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年の瀬の鬼浜町 2


 鬼浜寺の大掃除は夕方まで続いた。
 裏庭を掃いて集めた落ち葉を使って焼き芋をしようということになったオレたちは、薄暮の中を商店街まで歩いていった。
 「冬の醍醐味じゃねえ? こういうのって。落ち葉でたき火して焼き芋なんての」
 発案者のリュウジは至って満足そうな顔をしている。
 「そうだね。オレ、たき火も焼き芋も子供の頃以来だな」
 「あ、オレもっス、ハヤトさん!!」
 「だよな。俺んちも商店街にあるしよ。俺もガキの頃、お袋の田舎でやった記憶がある程度だぜ」
 なんてオレたち3人は、イベント気分で盛り上がってる。

 「ああ、皆そうなのか。俺にはたき火は珍しいことではないので」
 「そうだろうな、ダイゴんちは。あれだけ木があったら何かと大変だろうし」
 「無粋なこと言うなや、ハヤト!! 大変だろうけどたき火も焼き芋も俺にはうらやましいぜ」
 「うはは、兄貴って子供のココロを残してるんっスね~」
 「ノブオ、お前、今笑ったな……?」
 「え──あ、ご、ごめんなさい!!」
 ノブオはリュウジにちょこっと睨まれたもんで、すかさずダイゴの背後に隠れた。
 「ははは。ノブオは褒めたつもりだったのだ、リュウジ」
 「そうか? ダイゴ。まあいいけどよ」
 ダイゴに宥められながら唇をとがらせるリュウジ。こんなのも子供みたいだよな。

 年末の商店街っていうのは独特の雰囲気がある。
 お店の人たちの声も威勢がいいし、お客も慌ただしそうにあれこれの買い物をしてる。
 目当ての八百屋まで来ると、店主らしき赤ら顔のおやじさんがリュウジを認めて気安く声をかけてきた。
 「おっ、リュウジ。店のお使いかい? えらいねえ」
 同じ商店街でお店をやっている同士で顔なじみみたいだ。
 「オウ、おやっさん!! 今日はお使いじゃねえぜ。芋買いにきた」
 「へえ。芋かい。どんなんだ?」
 「あのな、焼き芋するのにうまい奴選んでくれや」
 「なるほどな、焼き芋か。そしたらこれだ。甘いぞお!!」
 「リュウジ、じゃが芋も」
 「オウ、そうだったな、ハヤト!!」
 「お。友達かい? じゃあサービスしねえと悪いな」
 「わはは、頼むぜ、おやっさん!!」
 
 結局さつま芋とじゃが芋と、それからダイゴがお家の人に頼まれたというみかんをサービス価格で買いこんで、オレたちは八百屋のおやじさんにお礼を言った。
 帰り際におやじさんが思い出したようにリュウジを呼び止めた。
 「ああっ!!! うっかり忘れてたぞ。リュウジにゃやれねえが、友達ならいいんだよな?」
 「ああ、そうかそうか。福引きな。お前ら、ためしにやってくか?」
 「福引きっスか? うわ、いいっスね~!!!」
 「それなら挑戦してみな。これがさつま芋の分で、こっちがじゃが芋の分。それからみかんの分で3枚だ」
 おやじさんはダイゴとノブオとオレにそれぞれ福引き券を渡してくれたんだ。
 「よし!!! お前ら気合い入れて当ててけや!!!」
 リュウジの声がにぎわう商店街に響き渡った。どんな喧噪の中でも通る声だな。

 主催側の商店街の関係者であるリュウジは、福引きには参加できないんだそうだ。
 リュウジの先導で紅白幕で囲んである特設テントに到着したオレたちは、それぞれ1回ずつ抽選器を回す権利を持っていた。
 「あら、リュウちゃん」
 「オウ!! 寒いのにご苦労だな、おばちゃん達も」
 前掛けの上からはっぴを着たふたりのおばさんも、当然ながらリュウジの顔なじみみたいだ。さすが地元の顔って感じだよな。
 「どうだ? まだいいもん残ってるか? 俺の仲間が引くんだけど」
 「そうねえ。特等は出ちゃったけど、まだ1等と3等が残ってるわね」
 「よし、そしたら1等狙いだな!!! ハヤト、お前からだ」
 「はいはい──って、オレこういうの当たった試しがないんだけどさ」
 「闘う前から弱気でどうすんだ!!! 特攻隊長だろ、お前は」
 ……そういう問題でもないと思うけど、なんて思ってくすっと笑った。
 
 木製の、六角形の昔ながらの抽選器。おばさんに福引き券を渡してから取っ手をもって回す。中でたくさんのちいさい玉がぶつかり合うのが手に伝わってきた。
 懐かしいなあ、こういうのって。
 「あれ……? 玉、出てこないな」
 「お兄ちゃん、回すの早いのよ」
 うふふ、なんて、パーマヘアのおばさんに指摘された。
 「あ、そうなんだ。ゆっくりでいいのか」
 「さすが特攻隊長っスね~!!」
 ノブオに言われてちょこっと恥ずかしくなりながら、今度はゆっくりと一回転。
 そして転がり出てきた玉は──青いやつ。
 
 「あら、6等賞ね。おめでとう、お兄ちゃん」
 眼鏡のおばさんがにこりと笑って、後ろのダンボールから取り出してオレに渡してくれたのは、手拭いだった。『鬼浜町商店街』っていう字が印刷してある。
 「あはは、ありがとうございます」
 「おっ、いいじゃねえか、ハヤト!!! それ、さっきのダイゴみたいに頭にかぶってみろや。きっと似合うな」
 「ええ、そうかな」
 なんて言いながら、リュウジに言われたようにしてみた。
 「うはは、けっこうイイ感じっスよ、ハヤトさん!!!」
 「押忍。なかなか似合うかもしれんな」
 ……そうなのかな。自分じゃどんな姿してるかわかんないんだけどさ。

 「よし、そしたら次はダイゴだな」
 「押忍」
 抽選器に向かって柏手を打って拝礼をしてから、ダイゴは心を静めて──ってふうに見えた──ガラガラと一回転。
 出てきたのはオレと同じ青い玉だった。
 オレと同じようにおばさんに手拭いを渡されて、オレと同じように頭に巻く。
 「わはははは!!! ふたりともいいじゃねえか。な、ノブオ?」
 「ほんとっスね~。オレも欲しくなったっス、それ」
 出番を控えたノブオは、腕まくりなんかしてる。
 
 「そんじゃいきま~っす!!」
 やけにはりきって前に出たノブオが回した抽選器から出てきた玉は、オレたちとは違う色をしていた。
 「あら──手拭いハズレっスね……」
 なんて残念そうに呟いたノブオの目の前で、パーマヘアのおばさんが鐘を手にしたのをオレは見た。
 「おめでとう!!! 出ました、一等賞!!!」
 「え──?」
 「やったね、お兄ちゃん!! 旅行券大当たり~」
 「うお、すげえぞノブオ!!!」
 「やったじゃん、一等賞!!」
 「押忍。ここぞの勝負どころには強いな」
 「え──え? ほんとっスか? うわ、オレやりましたよ、兄貴~!!!」
 喜色満面のノブオは、リュウジと手を取合って小躍りしてる。
 
 一等賞の景品は、二名分の温泉宿泊券だった。
 親孝行なノブオは、ご両親へのお年玉にするんだって言ってた。
 かわいいところあるな、なんて思ったから、オレは欲しがってたみたいなのでノブオに手拭いをゆずってやった。
 なんかとっても喜んでた。ほんとに一等賞より狙ってたのかも……。


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