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特別な日ではなく 1

 「かわいい子だったよね、くるみちゃん」
 そう評して、千晶ちゃんは頬をほころばせた。
 実際の性別はオレと一緒なのに、鬼工いちの美人と評判の千晶ちゃんはこのごろ頓にキレイになったようにオレは思う。ほら、こんなときの何気ない表情が、ね。

 リュウジのご近所に住む小学生のくるみちゃんは、おしゃまな女の子だった。幼いころに遭った事故が原因で足が少々不自由で、それをよくする手術を受けるための入院を控えていた。
 そんなくるみちゃんを激励するためにリュウジは絵を描いたり、プレゼントを選んだりでここのところ多忙だったんだ。

 そしてついに今日がくるみちゃんの入院の日。
 リュウジ以下オレたち4人と千晶ちゃんで、くるみちゃんに会いに行ったところ。
 くるみちゃんはリュウジの贈り物を、それはそれは素直に喜んでいた。
 亜由姉さんの監修のもとに描いた絵はオレたちも絶賛ものの仕上がりだったし、こないだ一緒に選んだ赤い毛をしたチンパンジーのぬいぐるみもさっそくくるみちゃんのお気に入りになったみたい。
 『くるみ、ちっとは寂しいだろうけど泣いたりするんじゃねえぞ』なんてリュウジが言ったのに対して、
 『あたりまえでしょ? くるみがちゃんとしなくてどうするのよ。くるみ、強い子だもん。リュウジこそくるみがいなくてさみしいんでしょ? くるみが帰ってくるまでちゃんといい子でまってるのよ』──ほわっとした笑顔と裏腹に、そんなふうに返してた。
 
 「くるみちゃん、リュウジにすごく懐いてたね」
 くるみちゃんが病院に向けて出発したあとひとまず解散となったから、オレは方向が一緒の千晶ちゃんと並んで歩き出したんだ。
 「ほんと~。リュウジってさ、なんで同世代の女子の前だといつもキャラが違うんだろうね。堅くなってるっていうか、それがちょっと見おっかないっていうか。いつものまんまだったらもうちょっともてるかもしれないのに」
 「あはははは。千晶ちゃん、それは本人には言ったらダメだな。リュウジってあれで気にしてるみたいだから、けっこう傷つくかも……」
 「……うん。なんかわかる気がする」
 なんて呟いて、千晶ちゃんは冬晴れの空を見上げてた。

 そしてオレは、すこし時間を潰したいという千晶ちゃんに誘われるままに駅の逆側のケーキ屋の喫茶スペースへと来ていた。
 ふたりでクリスマスケーキって感じでもないけれど、まあオレも甘いものは嫌いじゃないからいいかな、って。
 千晶ちゃんはブルーベリーのムースと紅茶、オレはチョコレートタルトとコーヒーをそれぞれ頼んで、店内からガラスの向こうのクリスマス気分な町を眺めていた。
 「で? ハヤトはこれから待ちあわせとか何かあるの?」
 「オレ? ああ、まあね。夜だけど」
 ちょうど運ばれてきたコーヒーにミルクを入れながら、オレは答える。
 「ふうん。デートの約束? やっぱり」
 「いや、違う。そんなんじゃない。夜はリュウジたちと集会」
 オレの言ったのを聞いて、千晶ちゃんは目をまんまるくしてた。
 「えええっ!!! ハヤト、今日ってクリスマスでしょ? それなのにそんな色気のないことするの? 正気?」
 「正気っていうか……リュウジの招集だからね。別に断る事情もないし」
 あ~あ、って顔で千晶ちゃんはため息をついた。

