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風にのって鈴の音が 2-2


 「オウ、ハヤト!!! なんかいいもんあったか?」
 3人のいる席を見つけて近づくと、リュウジが大きくオレを呼ぶ。オレはリュウジの隣の空席におさまった。
 「ああ、うん。いや――」
 「何だよ。はっきりしねえな、ハヤト」
 リュウジは不思議そうな顔をしてる。オレは隠すつもりだったんじゃないんだけど、なんとなく言いたくない――そんな気がしてる。
 物に対してこんなふうに思うのって、初めてかもしれなかった。

 「で、リュウジは今日は本屋で何買うんだ?」
 なぜだかあえてオレは話をそらしてみた。
 「俺か? そうだな。なんかこう、読み応えのあるやつを探してるんだよな」
 「長編小説とかそんなやつ?」
 「長編、そうだな。どっちかっていうと長いほうが好きだからな、俺は。まあ小説かどうかはわかんねえけど」
 「あ、リュウジの得意分野は漫画か」
 「オウ!!! それはすげえ得意だぜ!!!」
 誇らしそうにリュウジが胸を張った。
 
 「オレは、兄貴がすすめてくれるやつだったら何でも読むっスよ~。だって兄貴のチョイスにはハズレありませんしね~」
 「そうだろう? ノブオはいつもいいこと言うぜ」
 「えへ。アザーっス!!!」
 「ああ、そうね。ノブオはリュウジ至上主義だからね」
 「で、ダイゴは何を買うんだ――ってオイ、ダイゴ? どうかしたか?」
 リュウジの声の調子に、斜向かいに座っていたダイゴに目をやる。
 それまで会話に入っていなかったダイゴはリュウジに応えず、手を合わせて目を閉じていた。
 「ダイゴさん? どうしちゃったんだろ……」
 隣にいるノブオがびっくりしたように言ったのにも反応せずに、ただ何かを念じているかのような姿でいる。
 3人で、そんなダイゴを静かに見守った。なんか声をかけてはいけないような雰囲気が漂っていたから。

 しばらく後にダイゴが合掌を解く。同時に開いたいつも細めている瞳は、いくぶん常より大きめに開かれている――ような気がした。
 「一体どうしたんだ――」
 いつになく遠慮がちにリュウジが訊く。
 「いや、済まなかった、皆」
 ダイゴの声はすこし掠れている。
 「ただ、少々気が乱れているような感覚があったゆえ」
 「オレ、何も感じないっスけど?」
 「そうか、ノブオ。ならば大事ないのであろう」
 ノブオに答えると、ダイゴはすこし微笑んだ。

 「しかしダイゴも大変だよな。そういうのに敏感だってのも」
 「それほどでもないがな、リュウジ」
 「うん。でもダイゴの直感っていうのに助けられることもあるからね。オレたちも」
 そう言ったオレと視線を合わせたとき、一瞬だけダイゴの瞳がまたちょっと大きく開かれた――ような気がした。
 なぜだかどきっとしてしまったオレは、無意識にポケットに手を突っ込んだ。
 指先に触れたキーホルダーが、鈴のような音を立てた――ような気がした。
 しばしの無言が訪れる。オレたちにとっては珍しいことでもある。

 「ハヤト、食い終わったか? そしたらそろそろ行こうぜ、本屋」
 気分を変えるような口ぶりのリュウジに促されて、オレは頷いた。残っていたコーヒーの最後のひとしずくを喉に流し込む。
 
 外へ出てみると、さっきまでいた露天商の姿はすでになかった。もう店じまいしていたようだ。
 鬼浜駅のこちら側は、いつもと変わらない景色に戻っている。
 さっきまであんなに強く吹いていた風もすっかりおさまっていた。


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