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矜持対決新春編 8-3

 赤ジャージの我ながら驚いたというような反応から読み取れたのは――実際にあとで語られたのはこれだった。
 通りすがりに人の気配に足を止めて、見下ろしたところにいたのがオレたち。
 リュウジとコウヘイの闘いを見て、止めようと思ったけれどあまりにリュウジの木刀さばきが情けなかったので、ついつい教師という立場よりも剣道を修める者としての意識が先立ったのだ、と。
 しかも、たった先程まで掛かっていた記憶の引き出しの鍵が、それこそ無意識のうちに外れたのだ、と。
 記憶がなくなっていたのにも、思い出せたことについてもまったく自覚がなくて、とにかく反射的にとった言動だったのだ、とも。

 「コウヘイ!!!」
 すこしの間、赤ジャージと顔を見合わせていたリュウジが振り向いて言った。
 コウヘイの手には、赤ジャージから返された木刀が収まっている。
 「約束だ。お前、赤ジャージに謝れや!!」
 「何?」
 「赤ジャージを馬鹿にしたことを俺は許すわけにはいかねえぜ。そもそもダイゴがそっちの親衛隊長をのした時点で約束できてただろ?」
 「そんなの知らねえな。それより俺等の決着はまだじゃねえか。水を差されたからなあ」
 幾分赤ジャージを気にしながらもコウヘイは言う。
 「決着は後回しだぜ。とにかく謝れや!!!」
 そして両者は、またしても矜持をかけた睨み合いとなる。

 「ふたりとも」
 リュウジとコウヘイの間に割って入ったのは赤ジャージだった。
 「今日はこのくらいにしておくように」
 「そんなの赤ジャージの知ったことじゃねえだろ!!! 俺にも俺のプライドってもんがあるんだぜ」
 リュウジは吼える。コウヘイは静かに、だが結果的に邪魔だてされて面白くないことを隠そうとはせずにいる。
 「リュウジ。それから佐藤の教え子よ。それぞれの持つ自尊心については俺にだって理解はできるさ。俺にだって若い頃にはいろいろあったのだし――佐藤とも、な。だが、今日に関しては少なくとも俺は佐藤の教え子に謝られる筋合いではないさ」
 「何だと?」
 「俺はどうやら剣道についての記憶が戻ったようだ。それは誰あろう、佐藤の教え子のおかげなのだから」
 そして赤ジャージはコウヘイに目を向けて――頭を下げた。
 「君は乱闘の際でもきちんとした構えをしていた。暗がりで見ても、ああ、いい構えだと思ったのだ。それを見て反射的に、俺は自ら長年親しんだ記憶を取り戻せたように思う。それに引き替えリュウジは、まあ――」
 そこでいったん赤ジャージは言葉を切った。
 
 「君は基礎からやっているようだな、剣道を」
 「――――」
 コウヘイは言葉に出さずに赤ジャージにほんのちいさく頷いた。
 「せっかくだから伸ばすといい。どうだ、今度手合わせしてみるか?」
 それへは肯定も否定もしない。けれども最後にコウヘイはこう赤ジャージに残してから仲間を促してその場を去ったんだ。
 「先に佐藤先生との手合わせの約束があると伺っておるので、今は遠慮させていただく所存」
 
 結局のところ、リュウジとコウヘイの闘いそのものは中途半端に終わってしまった。
 けれどもリュウジはそれなりにすがすがしい顔をしている。
 ようやく単車に乗って、土手の上で赤ジャージと別れて――さすがに喧嘩ばっかりするんじゃないとリュウジは拳骨をもらってた――から、やっとのことでリュウジんとこの店までたどり着いたオレたちはラーメンをごちそうになりながら話してる。
 すっかり冷えた体に、あったかいラーメンが染み渡っていく。
 「でも、よかったよなあ。赤ジャージ」
 「押忍。瓢箪から駒といったところか」
 「そうっスね~。あれでも役に立つことあるんスね。暗黒一家も」
 「あはは。ほんとだ。コウヘイさまさまだ。って、そうでもないか。リュウジの構えがいまひとつだったおかげって説もあるけど」
 「……何? いま何て言った、ハヤト!!! お前、偉そうに言うなあ」
 軽い平手を頬に頂戴したけど、それでもリュウジは笑ってた。
 
 「さて、そろそろ行くか、走り直しに!!!」
 そしてリュウジは改めてそう言った。
 「あ、ちょっと待って。オレまだ食べ終わらないから」
 「わはは。ちょうどいいや。後から追いついて来いや、特攻隊長!!! ほれ、ダイゴ、ノブオ。先に出ようぜ!!!」
 「押忍」
 「は~い、兄貴!!!」
 「あ、だからちょっと待ってってば……」

 3台のマシンにエンジンがかかる音を聞きながら、オレはスープの最後の一口をすすっていた。
 なんだかんだ言って、リュウジは赤ジャージがふつうに戻ったことがうれしいに違いないんだ。
 うん。だから気分が逸っているんだ。
 オレのこと置いてけぼりにしたのは――意地悪とかそんなんじゃないってオレは信じてるよ……。


   * 矜持対決新春編  完 *


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