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風にのって鈴の音が 5-1

 
 なんとなくダイゴと顔を合わせづらくて、オレは用事があるから、なんて言って放課後を待たずに5時間目が終わってすぐに裏門から学校を出た。6時間目は自主休講ってことにして。
 
 人目につかない裏通りにあるちいさな公園に寄り道をする。
 ベンチに座るとフウカがポケットから顔を出した。周りが安全だと気配から察知すると、自分から出てくるようになっている。
 「ハヤト。学校、いいの?」
 「うん。今日は天気がいいから」
 「……わたしのせい?」
 「あはは。まさか。オレってもともとそういうタイプだしね」
 フウカを掌にのせて、できる限りの小声で話す。誰かが通りかかっても怪しまれないように。
 
 「さて。今日はどっちの方角へ行ってみようか?」
 フウカの浮かない顔を消させたくて、オレはつとめて陽気な声を出してみる。小声だけどね。
 「ええと――そうね。ちょっと考えてみる」
 言って、フウカは手を合わせて目を閉じた。
 空のほうから誰かのお遣いでやってきたと話すフウカは、途中で仲間とはぐれてしまったんだそうだ。
 その仲間を捜して、流れ流れてオレと出会って。
 行きがかり上、オレは近頃暇さえあればフウカの示した方向にむけて単車を走らせている。
 フウカが仲間と再会を果たすまでのオレの使命がそれだったから。

 彼女の言葉を借りれば、オレと波長が合ったんだって。本来、フウカの存在はオレたちのような普通の人間の目には見えないらしい。猫と子供と、一握りの敏感な人にしか見えないのだと。
 そういう意味では絵に描いたような鈍感なオレが彼女と会話しているのは奇蹟に近いと我ながら思う。
 そう。だからオレはダイゴと顔を合わせづらいんだ。
 ダイゴは選ばれた、一握りの敏感な人間に違いない。現に何かを感じているみたいだし。
 
 何かの音に耳を澄ませるようにしているフウカを見ながらオレは思う。
 もしもダイゴが何かに気づいていて、もしもダイゴにもフウカが見えるとして――それならそれで協力してくれるんじゃないか、なんてことを。
 そしたらもっと早く仲間を見つけてやれるかもしれない。そしたらフウカは喜ぶのかもしれない。
 けれどもこれはオレのわがままで――オレはフウカとふたりだけでいたかったんだ。

 ああ、やっぱりオレって――そこに思い至ってしまった自分にどきりとしているオレを知ってか知らずか、そのときフウカは目を開いてオレに笑いかけた。
 「ハヤト。今日は海岸線を西に行ってもらってもいい?」
 「うん、了解。西だね。そしたら急ごう。せっかく時間があるんだし、できるだけ走ろう」
 フウカがありがとう、と頷いたとき、通りかかった野良猫がフウカを見つけて唸っていた。
 そうか。見えるんだ。
 
 真冬の海は、夕方の陽差しを映してきらきらしている。
 海はいつ見てもいいな。
 そういえばあこがれてた、オレ。誰かとふたりで海岸線を単車で走るのを――なんて。

 目標は人捜しみたいなもの。手がかりとなるのはフウカの感じる相手の気配だけ。
 だからオレは、ちょこっと走っては路肩に単車をとめて、その都度フウカに問う。
 「どう? こっちでよさそう?」
 「ちょっと離れたかも」
 「戻ったほうがいいの?」
 「ええと、ちょっと戻って北のほうに向かえるかしら」
 「うん、了解」
 こんなことをくり返し、くり返し。
 日が落ちるまでをこうして過ごす風の強い冬の日々。ほんのりと心のどこかがあったまっているオレは、来年から案外冬がそんなに嫌いじゃなくなるかもしれないな、なんて思ってみる。


テーマ : パチスロ - ジャンル : ギャンブル

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