘やかしすぎかな?

 「とにかくくるみが喜んでくれたら俺は最高だぜ!!」
 ふっきれたようにリュウジが大きく言ったその時──背後に人の気配を感じた。
 リュウジと同時に振り向いてみたら、そこにはコウヘイとハンゾウが。
 「ほう。くるみとやらにクリスマスの贈り物か? おそろしく軟派だなあ、リュウジよ」
 嗚呼──なんとまあ好戦的な顔をしているんだろう。コウヘイは。
 「聞き慣れない名前だなあ? 貴様、仲良しの女子がいるのではなかったか?」
 「なんだと──? コウヘイ、何言ってやがるんだ?」
 リュウジは闘う気迫を感じさせずに、落ち着いてこう返していた。



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