 「あんたたちって、結束が堅いのはいいけどさ。こんな時ぐらい誰か色気のある理由で欠席する奴って……いないわけ?」
 「いないね、そう言えば」
 タルトにフォークを刺しながら、オレはすこし考えてからそう答えた。
 「リュウジはあの通りだし、ダイゴは敬虔な仏教徒だし。それからノブオは……」
 「ああ、そうね。好きな女の子よりはリュウジを尊重するか」
 「そうそう。そんな感じだよ、オレたちは」
 「やれやれ。この時代にそんな奴らが身の回りにいるってのは、ある意味自慢できるかもしれないな、あたし」
 すこし苦い顔になりながら、千晶ちゃんはストレートの紅茶をこくりと飲んだ。

 「それで? 千晶ちゃんはこれからデートなんだ?」
 「えっ……」
 オレが訊いたら、千晶ちゃんはティーカップを唇から離したんだ。
 「やだな、ハヤト。デートっていうか……ただの打ち合わせだけどね」
 「おっ、やっぱり誰かと会うんだ」
 「うん。まあね。ほら、こないだ話したギターの女の子とね」
 そう言って、千晶ちゃんはほろりと笑った。
 乙女な男子の千晶ちゃんは、不思議と女の子が恋愛対象なんだそうで。
 それで、先日知り合ったギターを弾く女の子に今は夢中なんだそうで。
 
 「そっか。なら玉城も一緒なんだ。残念だったね」
 「ううん。今日はふたりっきり。だってさ、玉城くんとこも今日は夜まで部活だって言うんだもん」
 「玉城──野球部?」
 「そう。まったく、どこもかしこも色気ないよね」
 「……返す言葉が見つからないな、オレ」
 わはは、なんておかしくもないのに笑ってみる。あ~あ。

 「オレだって色気のあるクリスマスって憧れないわけじゃないんだけどね」
 とか、言い訳がましい台詞を吐くオレ。
 「そんな縁に恵まれないっていうか」
 「えっ? そんなことないでしょ? ハヤトは」
 「どういう意味?」
 なんかおどろいてる千晶ちゃんに聞き返した。
 「だって、ハヤトもてるじゃん。よく手紙もらったりするでしょ? 電話とか」
 「え──ぜんぜんそんなの、もらったことないな。少なくとも鬼工に入ってからは」
 「ま~た、ウソばっかり」
 「いやいや。ほんと。女の子に朝の挨拶してもらった記憶もないよ、オレ」
 「……へえ」
 そう答えたあと、千晶ちゃんはしばらく黙った。

 「でもさ、何でだろ。ハヤトが数少ない鬼工の女子の憧れだっていうのは実証済みなのにね。こないだのライブのときとかさ」
 「ああ──そう? よくわかんないけど」
 「そうだってば。あんたも案外鈍いね。誰かみたい──って、あ~、そうか。なるほど」
 千晶ちゃんは何かに思い至ったようだ。
 「ハヤトが女の子に縁がないのはアレだね。リュウジだ、原因は」
 「ん? リュウジ?」
 「そうそう」
 笑いながらフォークでムースをつつく千晶ちゃんの手元をなんとなく見てる。

 「ハヤトってさ、たいがいリュウジと一緒にいるでしょ?」
 「うん。それは否定できないね」
 「リュウジってさ、さっきも言ったけど、女の子にはおっかないんだよ。だからそれと一緒にいるハヤトって同時に近づきがたいんじゃないの? リュウジには隙がないからなかなか越えられないんだ、その壁を。女の子たちはね」
 「──どうなんだろうね」
 オレは曖昧な笑顔なんかつくってみる。
 自分の発言に納得したらしい千晶ちゃんは、やけに満足そうだ。



テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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コメント

そうか!

リュウジのせいだったか!
ハヤトに女の子がよりつかないのは・・・

私も多めにみるからさ、たまにはハヤトの
ラブラブ話がききたいよ・・・
うん・・・たまになら・・・許す・・からさ・・・

>ピノコさま

うん。多分リュウジのせいだ。
だって照れると睨むと思うも~ん。だはは。

>私も多めにみるからさ、たまにはハヤトの
>ラブラブ話がききたいよ・・・
えええっ、ほんとに?
じゃあちょこっとハヤトをけしかけてみるかなww
さて、どうなることやら (´∀`)

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