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風にのって鈴の音が 4-1



 こんな気持ちになるのなんて、いったいどれくらいぶりなんだろう。
 どう考えても普通の意味での『人間』ではない存在の彼女と出会ってからというもの、オレの心はとてつもなく満たされている。
 ひとりではない、っていう思い。
 また、確認したわけじゃないけど、相手もきっとそう想ってくれているっていう確信めいた思い。
 ただ彼女とともにいるときだけがオレの存在価値のすべてのような錯覚。
 甘い――とんでもなく甘やかな何かが胸の内側をあたためているという感覚。

 彼女、フウカは空のほうから来たのだと言う。
 オレが偶然手に入れたキーホルダーについていた、鈴を模した銀細工の中に彼女がいて。
 普通の意味での出会いじゃなかったけれど、それさえオレには些細な違いでしかなかった。
 とにかく真実なのは、オレとフウカが出会ったっていうこと。
 そして――オレはフウカがいとおしくてしかたがない、ということも。
 
 授業中も気がそぞろ。
 休み時間にリュウジたちと一緒に過ごしているときなんかもうわの空。
 ただ彼女と向き合っていられる時間だけを心待ちにしていて、それ以外の時間はオレがオレではないような、そんな気分にさえ陥っているのがここ数日のオレだった。

 昼休みのこと。
 教室で、いつものようにリュウジと一緒に弁当を食べ終わったところに折良くダイゴとノブオが現れた。
 3人で週末の予定なんかを話しているのをいいことに、オレはこっそり席を立つ。
 家に帰るまでこのままでいるなんてできなくて、オレは階段を駆け上がって屋上へ出た。
 いつも一緒にいる彼女の顔を、ほんの少しでもいいから眺めたかったんだ。
 
 周囲に誰の姿もないことを念入りにに確認してからポケットに手を入れて、このごろではすっかり馴染んだ手触りの、銀の細工のついたキーホルダーを引っ張り出した。
 左手に乗せたそれに、オレはささやく。そして誘うようにちいさく揺らしてみた。
 「出ておいで、フウカ。今は誰もいないから」
 オレが呼ぶと薄い靄が掌に広がって、それが消えるにともなってフウカがちいさくて可憐な姿を表す。
 何度見ても飽きないんだ、これ。
 「――ハヤト。いいの? 大丈夫?」
 「うん」
 くふふ、っていう感じの笑いで透けるように白い頬を飾ったフウカがオレに向かって小首を傾げる。
 
 「それで、どうかした?」
 「フウカがそろそろお腹すいたかな、って思ったから」
 言いながら、オレはフウカがいたのとは逆のポケットに入れておいた、さっき購買で買ったチョコレートのビスケットを取り出した。
 封を切って一枚、フウカのいる掌にのせると、彼女はこれまた満面の笑みでオレを見て、ぴょこんとお辞儀をしてみせる。
 「ありがと、ハヤト」
 「あはは。とんでもない。今のうちに食べて」
 彼女がビスケットに取り付く姿っていうのは、誰でも子供の頃にあこがれた感じ。
 自分の体よりよっぽど大きなお菓子に、それこそよじのぼって食べてみたいな、って考えてたのを思い出す。
 不思議な光景を、我ながら不思議な心の動きで眺めている。
 何が不思議って、まるでこれって恋みたいなときめきだから。

 ――って、いま、オレ何だって?

 「ん? ハヤト、どうしたの? なんか妙な顔してるね」
 「え……そうかな? 気のせいじゃないの?」
 「そう? ならいいけれど。ちょこっと掌があったかくなった気がしたから」
 「あ……あはは。フウカ、敏感だね」
 どぎまぎしてる自分がおかしい。まるで中学生みたいだな、オレ。


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