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風にのって鈴の音が 6-2


 空はいよいよ灰色で、風もさっきより強くなっている。
 我知らず、最近ついた癖みたいにポケットに手を入れると、銀細工はまるで息を潜めるようにひんやりと触れたオレの指先に冷気を放った。
 「詮索したりするつもりではないゆえ気を悪くしないでほしいのだが」
 ダイゴはオレにこう問う。
 「近頃のハヤトには、別の大きな『気』を感じるのだ、俺は」
 「それが――?」
 「よくは解らんのだが、とてつもなく大きな『気』でな。本来ならば近寄り難いような」
 ダイゴが言っているのは、明らかにフウカのこと。それはわかるのだけれど、近寄りがたいっていうのはオレには理解できない。
 
 「近寄りがたい? そんなこともないと思うけれど……」
 「ハヤトにはそうは思えないということか」
 ダイゴは唸って腕組みをする。
 「それで? それがどうかしたのか?」
 「それもよくは解らん。ただ、その『気』にハヤトが包み込まれて、ともすると挙げ句取り込まれてしまうように感じるのだ」
 オレを正面から見ていたダイゴは、つと言葉を切って目を閉じる。
 まぶたの裏に何かが映っているんだろうか――もしかしたらフウカの姿が。

 「とにかく、気をつけたほうがよいのかもしれんと思って」
 「気をつける……そんな大袈裟な?」
 「言い方がよくなかったようだ。つまり、そうだな」
 と、ダイゴは目を開く。
 「ハヤトはハヤトであること、自分をしっかりもっておれば大丈夫だと思うゆえ」
 「うん。それなら大丈夫だ。オレはちゃんとオレだから」
 ダイゴが言いたいことは何となくわかる。
 ダイゴの感じるフウカの放つ『気』は、本来こういったことに鈍感なオレが感じるものよりも強大であるらしいこと。
 それから、オレがそれに取り込まれてしまうことへの警鐘。
 たしかに――オレは出会ってからの数日というもの、フウカを最優先していた。それできのうの集会をサボって、リュウジの機嫌を損ねて。
 
 「リュウジのことは、そう心配いらないとは思うが」
 ダイゴはオレの心中を察したように――ダイゴはいつも鋭い――やんわりと笑ってみせる。
 「とにかく筋を通しさえすればな」
 「うん。そうだよね。オレ、もうちょっとちゃんと謝るから」
 「そうするといいかもしれんな。とまあ、それはよい。俺が言いたいのはな、ハヤト。縁あって出会った存在というものは――」
 ダイゴは何か重要そうなことを言いかけたんだけど。
 ちょうどそこで鉄の扉が派手な音をたてて開いて、むこうから赤いリーゼントが現れた。
 
 「ハヤト!!! 寒いってのにま~たここかよ……ってダイゴも一緒か」
 「押忍」
 「んじゃまあいいか。ダイゴも何か言ってやれよ。ハヤトここんとこなんか変じゃねえ?」
 わはははは、なんてリュウジは笑っている。それを受けたダイゴもまた頬をゆるませていて。
 「ええと……リュウジ」
 「うん? なんだ、ハヤト」
 「あのさ。昨日、悪かった。オレ、どうしても行かなきゃいけないとこがあって……」
 「ああ、そのことか。もう忘れたぜ!!! 俺はそういうのは飯喰ったら忘れる主義だぜ」
 ほんのさっきまで明らかにオレに対して怒っていたはずのリュウジだったけど、普通に戻っている。ほんとに飯のせいかどうかはわからないけれど、なんとなく助かった。
 「まあ、あれだ。ハヤトだってお年頃だからな」
 うひひ、って笑いをリュウジは見せた。
 「いや、そういうことでもないんだけど……っていうか……」
 「ともかく次はちゃんと来いや!!! ハヤトがいねえと気合い半減だぜ」
 うん、とリュウジにオレはうなずいた。ポケットの中の銀細工はふたたび熱を帯びている。

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