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真夏の精神修行 2

 「じゃあ早速、本堂から頼む」
 「押忍!!」
 ダイゴの号令に従い、オレたちは本堂に向かう。
 寺院に独特な香の匂い、ひんやりした空気。自然と背筋がぴんと張る感じだ。

 リュウジの案で始まった、オレたちの精神修行計画──鬼浜寺の掃除行。
 何事にも本気でぶつかるリュウジは、まず率先してすす払いに精を出す。
 それが済んでから雑巾がけに取りかかった。

 「ノブオ、もっと腰入れてけ。そんなんじゃキレイにならねえぞ!」
 「え~、だって兄貴ぃ」
 「だって、じゃねえ!!! ダイゴに怒られるぞ」
 リュウジの怒号が本堂にこだまする。場所のせいでいつもより響いて迫力ある声だったので、ノブオがびくりと身をすくめた。

 「雑巾がけは足腰のいい鍛錬になる。しっかりやれば筋肉もつくぞ、ノブオよ」
 「あ、は~い、ダイゴさん……でもキツい~」
 「ははは、ノブオは肉体も鍛えられて一石二鳥だな」
 「もう、ハヤトさんまで!! ハヤトさんだって雑巾、絞り切れてないんじゃないスか?」
 「え? オレ?」
 「おう、本当だ。ハヤトもしっかりな!!!」
 「お~す……」
 やれやれ。オレって脆弱だな。もう疲れたよ──なんて、口に出しては言えないけれど。

 午前中に本堂の掃除を終え、昼を挟んで──ダイゴの母上の作った精進料理をいただいた。とても美味しかった──、午後は境内の掃除。
 竹箒なんて持つのは小学生以来だったかもしれない。
 おやつにスイカをいただいた後、夕方近くになってから墓所の草むしりへと作業は続く。

 「うは~、さすがに茂ってるね」
 墓所自体は日々の掃除が行き届いているのだろう、綺麗に保たれている。オレたちの割り当ては、墓所を取り囲むように茂っている木々の根本の草むしりだった。
 「おう。やり甲斐あるってもんだよな、ハヤト」
 「まあ、そうとも言うな」
 「すまんな、皆。こまめに草取りしてはいるのだが、時期が時期だけにすぐに生えてくる」
 「いいんだ、ダイゴ。そのほうがこいつらの為になる」
 こいつら、と示されたのは当然オレとノブオ。
 「おう、がんばるぜ」
 もうすでに筋肉痛がきていたが、オレはなるべく元気をよそおって応えた。
 
 お前もな、とノブオを見やると──
 「あ、兄貴──失礼します!!!」
 突然ノブオがリュウジに平手を繰り出した。リュウジの頬がぺちっと音を立てる。
 「お、ノブオ──何すんだっ!!」
 「いや、ヤブ蚊っス! ほら、吸われてますよ。兄貴」
 「ほう。俺にビンタとは元気のいいことだな、ノブオ?」
 「ええっ、そんな、ごめんなさい!!!」
 「まだまだやれるってことだよな?」
 「え~と、がんばりま~~~っす」
 
 そんなわけでオレたちは、もくもくと草をむしりはじめた。
 結局思ったよりやるべき箇所が多かったので、作業が終了するよりも日が暮れるほうが先だったのだが。

 「残っちまったな」
 リュウジは恨めしそうに山の向こうの残照を睨んでいた。
 「うん。まだ半分てとこか」
 軍手をはずしながらオレが応える。
 「いやいや。ここまでやってもらえば充分だ。ありがとう、皆」
 ダイゴはオレたちに向かって深々と頭を垂れた。

 それを見たリュウジは、腕組みの姿勢でダイゴに言う。
 「ダイゴよ──俺が途中で投げ出すような漢に見えるか?」
 「いや、そうではないが」
 「続きは明日やろう。な、ハヤト? ノブオもどうせ暇だろう?」
 リュウジはオレとノブオに水を向けた。
 「そうだな。せっかくだからやり終わらないと気分悪いね」
 「オレはもう、兄貴と一緒なら何でも大丈夫っす!!」
 
 そんなオレとノブオの賛同を聞いて──待ってましたとばかりにリュウジが切り出した。
 「な、ダイゴ。ハヤトたちもこう言うし。ここはひとつ、決着をつけさせてもらおう。そこで──もし良かったら今夜はここに泊めてもらってもいいか?」

 来た──案の定だ。そう来ると思っていたんだ、オレは。
 「泊まっていってもらうのは全く問題ないが、リュウジ、本当にそこまでしてもらって良いのか? ハヤトも、ノブオも?」
 「おう、無論!!! お前らも異論はねえよな? じゃあそういうことに決まりだぜ」
 「やった~、なんか楽しそう!!!」

 無邪気に万歳しているノブオを見て、オレはちいさくため息をついた。
 肉体疲労で忘れていたけれど、リュウジは昨日、肝試しとか言っていたような……。
 まさか本気じゃないよな、リュウジ。

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